【胸糞注意】な勇者請負人、そして神々、時々ドラゴン

ウロノロムロ

勇者トモノリとおっさんドラゴン(2)

おっさんドラゴンを倒す
竜殺しの剣を手に入れる筈なのに
毎回LUCKが発動してしまい
さらにレアなアイテムばかりが
手に入るトモノリ。


竜殺しの剣も
そこそこレアであると言うのに。




そんなことを
何度も繰り返している内に
勇者トモノリとおっさんドラゴンは
すっかり仲良くなっていた。


おっさんドラゴンは
異世界のことについて
トモノリにいろいろ教えてやった、
この先もトモノリが
生き残っていけるように。


-


そして勇者トモノリも
勇者の名に恥じない程に
すっかり強くなって行く。


とうとう本物の
竜殺しの剣を手に入れたトモノリ。


「ほな、そろそろはじめよか?」


おっさんドラゴンは
トモノリに倒されるために
ここでずっとこうして
待っていたのだ。




しかし下を向いて
じっと動かないトモノリ。


「どうしたんや、トモノリ?」


トモノリの頬からは
涙が伝い落ちる。


「で、出来ません、
自分にはドラゴンさんを
殺してしまうなんて、出来ません」


「ここまで自分が強くなれたのは、
ここまで自分が生き残って来られたのは、
すべてドラゴンさんのお陰です」


「そんなドラゴンさんを
この手で殺すなんて、
自分にはそんなことは出来ません」


勇者トモノリの肩は
震えている。


「ええんやで、トモノリ」


「ワシはお前に倒されるために、
ずっとここでお前を待っとったんや、
それがワシの仕事なんや」


勇者に殺されるためだけに
この世界にやって来て、
殺されたら去って行く、
それがおっさんドラゴンの役目。


「ワシも次の現場に
行かなならんからな、
一思いにはようやってくれや、
見事な断末魔で叫んでみせるで」


おっさんドラゴンは嘘をついて
次の仕事に急いでいることにする。


「トモノリ、
お前はいい勇者になるで、
他人の痛みが分かる優しい勇者に」


-


「せやな、
せめてワシのことを思うなら
痛くないように綺麗な一太刀で
スパっと決めてくれよ」


おっさんドラゴンは
泣いているトモノリに語りかける。


「あれ、下手クソがやると
何度もやり直さんとあかんから
痛くてかなわんのやで」


「頼んだでトモノリ、
はよう、楽にしてくれや」




トモノリは涙を拭き、
剣をしっかり握り締める。


せめて最後のおっさんドラゴンの
頼みだけは聞き届けなければならない。


全くブレることない
見事な太刀筋で
おっさんドラゴンを
一刀両断にするトモノリ。


『ええ、一太刀や、トモノリ』


「グゥゥゥォォォオオオッ!」


断末魔と共に崩れ落ちる
おっさんドラゴンの巨体。


おっさんドラゴンの屍は粒子となって、
最後にドロップアイテムを残して
消え去って行く。


LUCKが高いトモノリへの
おっさんドラゴンからのプレゼントは
どれも貴重なアイテムばかりであったが、
トモノリには涙で良く見えなかった。


-


おっさんドラゴンは
今日も死んで転移を繰り返す。


少しでも家族が
楽に暮せるように。


そしていつかまた
元の世界で家族と
一緒に暮せることを夢見て。













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