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戦場を駆ける欠陥アンドロイドの女神は劣等生と2人で戦うようです

颯★改

クゥエイクのシートは柔らかいようです。

ウィィィィィィィィィィィィンという駆動音と共にディスプレイに光が点る。
「ニケ、何か言ったか?」
後ろの助手席に乗り込んだニケに聞いてみる。
「いいや、私は何も言ってないぞ」
「ふーん」
やっぱり幻聴だったのか?
「まさか、な」
『クゥエイク』が喋るなんてくだらない考えを振り払いクゥエイクのディスプレイに向き合う。
ディスプレイにはクゥエイクの操縦方法と画面の見方、各オプションの使い方が表示してある。
クゥエイクは基本的に手の横にある2つの操縦桿と足元にあるフットペダル、それをサポートするイメージを脳から直接クゥエイクに伝える為のヘッドギアの3つで動かす。
試しに手を上げる動作をさせてみると、ほぼ思い浮かべたと同時に手を上げる。
「こりゃあすげぇ」
ニケが感嘆の声を漏らす。
コクリ、と頷いて同感の意を示す。
一通り操作方法を確認してから、
「よし、さっさとこんな所から抜け出そうぜ」
リゼルはニケにそう言い、足元のフットペダルを踏み込んだ。
クゥエイクは一瞬のうちに遥か上空へ飛んで行った。



「こりゃ大変だ・・・」
アンドレはスタングレネードから目を回復させると、その目に映ったのは丁度クゥエイクが真上に飛んで行った瞬間だった。
アンドレはすぐさま無線機を取り出し、本部へ連絡した。
「此方『パンドラの箱』輸送班、アンドレ。
至急応答願う!」
『此方作戦本部、どうした?』
「『パンドラの箱』が奪われました!」
『何!?敵は何者だ!』
「『パンドラの箱』を開けたのは『万年反抗期』と白い女です!」
『チィッ!リゼルの奴裏切りやがったな!
おい!聞いての通り『パンドラの箱』が開けられた!犯人はリゼルの奴だ!クゥエイクの量産型はもう出来ているな?
アレを使え!
輸送班はそこで待機していろ!』
それだけ言うと無線は切れてしまった。


「リゼルの奴はクゥエイクのダミーを持っていった様だ」 
作戦本部は無線の相手だとは思えないほど静かだった。
「ダミー?じゃあ動くのはおかしいじゃないか」
「リゼルが奪ったのはこれから廃棄する予定の欠陥品だ」
「欠陥品?アレに欠陥なんてあるのか?」
「奴の奪っていったクゥエイクは誰も乗りこなせ無かったんだ」
「どういう事だ?」
「早すぎるんだよ、何もかも。
あのクゥエイクの移動速度は異常でな、速すぎて中に居るパイロットは一瞬のうちにぺちゃんこになっちまう」
「じゃあリゼルもぺちゃんこなんじゃないか?」
「だからクゥエイク本体を回収させに行くんだ。
一応アレは国家機密だからな」
「でもあのサイズの機体をどうやって回収するんだ?」
「その事については問題無い。
つい先日クゥエイクの量産に成功した。
今、パイロットを集めて部隊を編成中だ」


