【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

ストックホルム症候群

その後もずっと
電話は掛かって来続け、
勇者も何度か転移して
怒鳴り込みに行ったが、
それでも一向に止まる気配はない。


『これは、あれか?
問題が解決するまで
延々と電話掛かって来る
パターンの奴か?』


そうなのであれば、
勇者もついに観念して
諦めるしかない。


-


その頃、人間の集落にいる
ダークエルフ達と人質が
どうなっていたかと言うと。


「すまないねえ、
さすがにもうじき
勇者も来ると思うから、
もう少し辛抱しておくれよ」


「食べる物がなくて
お腹減ってるんだね、
よかったら、僕の分食べてよ」


「勇者様も森を燃やすだなんて
随分酷いことするのねえ、
ダークエルフさんも大変よねえ」


すっかり仲良くなって
和気あいあいとしていた。


いわゆるストックホルム症候群、
誘拐犯と被害者の間に
心理的な繋がりが生まれ
良好な関係になってしまうと言う奴だ。


-


勇者が諦めて
再度集落に転移して来た時、
ダークエルフと人質達は
和やかな雰囲気で談笑していた。


目の前の勇者に気づいたストヤは
形式だけテトの首に手を回す。


「ようやく来たな、
この卑劣で下衆な勇者め、
この者達の命が惜しければ、
今すぐ環境破壊を止めてもらおう」


この時をひたすら長いこと待ち続け、
ようやくこのセリフを言えた
ストヤだったが、もはやその手には
ナイフすら握られていない、
あくまで形式だけになっている。




「お前ら、
自分の身は自分で守れと
あれ程言っておいただろっ!


何かあったら見殺しにするとも
言っておいたよなっ!
何度もっ!


それを何度も何度も
ストーカーみたいに
迷惑電話掛けて来やがってっ!」


ストヤを全く無視して
人質に説教をはじめる勇者。


その凄い剣幕に
むしろダークエルフ達が
人質に同情してしまう。


「そ、そんなに怒らなくても、
いいんじゃないかな?


お年寄りと子供しかいなくて
いろいろと大変そうだし」


「自分達で襲っておいて
何言ってやがる!」


「いや、まぁ、
それはそうなんだけどさ」


あまりにグダグダで
眩暈がしそうな展開だったが、
問題解決のため、
この茶番を終わらせるためにも
勇者はやることをさっさとやって
済ませてしまわなければならない。




まず時間を止め、
異世界転移を伴わない転移強奪で
テトの体を勇者の元に移動させる。


転移奪還てんいだっかん


その後は転移強奪で出現させた
トラックでストヤを跳ねた。


殺さない程度のサイズのトラックに
殺さない程度のスピードで。


他のダークエルフ四人も
同様に時を止め、
やはりトラックで跳ねた。




再び時が動き出すと、
集落の人々は
むしろ跳ねられて倒れている
ダークエルフ達に同情する。


「ダークエルフさん!」


いつもであれば問答無用で
ダークエルフを瞬殺する勇者だが、
殺さないのには
それなりの考えがあった。


いくら自分の身は
自分で守れと言っても、
あまりにも弱い
年寄りと子供であるので、
いっそのこと、
こいつらに催眠洗脳を掛けて
この先ダークエルフ達に
警護をさせようと思っていたのだった。




跳ねられて転がっているダークエルフ達は
瀕死状態、絶命寸前、
勇者は五人それぞれに催眠洗脳を掛けると、
その後はテト達少年少女魔道士団に
ヒーリングで回復してやるように命じる。




「お前らのせいで、携帯の充電
切れちまったじゃねえかっ」


「次こそは見殺しにしてやるからなっ」


勇者はそう悪態をつくと、
バイクを出して、それに跨り
走り去って行った。


もはやどっちが悪役なのか
さっぱりわからない。











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