生きて世界を見て廻る

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1章 10節 現実

先ほどの戦闘から1時間位が経過したが、未だに次のゴブリンが見つからない、2人の表情緊張と焦りが見える。
「中々のいないな…」
そんな緊張漂うなかサナがあることに気づく。
「ねぇルートこれ」
サナが指差す先には何かの足跡があった。
「この足跡はまさかゴブリンの?」
「そうだろうね、こっちに続いてるみたい」
「でも何かを引きずった跡もあるぞ?」
「確かめに行こう」
足跡は雨のぬかるみがあり分かりやすく付いており、迷うことなく進むことが出来た、進んでいくと1つの小屋があった。
「あの小屋…」
「だね」
木の影に隠れ様子を伺う、小屋の外にはゴブリンが1体見張りとしており、それ以外には確認出来ない状態だ。
「中にもいるんだろうか…」
「だろうねでも何体いるか分からないからね気を付けないと」
「まずはあの見張りの処理だな」
「それなら任せて」
サナは落ち着いた表情で弓を構え矢をつがえる。
「そういえばサナはこの前弓使った時に何か言ってなかった?」
「私は風魔法が得意なの、風に乗せて矢を放ってる」
「追い風で威力を上げてるのか」
「魔法で矢のコントロールも出来るしね」
そう言い弓を引き狙いを定める。
「風の加護よ…悪しきものを貫け…ウィンドショット!」
魔法と共に放たれた矢は、迷う事無く進み見張りのゴブリンの額を貫き絶命させた、ゴブリンは何をされたか理解出来ぬままその場で倒れた。
「終わった」
「速い…」
目で追えず、一瞬の出来事だった為驚きを隠せない。
「ルートには出来ない芸当だねぇ」
サナは不敵な笑みを浮かべルートを煽る。
「いつか出来るようになるさ!」
「期待しないでおくよ~」
せっかくの驚きを返して欲しいと言わんばかりのルートだがそんな事はお構い無しでサナは小屋へと近付く。
「ゆっくりな」
「分かってる」
小屋へ近付くと壁に耳を当て息を殺し、様子を探るが物音一つ聞こえない。
「窓から確認するか…」
そう言いルートは恐る恐る覗く、すると中は少し薄暗い為全部は確認出来ないが、壁や床が血で染まりゴブリンが3体居ることが確認出来た。
「中に3体いるぞ」
「他は?」
「暗くてよくわからなかったけどいくらか物が置いてあるように見えたぞ」
「武器か何かかな…何でもいいや、位置は?」
「小屋の扉を入ってすぐの左に1体後そのまま正面に2体いた」
「じゃあ作戦は、こうだね」
サナは地面に小屋の図を描きながら説明する。
「まず扉開けて私が左の奴を始末する、その後二人同時に中に入って正面の2人をやる、それでどう?」
「分かったそれで行こう」
扉の前に立ちルートは開ける構えに入りサナは弓を構える。
「じゃあ行くぞ…」
「いつでもいいよ」
2人で目を合わせて息を整える。
「行け!!」
ルートのその声と同時に扉を開ける、その後サナは左のゴブリンを確認し矢を放ちそれと同時にナイフに持ち替え2人で中へと突撃する。
「はぁ!」
中へ入ると寝起きで何が起きてるのか分からなく戸惑うゴブリンが2体いた、そんな事もお構い無しに2人は手に持つ刃物を振った、ルートは首にサナは心臓にそれぞれ突き刺した。
「よし!!」
サナが放った矢もしっかり刺さり、2人が刺したゴブリン2体共に死んだ、作戦は成功したのだだが、中はそんな事はどうでもいいかのように酷く荒れ見るに絶えない事になっていた。
「なんだよ……これ……」
作戦が成功した余韻に浸る事も出来ずに冷静になり辺りを見渡しその酷さに口を押さえる。
「引きずった後はこれだったんだね」
