【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

時空転移強奪

ついに人間世界から
ビルと一緒にまとめて人間達を
転移強奪でこの異世界に
転移させることに成功した勇者。


平野に出現した超高層ビル群からは
続々と人が溢れ出て来る。


オフィス街で昼休みの正午になったら
ビルから一斉にサラリーマンが出てくる、
まるでそんな光景のようでもあった。


おそらくは数万人規模の
人間がいるのではないだろうか、
逆を返せば東京から数万人の人間が
一瞬で消失したということにもなるが。




箱の中にいる人間を
一緒に転移強奪するには、
中にいる人間を
強くイメージする必要がある。


ドーム球場を転移させた時、
勇者は観客動員のことを考えていたため、
それが人間を転移させる原因になった。


今回勇者は朝の九時頃
ビル内のオフィスに働く人が沢山いる、
そんな光景と、ビル外観、
その両方を同時にイメージしたのだ。


-


そしてもう一つ、今回のことで
重大な事実も判明する。


今回勇者は
朝九時頃のオフィスをイメージしたが、
それが人間世界の
ちょうど朝九時頃に起こった。


この異世界と人間世界の
時差のずれがどれぐらいであるかが
勇者にも不明である以上、
人間世界の時間に合わせて
能力を使った訳ではない。


たまたま偶然朝九時になった
という可能性もなくはないだろうが、
極めて低いと言っていいだろう。


つまり勇者が想起した朝九時の希望を
転移強奪の能力が叶えた可能性が高い。


簡単に言うと、転移強奪は
時空を超えることも
可能になったということだ。


『時空転移強奪』


これは熟練度が上がって、
能力がさらに進化したと見るべきであろう。


そして、これが
何に影響するかと言うと、
過去や未来から特定の物や人を
ピンポイントで
転移させて来ることが可能になる。


勇者が願えば、
人間世界の過去の歴史的英雄ですら
この世界に転移させて来られる筈なのだ。


当然、それを行った場合、
過去の歴史的事実は大きく変わり、
その影響を受け
現在も変わってしまうことになるだろうが。


そして非情に困ったことに
この勇者はおそらく歴史改変などは
全く気にしないであろうということだ。


-


高層ビル群から出て来た
人間達に向かって勇者は説明する。


「あなた達は、不幸にも
時空の歪みに呑み込まれ、
この異世界に転移して来てしまったのです」


数万の人間達が一気にざわめき立つ、
もはやそれは罵声にも近い。


この期に及んで、
嘘を付いて押し通すつもりである勇者。


口が裂けても
自分があなた達を拉致しましたとは
さすがに言えないだろう。


「私もあなた達と同じように、
不幸な事故にあって、
人間世界からここに転移して来たのです」


不幸な事故と言うのが、
大型トラックに轢かれた
交通事故のことであれば
そこは間違いではない。


「今のところ、
元の世界に帰る方法はありません」


正しく言うならば
『帰す気はありません』
ということである。




この世界の人間種を存続させるために、
別の人間世界から
大量の人間を転移させることに成功した勇者。


転移と言えば何となく聞こえがいいが、
やってることはただの拉致でしかなかった。











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