「思ったより速いな」
クゥエイクのコックピットでリゼルは誰に言うでもなく呟く。
「おい、この速度普通の人間ならぺちゃんこになる速度だぞ。
リゼルはなんで大丈夫なんだ?」
「シートが柔らかいからじゃないか?」
「えぇ・・・」
納得いかない様子で此方を見るニケ。
「それよりそろそろ追っ手が来る頃合いだ。
何か武器は無いのか?」
「待ってろ、今調べる」
ニケは後ろで操作パネルをいじる。
「あぁー、非常に言い難いんだが・・・」
「無いのか?」
「・・・うん」
「だよな」
箱開けた時にあったのコイツだけだもんな〜。
「どうするんだ?」
「格闘しか無いだろ」
「あっ!」
「どうした?」
「さっきのトラックにクゥエイク用の武器があったらしいぞ!」
「それは良いニュースだ!戻るぞ!」
クゥエイクを反転させ急加速させる。
ギュン!
と体に一気にGがかかる。
「ッグゥ!」
ニケが苦しそうな声を出すがそれに構っている暇は無い。
何故なら奴等に武器を奪われる訳には行かないからだ。
「悪ぃ、もうちょい早くするぞ」
ニケに一言謝ってからフットペダルを更に踏み込む。
「なんでお前は大丈夫なんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
ニケの悲鳴をBGMにトラックへと向かう。
「ほら、見えて来た、頑張れ!」
言った瞬間にペダルを離し、トラックへと着地する。
その時に両手を上げてしまうのは愛嬌だ。
「・・・死ぬかと思った」
「足がついているから死んでない。
安心しろ」
「えぇ・・・」
納得いかないって顔でこっちを睨むニケ。
「何だよ」
「何でもないっ」
ぷいっとそっぽを向いてしまうニケに変なのと思いながらトラックの中にある武器を探す。
あったのは背中に懸架出来るタイプのバズーカ2問と腰に吊り下げることの出来る拳銃が2丁。
それと逆五角形の形の盾とバスタードソード
が1つずつ。
「これだけあれば充分だな」
全部拾い上げてトラックを後にした。



丁度その頃、
「レーダーに感あり!」
出動していた量産型クゥエイク部隊の1人が声を上げた。
「何っ!」
「情報を照会・・・間違いなく奴です!」
「よしっ!行くぞお前ら!」
隊長が周りの隊員に呼び掛ける。
「「「「yaー!」」」」
周りの隊員はコックピットの中で敬礼、
それに連動してクゥエイクも敬礼をする。
量産型クゥエイクはリゼルのものと違って全身が灰色にペイントされている。
見た目も大分変わっていて、西洋鎧からデッサン人形そのものになっていた。
隊長機だけはカラーリングが黒になっていた。
隊長がフットペダルを思いっきり踏み込むとクゥエイクのスラスターが一気に火を噴く。
隊長に続け、周りの隊員も次々と飛び立つ。
この先にあるのは勝利だと信じて。


