【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

ダークナイト

次々と敵の拠点を叩いて行く勇者。


もう既に敵の最前線ラインを
そこそこ後退させることには
成功している。


電撃作戦としては、
上々の出来であろう。




今この時点で
これ以上の継続は必要か否か、
これ以上は深入りし過ぎではないのか、
さてその引き際を
どうしたらよいものか、悩む。


敵の伝達能力が
どれぐらいのものかはわからないが、
ここまで何も対策が
練られていないということは、
やはり兵の伝令による
連絡のみと言うことであろう。


それとも今頃水晶を覗いている
千里眼の魔道士が気づいた頃か、
既に手を打った後か。


これ以上、深入りしては
待ち構えていた敵のトラップに
引っかかる可能性も考えられる。


一応敵拠点にいた
馬などの移動手段となりそうな
生物はみな殺してはおいたが、
討ち漏らしがいてもおかしくはない。


-


転移強奪で操作されている
戦闘機が対地ミサイルを発射し、
敵の居城を吹き飛ばす。


敵の拠点は大きな炎を上げて燃え盛り、
炎がまるで巨大な生き物のようにも見える。


その爆炎の中から
徐々に姿を見せる黒い人影。


それは影ではなく、全身が黒。


漆黒の鎧を纏った騎士。


その手に握られている大剣は
黒光りして輝きを放つ。


『ダークナイトか?』


黒騎士は、
ゆっくりと歩を進め、
こちらへと向かって来ている。


『やばいな、これは』


黒い兜と仮面をしているため
顔や表情などは一切わからないが、
転移して来たばかりの
レベルが低い勇者であっても
一目見てわかる、
明らかにレベルが違い過ぎると。




「貴様が、新しき勇者か?」


低く唸るような、
迫力と貫禄のある声で
問うて来る黒騎士。


「いきなり奇襲とは、随分と卑怯な、
貴様に勇者を名乗る資格はあるのか?」


勇者に資格や証明書が必要なら、
勇者を大量生産している
女神に文句を言え。


そもそも正々堂々と戦えるぐらいなら、
最初からこんな卑怯呼ばわり
されるようなことはしていない。


勇者は文句の一つも言ってみる、
心の中で。






「まぁよい、新しき勇者よ、
貴様には早速ここで死んでもらう、
貴様のような奴を
勇者と認める訳にはいかんからな」


『だから、勇者が承認制なら、
俺だって好き好んで、
勇者になったりしてねえんだよ』


一応は剣を構えてみるものの、
レベル差と装備の貧弱さで、
勇者は全く勝てる気がしていない。


とは言え、
全く慌てふためく様子も
逃げる素振りも見せない。


逃げるのであれば、
黒騎士の姿を確認した時点で
早々に逃亡しているであろうし、
そうした一時撤退に
この勇者はなんの躊躇もない。


むしろ黒騎士を
待っているようでもある。


-


勇者の眼前まで迫る黒騎士、
手にするその剣の長さを考えると、
今がちょうど射程ギリギリというところか。


一度立ち止まり対峙する黒騎士。
こんなにもレベルが低い相手にも
油断することなく慢心もない
ということだろう。


「はっ!」


掛け声と共に
間合いへと踏み込み、
黒騎士は大きく振りかぶって
その両手に持つ大剣を振り下ろす、


……
…………


振り下ろされることなく、
剣を頭上にしたまま動かない黒騎士。


「ホント、この能力が
序盤から使えて助かったわ」


勇者は、時を止めた。





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