3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

7話

「では、次にクエストの受注方法について
説明しますね。クエストには、それぞれ
推定難易度が設定されています。例えば、
これ」


差し出されたのは、狂暴な熊のような
生き物の絵が描かれた紙。
右下には赤文字でレベル5以上と書いて
ある。


「ほとんどのクエストは、ここ、ギルドの
受付で受注できますが、この推定難易度の
レベル以上でなければ、クエストを受けることができません。緊急クエストのような
特例もありますが」


「なるほど......」


「レベル1では受けれるクエストがあまりないので、とりあえず......」


手前の本棚から受付の女は何かを取り出す。


「武術や魔法を極めたマスター達に
弟子入りすることをオススメします」


それは勧誘ポスターだった。


「で、弟子入り......」


「はい。剣士や魔導師、暗殺者、踊り子。
まだまだありますよ。好きなのを選んで
ください」


「これって......絶対に入らないと
駄目なんですか?」


「いいえ。勿論任意です。しかし、
レベルを上げるにはマスターとの訓練
が最も効率的かと」


別に弟子入りするのが嫌だと
いうわけではない。


『新たな勇者よ来たれ! 君もこの国を守る騎士団に入団するのだ!! 入部費5トリカ』


必ず、どのマスターの勧誘にも入部費用が
記載されてあるのだ。


──金ねぇよ……どうしよ……


諦めかけたその時、ある一文に目が止まった。

──いや……これなら……






あれから随分時間が経った。
ギルドで冒険者の登録を終え、元の
席に戻った隼人は、ウィンクを待っていた。
親切にも貸したお金で護衛の者を雇ってくれるという。
だが、それを信じた自分が馬鹿だったと
気づいたのは、更に八時間が経過してから
のことだった。


結局、ウィンクは姿を見せなかった。


──くそ……騙したな……あの女……


有り金はゼロ。今すぐにでもあの女を見つけ出して金を取り返したいところだが、このままでは飢えて死ぬ。


──行ってみるか……この人のところへ……


重い腰を上げ、隼人が向かったのは、
この街から少し離れた小さな村だった。


「この家か?」


ギルドの受付の女に書いてもらった地図を
右手に、ようやくたどり着いた。
時刻はもう夜を過ぎている。
事前に受付の女が弟子になりたい人が
いると、連絡してくれているので、
怖気付くことはない。
寧ろ、自分の行く場所など、
ここにしかないのだ。


「行くか......」
 


意を決して扉をノックする。


「は~い 」


奥から声がした。


「すみません。ここにいるオマカさんの
弟子になりたくて来たん......ですけど」


扉が開く。


隼人の声は尻窄まりに小さくなっていった。


「いらっしゃい  待ってたわよ 
あなたが隼人君ね 」


扉から顔を出したのは、40歳前後の
ダンディーな男だった。




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