雲の観測しませんか?
雲の観測しませんか?
俺はなかなか女性との交際ができない。
彼女がいらないわけではない。
むしろほしい…。
でも、俺の欠点はそうそう治るものでもないのだ。
「南さーん。」
考え事をしていると、背後から女性の気配がした。
この声は事務所のアイドル坂下さん。
急いで背後にいる坂下さんの方に向く。
「ど、どうした?」
「南さんとご飯食べたいなって、香織思って!」
えへっと顔で言う。
「あ…もうご飯食べたから…。」
嘘である。
「じゃあ、お茶でも香織いいですぅ。」
「これからまだ仕事あるんだよね~。」
とはぐらかし
「じゃ…!」
と、逃げるように去る。
「南さーん。」
と後ろから声が聞こえるが、無視。
俺は背後に女性が立つことが苦手である。
背後2メートル程くらいから背中がゾクゾクしてくる。
「はぁ……。」
こんなんだから、女性とお付き合いできないんだよな…。
うつむいて歩いていると、前から来た女性と肩がぶつかった。
「すみません。」
慌てて俺が言うと
「すみません。
私こそよそ見してて!
お怪我はありませんか?」
とても心配そうにする女性。
「えぇ。大丈夫です。」
「よかった。」
「何か見ていたんですか?」
「今日の雲は美味しそうだな。と思いまして。」
よくわからないのことを言う女性だ…。
「美味しそうですか?」
「はい!」
女性はとても笑顔で言います。
「よく見るとソフトクリームに見えませんか?」
「え?」
俺も空を見る。
確かにソフトクリームのような形をした雲が浮いていた。
「確かに、ソフトクリームに見える。
じゃあ、その隣はスプーンですね。」
「あ!ほんとですね。」
軽やかに笑う女性。
その時、スマホのアラームが鳴った。
お昼休憩が終わったのだ。
「もう行かなくちゃ。」
「そうですね。」
「また会えますか?」
自然と出た誘いの言葉だった。
「では、また雲観測会やりしょう。」
女性は嬉しそうにニッコリ笑います。
「そーえば、あなたはなんて名前なんですか?」
「小泉未来恵です。南祥平さん。」
イタズラっぽく笑う小泉さん。
「なんで、名前を?」
「ふふふ。南さんって有名人なんですよ。」
少しびっくりする。
「えーとまぁ、これからよろしくね。
小泉さん。」
「はい。」
「明日の昼休憩にここでいいかな?」
さすがに今日あったばかりの女性とLINE交換はできなかった。
「はい。楽しみにしてます。」
「じゃあ、また明日。」
二人は別々の方向に去っていった。
翌日から昼休憩が楽しみになった。
小泉さんとお昼を食べながら、雲の形を話す。
それだけなのに、毎日この日が楽しみで仕方がない。
「今日も素敵な雲ばかりですね。」
いつも俺に笑顔が見せてくれる小泉さん。
他の女性たちと違って、媚びを売ることもなく、背後を気にすることもない。
小泉さんは一緒にいてとても安らげる存在へ変わっていった。
そういえば、最近背後を気にしなくて済んでいるな。
小泉さんはいつも俺の前を歩き、振り返りながらしゃべり、座る時は近くもなく、遠くもないところに座ってくれる。
「南さんは…。」
話しかけてくれた小泉さんの言葉を事務の坂下さんが
「南さーん」
といい、駆け寄ってくる。
少しビクッとする小泉さん。
背後から存在をキャッチしたので、すぐさま背中を守る。
そーすると、小泉さんに背後に入られてしまう。
と焦っていたが、小泉さんの気配が背後にある気がしなかった。
なぜだろう。
「南さん。」
満面の笑で俺に話しかける坂下さん。
「今日美味しいクッキーがあるんで、南さんと香織で食べましょうよ。」
「いや、今日は小泉さんといるし…」
しどろもどろに言った。
すると坂下さんは
「小泉さんいたんですね。
香織気づかなかった。」
てへっと笑う坂下さん。
「あ…はい。」
控えめに言う小泉さん。
そんな小泉さんはどこかに消えてしまったのかといつほど、坂下さんは小泉さんの方向を向かなかった。
