青春に贈る葬送曲

長月夜永

#3 人狼型《ワーウルフ》 (三)




     三



 初めてこの空間に招かれたのは、入学直後に行われた学力テストを終えて間もない頃だった。

 授業中に突然周囲の風景が形を変えることなく彩りを失って白黒になり、教師やクラスメートがいなくなった。

 忽然こつぜんと現れた、全長一メートル弱で切っ先から柄頭、さやまでもが灰色一色ののっぺりとした外観にオーソドックスな形状をした剣。

 無数の骸骨の群れと、咆哮ほうこうのような叫び声を上げながら、大きな戦斧せんぷを振り回してはそれらを片っ端から粉砕していく体格の良い強面の男子生徒。

 思いもしない非現実的な事態が次々と起こる中、湊輔そうすけはなにもできないまま、気づけばいつの間にか何の変哲もない穏やかな日常に戻っていた。

 二回目は初めて異様な空間に招かれてから二週間と経たない頃だった。

 再び辺り一帯が白黒になり、周囲にいた人間が皆消えた。

 だが、一回目と違うのは、昔馴染なじみで同じクラスの我妻あがつま雅久がくがいたことだ。

 雅久がこの空間に招かれたのは三度目と、湊輔よりも一回分多かった。

 加えて、良心的な先輩――この空間における――に出会ったことで、この空間のことや出現する敵との戦い方を簡単に教えてもらっていた。

 この時点で雅久はすでに感知《ソナー》を持っていた。

 二回目の敵は小鬼型《ゴブリン》という、頭に小さい角が生えて緑色や灰色、群青ぐんじょう色といった様々な色の体にボロボロで貧相な布切れをまとった小柄な敵の群れだった。

 雅久の他にも共に戦う味方が三人いたが、お互いを知る暇もなく戦いが始まり、いつの間にか小鬼型を倒しきっていつもの日常に引き戻されていた。

 そして湊輔の経験上最も悲惨な状況に陥った三回目の戦い。

 両腕の付け根から手首の下までまるごと鳥の翼のようになっており、極彩色ごくさいしきの体毛に身を包んだ、体長二メートル以上ある人型の敵。

 湊輔と一緒に戦った生徒の一人が翼人型ハーピーと呼んでいた。

 翼人型は一回目の骸骨や二回目の小鬼型とは一線を画す強さを誇り、湊輔以外の三人が行動不能の重症を負わされ、もはや万事休すといった状況に追い込まれた。

 そのとき、突如現れた五人目の味方が参戦したことで事態は好転する。

 翼人型の攻撃の多くをかわし、直撃を受けても微動だにせず、隙を見ては怒涛の攻撃を繰り出して圧倒していった。

 やがて翼人型が倒れ込むと、

「おい、お前新米だろ? とどめを刺しな」

 突然の指示に湊輔は戸惑ったが、重い足取りで翼人型に近づき、言われるがままに翼人型の体に剣を突き刺した。

 何度か突き刺したあたりで翼人型の体は手先足先から霧散していく。

 完全に体が消えたとき、これまでと同様に日常へと引き戻された。

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