【胸糞注意】な勇者請負人、そして神々、時々ドラゴン

ウロノロムロ

最強候補のコンプレックス

時の勇者。


彼はおそらく、
最強クラスのチート能力の
持ち主であったが、
残念なことに本人はまだ
そのことをよくわかっていない。


本人の生来の
自分に自信が持てない性格故か、
それとも時に関する能力以外が
全般的に大したことがないからなのか。


おそらくはその両方なのであろうが、
彼は自分が出来ることの凄さを
著しく過小評価していた。


確かに勇者として考えた場合、
彼の攻撃力、防御力、耐久力、
アジリティ、スタミナ等々
どれも平凡なステータスでしかなく、
本来は時魔道士あたりが
一番ぴったりと来るような能力でもある。


昨今の異世界における勇者不足で
無理矢理に勇者にさせられた感も否めない。


それでもそれ等を
補って余りある能力であり、
決して本人が卑下する程のものではない。


-


西の秘境『天ジーク』を
目指している 時の勇者、
そこにある有難い
アイテムを獲得しないと
この先現状を打破出来ない、
そんな状況であり
どうしても行かない訳にはいかない。


『自分のチート能力は
戦闘向きではないから、
こうした冒険の方がいいだろう』


そんな風にも考えている。


彼もまた人間世界から
転移して来た者であり、
転移の際に女神から
時を操るチート能力を授かった。


これで漫画やアニメのように
時を止めて一方的に無双出来ると
最初は興奮して喜んだものだったが、
そうそう上手くはいかないものである。


-


不運なことに
その道程で魔王軍の幹部、
悪魔騎士に時の勇者は遭遇する。


森林に身を潜め、
突然襲い掛かって来る悪魔騎士。


だがその直前に
勇者の能力の一つである
未来予測が発動し、
彼は辛うじてこれを避けかわした。


未来予測なんて、
とんでもなく便利に思えるが、
常時自由に使える訳ではなく
時の勇者にこうした危機が
迫った時にのみ発動する。


それがまた時の勇者からすれば
不満の一つでもあった。


-


時の勇者は、
そのまま時を止めた。


これも彼の能力の一つであり、
数秒の間だけ時を止められる。


しかし、いつも問題はここからで、
強い勇者であれば、
ここで格好良く止まった敵を
切り倒すなりするのであろうが、
如何せん彼には中ボス以上の敵を
単体で倒せる程の攻撃力がない。


案の定、悪魔騎士を
剣で切ろうとしても
敵の鎧が硬すぎて剣が折れる。


攻撃魔法を使ってもみるが、
レベル差もあって全く通じていない。




自分に攻撃力がないのであれば、
パーティーを組んで
自分が時を止めている間、
攻撃力がある仲間に
敵を倒して貰えばよいではないか、
彼ももちろんそう考えたことがある。


それで一度実際に
パーティーを組んではみたのだが、
いざ戦闘になり時を止めてみたら
敵だけではなくパーティーの全員も
時が止まって動かなくなった。


時を止めている間
動けるのは自分だけであり、
他の者の力を頼ることは出来ない、
結局は自分一人で
何とかするしかないのだ。


そうなると自分が
パーティーに貢献出来ることが
ほとんどない。


せめて敵だけの時を止めるか、
味方は時止めの対象外に
出来るようになれば
話は違って来るのだが。


これでは、せいぜいが敵の弓矢が
当たる直前に時を止めて
弓矢を取り除く、
その程度のものである。


それはそれで
大したものではあるのだが、
勇者であるにも関わらず
それぐらいのことしか出来ない、
そのことに彼自身が
不甲斐なさを感じ、
現在はずっと
単独行動をしているのだった。




そうこうしている内に
あっという間に制限時間が過ぎ、
時は再び動き出す。











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