3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

2話 異世界人の集い2

「異世界寄合所?」


俺は先程から繋いでいた手を離して、
タチアナの方を向く。


「ああ。ここにいる全員が、
いろいろな異世界から来た転生者や
転移者だ。」


「全員......これほどまでに隼人以外の
異世界人がいたのか。」


ここから確認できるだけでも100人は
いるであろう異世界人を見て、タチアナは
興味深そうに彼らを見ていた。


「しかし......なぜ我々はここに来たのだ?
ここが次に私達が救う異世界なのか?」


「いいや、違う。ここはそもそも異世界
じゃくて、異次元だからな。」


「異次元?」


これから共に異世界を旅する以上、
タチアナにも俺が知りうる異世界の
情報は伝えておくべきかと、俺は口を
開く。


「いいか? 俺みたいな転生者は自由に
異世界を移動はできないが、転移者は
自由にそれができるってのは、前教え
たよな?」


タチアナはそれに頷く。


「それを不便に思った昔の転生者が、
転生者も自由に行き来して、他の異世界
人と知り合える空間を作ろうと考えた。
その転生者が作った空間がここなんだ。
まあ、今では異世界生活に飽きた異世界
人の酒飲み場になってるがな。」


「......では隼人はなぜここに来たのだ?
隼人は他の異世界人が嫌いなのであろう?」


そうタチアナが怪訝そうに聞いてくる。


「まあ、そうなんだけどさ。
ちょっと用事があるんだ。」


「用事?」


「ああ。タチアナも来てくれ。」


状況がわからないタチアナは
首を傾げながらも


「わかった。」


とだけ答えた。
俺はそれを聞くと足を前へと踏み出し、
酒を飲み、躍り狂う人混みの
中へと入っていく。
と、その時、あらゆる方向から俺は視線
を感じた。
それと同時に辺りにいた異世界人達が
ざわつき始める。


「おい......あいつって......」


「え、あの?」


「何であいつがここにら......」


そのざわめきの原因が俺であると
察した俺は、後ろにいるタチアナの
腕を掴んで、すぐさまこの人混みの中から出ようとした、直後だった。


「へー、はやっちがここに顔を
出すなんて、珍しいこともあった
もんだね~。」


ゾクリとするようなその冷たい声に、
俺は久々に冷や汗をかいた。


「ちっ......」


そして思わず舌打ちをついてしまった。


「そんな嫌な顔しない。
お姉さん傷ついちゃうぞ?」


本当はこれっぽっちも傷ついていない
癖に、そんなことを平然と
口にする女性が、いつの間にか
俺のすぐ側にいたのだった。

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