2人の目の前には、かつては自分達と同じ人…だったであろう物があり四肢は裂かれ無残にも肉は食われ原型をとどめていない、ただ部屋の左右の角に人が1人ずつ壁にもたれ掛かる用に座っていた。
「なあ!大丈夫か!」
ルートは右側の女性が気絶しているので起こす。
「あ…あ…」
その声で女性は目を覚ました、が意識朦朧とし状況が理解出来ていないようだ、まるで生きているが魂は無いような…。
「なあ!あんた大丈夫か?」
肩を揺さぶり、返事を求めるが反応がない。
「ねぇ…大丈夫?」
サナは左側の男性を起こした。
「あ…ああ!助かった!この声は人だろ!助けてくれ!」
サナが声をかけ男性は意識を取り戻した、幸い元気はあるようだが…。
「なあ!捕まって目が塞がれてるんだ!助けてくれ!頼む!」
「え…えっと……」
サナは彼の言葉が理解出来ない、いや理解出来ないのでは無い、理解したくないのだ、彼の目は塞がれてなどいないのだから。
「なあ!どうしたんだ!頼むよ!あっ!そうだ!アニスはどこだ!赤髪の女なんだ!一緒の冒険仲間なんだ!」
彼の言うアニスさんであろう人は反対の角にいる彼女がそうだろう、だが彼女は一言も話そうとしない。
「その女性は居ますよ…こっちの角に…でも意識がないみたいです…」
「そうか…でも生きてるんだな!良かった…もう会えないかと…頼む俺達を家に帰してくれ!後アニスの姿を確認させてくれ!」
2人の顔は険しくそして悲しい表情になる、そしてしばらく沈黙が続いたがルートが意を決して話した。
「アニスさんは無事です…ですがあなたは……両目とも塞がれてはいません!」
少し涙を浮かべながら言う。
「何を言ってるんだ…きみは…」
「あなたの目は潰されています……」
男は現実が理解出来ぬままその場で立ち上がり壁伝いに扉まで行く。
「あはっ…あはは…ここが外か」
「あ…危ないから外に出ないで!」
ルートが手を差しのべた時にはもう遅かった。
「目が見えないなんて意味が無いじゃないか!無駄だ!生きている意味なんてない!あはは!あはは!」
男は、狂気とも言える声を出しながら森のなかへと消えていった。
「待って!ダメだ!」
それをルートは必死に追いかける。
「ゴブリンだぞ?ははっ!ゴブリンに負けた?不意打ちされただけだ…そうだこれは夢だ!あはは!夢だから目が開かないんだ!ははは!これは夢だ!あははっ…」
男は狂気に飲まれ走ったが、目が見えない為自分の足で崖から飛び降りてしまった、笑い声と共に崖を落ちて行き、勢い良く頭を地面に叩きつけ死亡した、その様子を目の前で見てしまったルートだった。
「なんで…なんで…言わない方が良かったのか…」
人の死を目の当たりし叫びたくなる気持ちを押さえながら小屋へと戻る。
「あ…ルートっ」
小屋へ戻るをサナが駆け寄ってきた。
「さっきのひとは?」
ルートは小屋へ入るなりその場で座り黙りこんでしまった。
「言わなければ良かったとか思ってる?」
「へ…」
ルートは自分の考えてる事が当てられ驚きを見せる。
「ルート、あのね」
サナはゆっくりと前からルートの頭を抱きしめる。
「言わないのも優しさだけども現実って言うのはいつしか必ずみないといないのだから遅かれ早かれ知る事になるの、だからルートは言わなければ死ななかったなんて事は考えないで、過去は変えられないからどんな判断でもそれが正しいかなんて誰も分からない、気にするなとかは言わない、でも自分の判断には自信を持って、ルートが正しいと思う判断なら私はそれに従うよ。」
「サナ…」
その言葉にルートは、気持ちがほぐれ安心する。
「じゃあ帰ろ、この人助けて」
「ああ…そうだな」
ルートはアニスをおんぶし町へ戻る。
その足取りは儚くも重かった。

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