【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

転移贈答

次々と魔王に突進して、
自爆を繰り返す空の魔物達。


勇者に操られているとはいえ、
それはまるで自爆テロのようでもある。


爆煙に包まれる城、
その上部はほとんど吹き飛び、
そこには何も無くなり
空が広がっている。


煙の隙間から見える魔王の姿、
ダメージは負っているようだが、
まだ死んではいない。


次の瞬間、
魔王が転移でその姿を消す。


勇者は魔王のタマを取り損ねた。


この不毛な戦いを終わりにする
千載一遇の機会、
それも今潰え去ったのだ、


ここから先、
魔王はますます
その姿を見せなくなり、
戦いは長期化して行くだろう。


それまであの人間達は
生き延びることが出来るのか。


勇者の勝利にとっては、
相当な痛手であるのは
間違いがなかった。


-


こうなれば次に
やらなくてはならないことは
決まっている。


会場に集まった
十万を超える群衆は
騒然としている。


この群衆を皆殺しにして、
敵の戦力を少しでも
削っておくことだ。




騒然とする
群衆の中に紛れている
以前捕まったこのある敵兵、
勇者の目が赤く光ると
その兵が次々と
周囲を巻き込み自爆していく。


勇者はこの時のために
敵兵を捕虜として拘留せずに
その身柄を解放し帰していたのだ、
爆弾を体内に埋め込んで。




地を駆ける魔獣達もまた
群衆の中に突っ込んで行っては
周囲を巻き込み自爆する。


次々と連続して爆発が起こり続ける、
そこは阿鼻叫喚の地獄絵図。


だが勇者が攻撃の手を緩めることはない。


転移強奪により
超大型トラックが次々と
群衆に突っ込み、
大型タンクローリーが爆発を起こし、
一面を火の海へと変える。


空からは戦闘機による対地ミサイル、
爆撃機による焼夷弾が降り注ぐ。


-


さて、勇者は一体何をしたのか。


先般の迎撃戦で
一時的に捕虜になった者達、
勇者は身体検査をした時に
相手に気づかれぬよう、
その体内に小型爆弾を埋め込んだ。


魔獣達も同様で、
先日魔獣達のお腹を触った時に
体内に爆弾を仕掛けた。


勇者が転移強奪を派生させて
創り出した新しい能力。


転移贈答てんいぞうとう


転移贈答は
勇者がイメージした物を
勇者がイメージする場所に
送り込むことが出来る。


当初は敵の拠点に
爆弾を送り込むなどの
使い方を想定して
創り上げた能力であったが、
今回それを応用して
勇者がイメージした小型爆弾を
相手の体内をイメージして送り込んだ。


この時点で、相手は勇者によって
爆弾を体内に埋め込まれている。
そして爆弾を埋め込まれた本人は
それに気づかない。


後は、その爆弾を勇者の意志で
自由に爆発させられる能力、
コントロール出来る能力をつくり、
今回の爆弾テロに使ったという訳だ。


爆弾を埋め込まれた本人達は
全く気づかないまま日常生活を送り、
勇者が必要に応じ勝手に爆発させる、
最悪に胸糞が悪くなる能力。


贈答というのは、贈り物とか
プレゼントということだが、
爆弾をプレゼントするというのは
随分とふざけた話でもある。




この転移贈答と言う
勇者の新能力によって、
一度捕まった敵兵も魔獣達も
勇者の爆弾テロに利用されたのだった。













コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品