「美味しいコーヒーを香織持ってきたので、香織と飲みましょうよ。」
俺の腕に坂下さんは腕を絡ませる。
少し胸が当たり気味。
計算されてるな。と思った。
「坂下さんすみません。
今日は小泉さんとまだ昼食が終わってないので、またよろしくお願いします。」
と、坂下さんに背中を向け歩きだそうとした。
坂下さんの気配を背後から感じた。
やばい。背中を向けてしまった。
と思った時は遅かった。
「えー。香織ショック!じゃあ、夜デートなんていかがです?」
と、坂下さんは軽いボディータッチのつもりだったのだろう。
坂下さんの手の気配が段々近づいてくる。
どうしよ。
冷や汗が出てくる。
すると、あと背中まで10センチという時に手の気配が止まった。
「あれ?」
と、後ろを振り向くと、小泉さんが坂下さんの腕を掴み、手を停止させていました。
「あの、背中に急に触ってはダメですよ。」
と真剣に言う小泉さん。
「な、何よ。」
と、少し怒り気味に坂下さんは言う。
しっかり握られてる手を振り払おうとする坂下さん。
「ダメです。相手が嫌がっていることをやってはいけないです。」
小泉さんはもっと力を込めた。
女としてのプライドをボロボロにされる坂下さんはもう顔が真っ赤だった。
「落ち着いて坂下さん。」
「香織です。」
「…香織さん。また誘ってください。」
と言い、小泉さんを連れて逃げた。
「はぁはぁ。全力疾走、学生以来です。」
と息切れをしながら言う小泉さん。
「小泉さん。ありがとう。助かったよ。
でも…俺の…背中のこと何か知っているんですか?」
「南さん。有名人だって言いましたよね。『背後を 見せない男』として…。」
そんな変な有名人だったのか…。
背中のことを隠しているつもりだったが、バレてしまっていたのだ。
「そんな噂みたいなのがあるのに、なんで色んな人が背後から話しかけるんだろう…。」
「それは…。」
何か知っているようだ。
「それは南さんの背中をタッチできた人が彼女になれるという変な噂もあるんです。」
これこそ全く知らなかった。
「でも、私は背中の近くに行く人を見ると、南さんは困った顔をしているの、知ってたんです。」
「だから、小泉さんら俺の背後から離れていてくれたんだ…。」
少しほっとしているのに、なんだかしこりも残った。
なんでだろう?
「南さんの背後は私が守りますので、安心してください。」
と、右ストレートを誰に向けるでもなく放った。
「小泉さんは俺の背中に触らなくていいの?」
それが俺の中のしこりだったようだ。
「だって、背中を触れなくても、南さんといることはできましたから。」
「…。」
なぜか俺は嬉しくなった。
「さて、雲の観測続けましょう。」
こちらも嬉しそうに小泉さん言った。
「そーだな。」
空を見上げ、雲を見てみる。
ちらっと小泉さんを見る。
幸せそうな顔をしていた。
もし雲が俺に味方をしてくれるなら
指輪の形になってくれた時、俺の気持ちを言うことにした。
彼女がいらないわけではない。
むしろほしい…。
でも、俺の欠点はそうそう治るものでもないのだ。
「南さーん。」
考え事をしていると、背後から女性の気配がした。
この声は事務所のアイドル坂下さん。
急いで背後にいる坂下さんの方に向く。
「ど、どうした?」
「南さんとご飯食べたいなって、香織思って!」
えへっと顔で言う。
「あ…もうご飯食べたから…。」
嘘である。
「じゃあ、お茶でも香織いいですぅ。」
「これからまだ仕事あるんだよね~。」
とはぐらかし
「じゃ…!」
と、逃げるように去る。
「南さーん。」
と後ろから声が聞こえるが、無視。
俺は背後に女性が立つことが苦手である。
背後2メートル程くらいから背中がゾクゾクしてくる。
「はぁ……。」
こんなんだから、女性とお付き合いできないんだよな…。
うつむいて歩いていると、前から来た女性と肩がぶつかった。
「すみません。」
慌てて俺が言うと
「すみません。
私こそよそ見してて!
