【胸糞注意】な勇者請負人、そして神々、時々ドラゴン

ウロノロムロ

不遜な勇者

「おぉっ、勇者よ、
よくぞ来てくれたっ、
待っておったのじゃぞ」


人間の国王は
新たにこの世界に来た
勇者を前にして高揚している。


玉座から身を乗り出し
階段下にいる勇者から
目が離せない。




しかし勇者は
そんな浮かれムードを
ぶち壊すかの如く
開口一番言い放った。


「王よ、どちらがいいか選べ」


「このまま
魔王軍に皆殺しにされるか、
今すぐ王を退位して、
この国の王政を廃止するか」


勇者の言葉に、
盛り上がっていた王が、
冷や水をぶっ掛けられたような
雰囲気である。


「俺はな、たまたま
王族に生まれたというだけで偉そうに
国を好き放題しているような奴が
一番嫌いでな」


「お前が今すぐ王政を廃止して、
民衆のための民衆による民衆の政治、
いわゆる民主主義と呼ばれる
政治制度に変えるのであれば、
魔王を倒す力となってやろう」


勇者はこういう偉そうな奴が
一番我慢ならない。


確かにお前はこの世界では
一番偉いのであろうが、
それを今他所の世界から来た自分に
強要するのはどうなのだ?


百歩譲ってだ、
郷に入っては郷に従え、
他国の王に敬意を払う、
ということにしてやったとして。


何故そんな上から?
それが人に物を頼む態度か?


上から目線とはよく言ったものだ、
そんな階段の上から物を言うなど
まさに物理的に上から目線。


しかもこれから魔王討伐を自分に
お願いする立場であるというのに。


これではまるで命令ではないか。


今すぐにでもその玉座から
力ずくで引きずり降ろして
やりたくなる。


本来であれば土下座ぐらいしても
いいんじゃあないか?


もういっそ浮遊術で
物理的に王の上に
移動してやろうか、
勇者はイライラが止まらない。




「そうだな、
貴族なんてのもいらないな、
貴族制も今すぐ廃止しろっ、
階級なんていらんっ、
すべての人は等しく平等、
そうでなくはいけない」


いつにも増して苛烈な勇者、
こんなことを言っているが
政治自体には興味はない、
ただ偉そうにしている
王や貴族が嫌いなだけなのだ。




「そもそもだな、
魔王軍に滅ぼされそうなのは、
お前が無能だからに他ならない、


そんな無能が王だなんて
国民が可哀想というものだ」


「貴様っ!
王に向かって
なんという無礼をっ!」


王に暴言を吐く勇者を
近衛兵達が取り押えようとする。


ロイヤルガードに囲まれ、勇者もまた
その背に背負っている剣を手にした。


斬りかかって来る衛兵、
勇者はこれかわし斬り捨てたが、
ここで逆賊は確定してしまったも同然。


「賊だっ! 逆賊だっ!」


衛兵の声に更に城中の
兵達が集まって来るが、
勇者はこれを軽々と一掃した。


大口を叩くだけあって
相当腕に覚えがあるのだろう、
転移の際かなりのチート性能にして
貰っているのかもしれない。


実際、勇者には
国軍を相手にしても
一人で勝てる自信があった。




「お前が無能だから、
こうした被害者が増えるんだよ」


王を指差し非難する。


加害者なのに何故か他人事で
説教をはじめる
居直り強盗のような勇者。




しまいには国民の命を人質にして、
王を脅迫しはじめる。


「どうしても嫌だと言うなら、
俺が魔王軍に入って
まずお前等から滅ぼしてやる」


この勇者、
傲慢でイラチなだけではなく、
相当に下衆い、
目的のためなら
手段は全く選ばないところがある。


「お前等、
王族と貴族さえ我慢すれば、
この国の民すべてが助かって
幸せになれるんだぞ?
何を迷う必要がある?」


オロオロするばかりの
王とその配下の者達。


「まだ迷っているのか?
だからお前は無能なんだよっ」


これではまるで
革命家気取りと言ったところか。











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