3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

11話 異世界人の集い11

ウィンクさんが人混みの中へと
姿を消した後、俺は直ぐにタチアナの
ところに駆け寄った。


「大丈夫か!?」


「大丈夫......しかし......すまない。
また君に助けてもらった......」


「いや、お前のせいじゃない。
俺が悪かった」


そう。ウィンクさんの言った通り、
油断していた。
もしウィンクさんがタチアナを
助けてくれなければ、今頃どうなって
いたかわからない。
全ては俺の不注意が招いた結果だ。


「......もっと注意すべきだった」


「......隼人......」


どうやらシェアルの能力によって、
力が抜けてしまっているタチアナを
負んぶし、空いている席へと座らせる。


「......本当に......悪かった。」


「そう落ち込まないでくれ。
見ての通り、ほら、私は無事だろう?」


そう励ますようにタチアナは言った。
しかし、直後、その微笑みは消え、
少し悲しそうな表情になった。


「......しかし......私は痛感したよ」


「痛感?」


「私の弱さをだ。
先ほど私を襲ったあのシェアルという
奴の能力値は、私よりも遥かに上だろう。
それに、あのウィンクといった女性も、
どうやら能力値が1000万以上ある
というではないか」


確かに、あのシェアルの手下共が、
ウィンクさんの能力値が1000万以上
あると狼狽していた。
異世界人の中ではそういう人達を
イレギュラーと呼んでいるらしい。


「隼人も、能力値が1000万以上ある
のだろう?」


「あぁ。多分な。ここに測定不可って
書いてある。ってことは、俺も
いわゆるイレギュラーなのかもな。」


俺は組合カードで、自分の能力値を
見ながら言った。


その画面を見たタチアナは、力なく
微笑んで、視線を外した。


「......正直......ここまで君と差がある
とは思わなかった......ましてや、ウィンクのような君と同等の異世界人がいるとも、
思っていなかった。私はここでは
本当に、弱者なのだな......」


きっと、タチアナはこれまで
多くの人から天才と呼ばれ、期待されて
きたのだろう。だから、自分よりも
強い存在がごろごろいるという現実を
まだ、受け入れられていないのだ。


「そりゃあな。タチアナと俺、いや、
ここにいる異世界人達とは生きてきた
時間が違う。一見、同年代に
見える異世界人が、実は1000年の
時を生きていた、なんてざらにある。
でも、そんな中でも現時点で......
えーっと、何位だっけ?」


「1289位だ。」


「それだけの順位なら、寧ろ自分を
誉めるべきだろ」


「......そう......だろうか......」


そう励ましても、タチアナは怪訝な
面持ちのままだった。


「......まぁ、これから強くなればいいさ。
俺以上にな」


「......果たして、君に追い付くまでにどれ
程の時間がかかるか......」


「大丈夫だ。何年かかろうが、時間は
たっぷりあるんだ。きっとお前も、
俺と同じくらい強くなれる。だろ?」


俺はそう言って、にっと笑う。


「時間はたっぷりある......か......
そうだな。君の言う通りだ」


うじうじしていてもしかたない!

そう自分に言い聞かせるように、
タチアナは自分の頬を両手で叩く。
その動作で、ようやくタチアナの
力が戻ってきたことを確認した俺は、
さっと席から立ち上がる。


「じゃあ、そろそろ神様のところに
帰るか」


俺は座ったままのタチアナに
手を差し出す。


「いよいよ本当に、新たな異世界に
行くのだな?」


「あぁ」


それを聞いてタチアナは、力強く
俺のその手を握った。




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