話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

戦場を駆ける欠陥アンドロイドの女神は劣等生と2人で戦うようです

颯★改

リゼルは自分がなんなのか知るようです。

「ハァハァ・・・酷い目にあった」
頬を赤く染め、ニケはリゼルに非難の目を向ける。
何しろ普通の人間なら圧死してもおかしくないGをその身に帯びていたのだ。無理も無い。
それに対しリゼルは 
「あぁ、そうだな」
と何処吹く風。
ニケの事など気にも止め無い様子でクゥエイク背中の状態を確認している。
「そうだなって・・・。
大体なんで人間のお前がそんなにピンピンしているだ!」
ダウンしている自分とは対照的に人間の身でありながらピンピンしているリゼルにニケはアンドロイドとしての尊厳を傷つけられたのだろう、少し怒った様子でリゼルに詰め寄る。
「さっき言った通りシートが柔らかいからだよ。
ほら、ふっかふかだぞ、ふっかふか」
リゼルはシートをむにむに指で押しながらニケにシートの柔らかさを伝える。
「否、絶対そうじゃない!」
「座ったらわかるよ」
「むぅー」
納得いかないという顔でシートに座る。
シートはニケをふわっと包み意識を闇へと誘う────。

「寝ちゃった・・・」
シートに座ってものの数秒で眠ってしまったニケ。
仕方なく1人でクゥエイクを整備しようと背中に登ろうとした瞬間、
『やっと二人きりになれたね、我が主マイロード
そんなニケの声が俺に届く。
だが、ニケは寝ている。
周りに人はいない。
つまり、声の主は
「やっぱりお前か、クゥエイク」
クゥエイクコイツしか居ない。
『ご名答!』
ピンポーンと、効果音付きで楽しそうに(ロボットなのに)解答を告げるクゥエイク。
「随分と楽しそうじゃないか。
俺に何の用だ?」
『新しい主である君と2人きりでお話がしたかったんだよ。
自己紹介を兼ねて、ね』
「まぁ、確かに自己紹介は大切だな。
俺の名前はリゼル。」
『僕の名前はタイプQAQ。
愛称はクゥエイクだよ』
「ん、よろしくな」
『こちらこそよろしくね。
国家の裏切り者さん』
コイツが人間ならウインクをしていたのだろう。
キラン★って感じの効果音付きでとんでもない挨拶をかましてきた。
「知っていたのか」
『当たり前だよ!
本当びっくりしちゃったよ。
初出撃する時に辺りにセキュリティアラームが鳴り響いていたんだから、
初めて倒す相手が自分の量産型だよ?
信じられる?』
「そりゃあ悪い事をしたな」
『いいのいいの、
むしろ僕は君に感謝しているんだよ?
何せあのままだったら僕は廃棄処分だったからね』
「どういう事だ?」
『君が奪った僕は量産型が完成した時点では用済み、速すぎる僕は誰にも乗りこなせなくて、あっても邪魔だからポポイのポイって感じだったんだよ』
「速すぎるって、じゃあ何で俺は乗れたんだ?
俺と同じシートだったんだろ?」
『うん、テストパイロット達は皆君と同じシートに乗ってグチャってなっちゃったんだ。
君が僕に乗れる理由は只1つ、それは君が改造人間サイボーグだからだよ』
「はぁ!?そんな訳ないだろ!
心臓に悪い冗談はやめてくれ!」
『やっぱり君は記憶を無くしている、否、この場合消されているの方が正しいかな?』
「だから、俺は人間だっての!
間違ってもサイボーグじゃあ無い!」
『まぁ、認めたくない気持ちはわかるよ。
でも、事実だ』
「なら証拠は?」
『君は僕を操縦する時にヘッドギアを付けたよね?』
「あぁ、付けたな」
『あれはアンドロイドから発せられる強力な・・・電波をキャッチするためのものだ。
何があっても人間の脳から出る微弱な交感神経の電気を受け取る事は無い』
「・・・・・・」
ここまで言われては受け入れるしかない。
