異世界三大異能力 ~俺たち兄弟が無双する~

鼻くそ王子

第8話

※一成サイド
某狩猟ゲームのBGMよろしく、焚き火の上でチーズを炙る。それをカチカチな黒パンにこれでもかと乗せ、山彦少女(ハイジ)にでも出て来そうなとろとろチーズパンに、仕上げとばかりに干し肉をトッピングしたら、一成特性の野性味溢れる異世界の男ピザトーストの完成だ。

ごくりっ……

とろっとろっに溶けたチーズから立ち上る湯気が、空腹時の胃袋を刺激したのだろう。彼女を見れば、ピザトーストから目を離せないでいる。それほどまでに空腹だったのだろう。

「食べていいよ?」

ーっ !! ー

「ほらっ、食べていいんだよ?」

未だに状況を受け入れられないのか近付き、姉妹の姉らしき方の手を無理やり握りピザトーストを握らせる。

「あっ……、暖かい。」

改めて、姉妹の足首を見れば足首に痛々しい切り傷が目に入る、傷の手当てはされなかったのだろう。傷口から菌が入りどす黒く見るも無惨な姿に息を飲む。
 
最初は、異世界だから言葉が通じないのかと思ったがそうではなく人拐いに足の健を切られてしまって動けないということに今更になった気が付いた。

「クソっ、少女になんて事をするんだ……。」

姉と目が合う……、傷口を隠す様に悔しいさと恥ずかしさの混ざり合った泣きそうな顔を見たら身体が勝手に動いていた。

(自由時間発動……)

まるで、ビデオの巻き戻し音が去る頃には少女の姉の足は元の健康な状態になり、不思議な物を見ているように問いただす。

「えっ、回復魔法なんて……、まさか、貴方は王子さまなのですか?」

(王子さま……か。少女が夢見る物語のヒーローか……、なら姉妹たちの前だけでも王子(ヒーロー)を演じて安心させてやろう。)

「そうとも、私は異国の留学から帰省した王子のイッセー・ミドなんとかだ。」

「ミドガルドです、イッセー様。」

「そう吾が輩は、イッセー・ミドガルドである。」

その言葉を言い終わる前に、彼女たちは地面に額を擦り付けまるで漫画や映画で奴隷がするようにひれ伏し懇願する。

「どうか、私達の村山をお助け下さい。」
「……下さい。」

下の妹は意味は理解しなくても姉のために必死に手伝おうとする姉妹愛が其処には会った。

僕が育てます……、いつか見た自分たち兄弟の記憶と重なり断る事なんて出来なかった。

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