「おい、気付かれた様だぞ」
ニケはディスプレイに映る赤い点を見てリゼルに伝える。 
「見つかっちゃったか〜」
「そんな呑気なこと言ってる場合か!
相手は少なくとも10機も居るんだぞ!」
「たかが戦闘機だろ?
なら気張る必要も無い」
「それが違うんだな〜」
「何?」
「奴さんもクゥエイクに乗ってるのさ」
「量産に成功してたのか・・・」
「どうする?」
「戦闘するしか無いな」
「アホか!逃げろよ!」
「いいや、やだね!
俺は戦う!」
「こんの、わからず屋!!!」
「うるさいドジっ子!」
「バーカ!アーホ!」
「バカって言った方がバカなんだよ!」
「じゃあお前もバカだ!」
なんて低レベルな喧嘩をしている内にレーダーの赤点は此方にどんどん近づいてくる。
「あぁぁぁぁぁもうっ!分かったよ!
好きにしろ!死ぬのは嫌だからな!」
と、ニケが頭を掻きむしり吐き捨てるように言った。
「安心しろ、俺もお前も死なねぇよ」
「ったく、その自信はどこから来るんだか・・・」
ニケがそう呟いた瞬間、
ビィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!
とアラームがクゥエイクの中に鳴り響く。
デッサン人形達が携帯していたライフルを撃ってきたのだ。
「もう来たのか!」
リゼルは機体を反転させ、盾と肩のバズーカを構える。
ライフル弾を盾で受けてバズーカを1射、2射。
デッサン人形達は横回転して1射目のバズーカを避けるが、2射目のバズーカは1人被弾した。
味方を落とされて躍起になったのか1人が接近戦用のレイピアを構えて此方に突っ込んで来た。
『よくも仲間を!!!死ね!』
無線から聞こえる慟哭を聞きながらそれを横に回避し、無防備になったその横腹を蹴る。
その隙をついて後ろからライフルを撃たれるが、
「後ろ!」
とニケが教えてくれた為、上に飛ぶことで回避出来た。
行き場を失ったライフル弾は真っ直ぐレイピアで突っ込んできたデッサン人形にひとつ残らず被弾する。
『た、助け・・・』
ドォォォォォォォン!!!!
ライフルで味方を撃ったデッサン人形動揺したのか、一瞬たじろいだ。
『俺は、俺はそんなつもりは・・・』
その隙に腰の拳銃で胸にあるコックピットを撃ち抜いた。
「3機目!」
ニケが喝采の声を上げる。
「油断するにはまだ早いぞ!」
リゼルはニケに喝を入れて目の前のモニターに向き合う。
残る敵は後9機。
デッサン人形達は散会してリゼル達を囲んだ。
上にも下にも居る為、どこにも逃げ場はない。
奴等は勝ったと思っているのか悠長にライフルをリロードしている。
「逃げ場が無いぞ、どうするんだ?」
ニケはリゼルなら何とかしてくれると信じきっているのだろう。
ニヤニヤしながらからかうようにリゼルに聞いてくる。
『投降しろ!お前に逃げ場は無い!』
リゼルはニヤッとニヒルに笑い、
「逃げ場がないなら作れば良いッ!!!」
バスタードソードと盾を構え、真っ直ぐ前に突っ込む。
その勢いで一機のデッサン人形を串刺しにする。
『来るなぁァァァ!!!!!!』
周りのデッサン人形がライフル射撃を開始する前にバスタードソードを横に振って刺さっているデッサン人形を爆発させる。
爆発の煙を煙幕代わりに次に狙いを定める。
「次ッ!!!」
次に狙うはあの黒。
恐らく隊長機であろう。
「ヒャッハァァァァァァ!!!!!!
イケイケ!もっとだ!もっと血を見せろ!」
ニケは何か壊れてた。
爆発に紛れて隊長機を狙ったが、そこは流石隊長機。
向かって来るリゼルの剣を真正面から盾で受け止めた。
隊長機はリゼルの慣性を利用し、体を反転させると、その背中にライフルをありったけ叩き込んだ。
『やったァ!』
隊長が喝采の声を上げる。
『否、まだだ!』
隊員の1人が絶叫する。
驚いてリゼルの方を見ると、そこにはほぼ無傷の状態で白い機体が佇んでいた。
『何、で』
化け物を見るような目をこちらに向けてくる。
「そんなんこっちが知りてぇよ」
思ったよりコイツは頑丈な様だ。
『死ィィいィィねェェェェェ!!!!!!!!!!!!』
絶叫しながらレイピアを振るう隊長機。
それを盾で受け止めバズーカを至近距離から頭にお見舞いしてやる。
頭部を失った隊長機はなりふり構わずめちゃくちゃにレイピアを振り回す。
その無防備な姿に向かって遠慮無しにバズーカを2射した。
『うワァァァァァァァァ!!!!!!』

『隊長がやられた!』
『どうすれば!』
狼狽える隊員達。
『総員撤退!』
そこに副隊長の指示が入る。
「させないさ!」
それを阻止しようと逃げようとするデッサン人形の一機の頭を掴み、他のデッサン人形達に見せつける。
「コイツがどうなってもいいのか!」
『おのれ、卑怯者!レミーロを離せ!』
『頼む助けてくれ!』
『外道!』
無線から聞こえてくる命乞いと罵詈雑言を一通り聞いて、
「よし、分かったコイツは離してやる」
『本当か!』
頭を掴んでいるデッサン人形から安堵の声が聞こえる。
「但し、俺を見逃せ」
『そんな事!』
「聞けないってか?」
頭を掴んでいるデッサン人形にバズーカを突きつける。
『ひいっ!?
お願いだ!コイツの願いを聞いてくれ!
俺には妻も子供もいるんだ!
家族を残して死ぬ訳にはいかないんだ!
お願いだァァァァァァ!!!!!!』
しばらく間を開けて
「どうするんだ?」
聞いてみる。
『解った、手を引こう。
約束通りレミーロを離してくれ。
彼は俺の大切な親友なんだ』
副隊長が手を上げて降参の意を示す。
「よーし、交渉成立だな。
コイツは返すぜ」
デッサン人形達にレミーロを投げ付けて、
奴等が狼狽えているうちにフットペダルを思いっきり踏み込んでその場から離脱する。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
というニケの悲鳴をBGMにしながら。

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