念の為説明書のヘッドギアの欄を見てクゥエイクが言っていることが嘘では無いと確認した。
『僕が思うに君は僕を操縦する為に改造されたんじゃないかな?』
「じゃあ何で俺は記憶を無くしたんだ?」
『居てはいけない、だけど居なくてはいけない存在だからさ』
やけに確信めいた口調でクゥエイクは、言う。
「自信ありげじゃないか」
『まぁね』
「なぜだ?」
『今、軍のデータバンクに侵入して君の出生データにアクセスした』
「・・・なんちゅう事を」
また罪を重ねてしまった。
『僕を盗んだ時点でアウトでしょ』
「心を読むな」
『ふへへ、褒めたってなんもでないよ』
「褒めてないから。
それよりデータの俺はどうなっていたんだ?」 
『僕の予想通り、UNKNOWNだらけ。
いつ生まれた?UNKNOWN。
親は?UNKNOWN。
通ってた学校は?UNKNOWN。
秘密主義にも程があるよ?』
「マジかよ・・・」
絶句した。
何しろ自分のデータがUNKNOWNだらけなのだ。
俺の生まれた年は17年前。
親はリディとアゼルの2人。 
セレノアハイスクールに通っていた。
はっきり覚えている。
誕生日プレゼントに貰ったM60。
リディとアゼルと俺の3人で行った射撃場。
ハイスクール時代の時に一緒にバカをやったゲルノとマリーネ。
覚えているのに・・・。
コレが作られた、弄られた記憶だなんて、信じられない。
信じたくない。
『まぁ、ショックだろうね』
「でも何故こんな事を?」
『僕のスペックは冗談抜きで軍を壊滅させることができるからね、裏切りを恐れたんじゃないかな?』
「一応筋は通っている、か」
『これは僕の想像でしかないんだけど、君が小さいころはきっと戦争に反対する様な思想を持っていたんじゃないかな?
本来ならそこで死刑だけど、君には何かしらの素質、または力があった。
だから君は改造だけに留められたんだと思う』
くだらない、と一言で片付けられたらどんなに楽だろうか。
でも、出来ない。
『そこまで悩む事ないんじゃないかな?
何度も言うけど君は国家の敵なんだから』
「だけど!」
クゥエイクの無責任な物言いについイラッときた声を荒らげてしまう。
と、
「リゼルはそのままで良い」
クゥエイクと同じ声なのに何処か温かみのある声が聞こえた。
その正体は、
「ニケ・・・」
「どんな力があろうと、国家の敵だろうと、私の目の前に居るのは戦車に轢かれそうになった私を助けてくれたリゼル、お前だ」
ニケは真っ直ぐ俺の目を見て一つ一つ丁寧に言葉を紡ぐ。
俺を見つめるその目は何よりも綺麗で、彼女がアンドロイドだということを改めて認識させられる。
と同時に彼女から紡がれる言葉はどんな指導者の物よりも想いがこもっていて、すっと俺の胸に染み込んでいった。
「わかったよニケ。
ありがとう」
「良いんだよ、それにリゼルは私の事を人間として見てくれる。
私はそれがたまらなく嬉しいんだ」
「まぁ、お前は表情豊かだからな。
どうしてもロボットには見えないんだよ」
「じゃあ、これからは無表情で居ようか?」
「やめてくれ、俺は今のニケの方が好きだ」
「好ッ!?」
「いや、そこに反応すんなよ、恥ずいだろ」
「だって、そんな事言われた事初めてだもん・・・」
髪をいじいじ、指でくるくる。
頬をほんのり朱に染めて
『青春だね』
ポツリとクゥエイク。
それから暫しの沈黙。
言葉はないけど、とても暖かかった。
もう、自分とか他人とか、どうでも良いや。
俺は、リゼル。
ニケのマスターでクゥエイクのパイロット。
うん、これで良いや。
そう、思えた。

「戦場を駆ける欠陥アンドロイドの女神は劣等生と2人で戦うようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「戦記」の人気作品

コメント

コメントを書く