お怪我はありませんか?」
とても心配そうにする女性。
「えぇ。大丈夫です。」
「よかった。」
「何か見ていたんですか?」
「今日の雲は美味しそうだな。と思いまして。」
よくわからないのことを言う女性だ…。
「美味しそうですか?」
「はい!」
女性はとても笑顔で言います。
「よく見るとソフトクリームに見えませんか?」
「え?」
俺も空を見る。
確かにソフトクリームのような形をした雲が浮いていた。
「確かに、ソフトクリームに見える。
じゃあ、その隣はスプーンですね。」
「あ!ほんとですね。」
軽やかに笑う女性。
その時、スマホのアラームが鳴った。
お昼休憩が終わったのだ。
「もう行かなくちゃ。」
「そうですね。」
「また会えますか?」
自然と出た誘いの言葉だった。
「では、また雲観測会やりしょう。」
女性は嬉しそうにニッコリ笑います。
「そーえば、あなたはなんて名前なんですか?」
「小泉未来恵です。南祥平さん。」
イタズラっぽく笑う小泉さん。
「なんで、名前を?」
「ふふふ。南さんって有名人なんですよ。」
少しびっくりする。
「えーとまぁ、これからよろしくね。
小泉さん。」
「はい。」
「明日の昼休憩にここでいいかな?」
さすがに今日あったばかりの女性とLINE交換はできなかった。
「はい。楽しみにしてます。」
「じゃあ、また明日。」
二人は別々の方向に去っていった。
翌日から昼休憩が楽しみになった。
小泉さんとお昼を食べながら、雲の形を話す。
それだけなのに、毎日この日が楽しみで仕方がない。
「今日も素敵な雲ばかりですね。」
いつも俺に笑顔が見せてくれる小泉さん。
他の女性たちと違って、媚びを売ることもなく、背後を気にすることもない。
小泉さんは一緒にいてとても安らげる存在へ変わっていった。
そういえば、最近背後を気にしなくて済んでいるな。
小泉さんはいつも俺の前を歩き、振り返りながらしゃべり、座る時は近くもなく、遠くもないところに座ってくれる。
「南さんは…。」
話しかけてくれた小泉さんの言葉を事務の坂下さんが
「南さーん」
といい、駆け寄ってくる。
少しビクッとする小泉さん。
背後から存在をキャッチしたので、すぐさま背中を守る。
そーすると、小泉さんに背後に入られてしまう。
と焦っていたが、小泉さんの気配が背後にある気がしなかった。
なぜだろう。
「南さん。」
満面の笑で俺に話しかける坂下さん。
「今日美味しいクッキーがあるんで、南さんと香織で食べましょうよ。」
「いや、今日は小泉さんといるし…」
しどろもどろに言った。
すると坂下さんは
「小泉さんいたんですね。
香織気づかなかった。」
てへっと笑う坂下さん。
「あ…はい。」
控えめに言う小泉さん。
そんな小泉さんはどこかに消えてしまったのかといつほど、坂下さんは小泉さんの方向を向かなかった。
「美味しいコーヒーを香織持ってきたので、香織と飲みましょうよ。」
俺の腕に坂下さんは腕を絡ませる。
少し胸が当たり気味。
計算されてるな。と思った。
「坂下さんすみません。
今日は小泉さんとまだ昼食が終わってないので、またよろしくお願いします。」
と、坂下さんに背中を向け歩きだそうとした。
坂下さんの気配を背後から感じた。
やばい。背中を向けてしまった。
と思った時は遅かった。
「えー。香織ショック!じゃあ、夜デートなんていかがです?」
と、坂下さんは軽いボディータッチのつもりだったのだろう。
坂下さんの手の気配が段々近づいてくる。
どうしよ。
冷や汗が出てくる。
すると、あと背中まで10センチという時に手の気配が止まった。
「あれ?」
と、後ろを振り向くと、小泉さんが坂下さんの腕を掴み、手を停止させていました。
「あの、背中に急に触ってはダメですよ。」
と真剣に言う小泉さん。
「な、何よ。」
と、少し怒り気味に坂下さんは言う。
しっかり握られてる手を振り払おうとする坂下さん。
「ダメです。相手が嫌がっていることをやってはいけないです。」
小泉さんはもっと力を込めた。
女としてのプライドをボロボロにされる坂下さんはもう顔が真っ赤だった。
「落ち着いて坂下さん。」
「香織です。」
「…香織さん。また誘ってください。」
と言い、小泉さんを連れて逃げた。
「はぁはぁ。全力疾走、学生以来です。」
と息切れをしながら言う小泉さん。
「小泉さん。ありがとう。助かったよ。
でも…俺の…背中のこと何か知っているんですか?」
「南さん。有名人だって言いましたよね。『背後を 見せない男』として…。」
そんな変な有名人だったのか…。
背中のことを隠しているつもりだったが、バレてしまっていたのだ。
「そんな噂みたいなのがあるのに、なんで色んな人が背後から話しかけるんだろう…。」
「それは…。」
何か知っているようだ。
「それは南さんの背中をタッチできた人が彼女になれるという変な噂もあるんです。」
これこそ全く知らなかった。
「でも、私は背中の近くに行く人を見ると、南さんは困った顔をしているの、知ってたんです。」
「だから、小泉さんら俺の背後から離れていてくれたんだ…。」
少しほっとしているのに、なんだかしこりも残った。
なんでだろう?
「南さんの背後は私が守りますので、安心してください。」
と、右ストレートを誰に向けるでもなく放った。
「小泉さんは俺の背中に触らなくていいの?」
それが俺の中のしこりだったようだ。
「だって、背中を触れなくても、南さんといることはできましたから。」
「…。」
なぜか俺は嬉しくなった。
「さて、雲の観測続けましょう。」
こちらも嬉しそうに小泉さん言った。
「そーだな。」
空を見上げ、雲を見てみる。
ちらっと小泉さんを見る。
幸せそうな顔をしていた。
もし雲が俺に味方をしてくれるなら
指輪の形になってくれた時、俺の気持ちを言うことにした。
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