3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

1.5章 1話 異世界人の集い

「それで......隼人君よ。
あの約束をまさか忘れてはおらんな?」


これから始まる新たな異世界生活に
胸を踊らせていたタチアナを尻目に、
神様は俺に言った。


「忘れてませんよ。」


「それならいいんじゃ。では、さっそく
行ってもらうとしよう。」


「? どこに行くのだ、隼人。いよいよ
次の異世界に転生するのか?」


「違うよ。異世界よりも嫌な場所だ。」


「い、嫌な場所? それは海か?」


「違う......いやまあ、海も嫌だけど......」


俺とタチアナがそんな話をしている
うちに、神様の方は準備ができたようで


「それじゃ始めるぞい。」


と、両手のひらを俺とタチアナの
方に向ける。
その奇妙な神様の振る舞いに
首を傾げているタチアナの
手を俺は握った。


「なっ!! は、隼人! い、いきなり──」


するとタチアナはびっくりして
赤面したが、俺ははっきりと
彼女にこう言った。


「タチアナ。俺からなるべく離れるなよ。」


その言葉に何かタチアナは言いかけて
いたが、直後、俺達の体は
眩い光に包まれやがて意識を
失ったのだった。










もう二度とここに来ることはない。
いや、二度とこんなところには来ない。
俺はそう決めていた......はずだったが......


「はぁ......来ちゃったか......」


俺は思わずため息をついた。


「隼人......ここはどこだ?」


俺の横にはおそらく辺りをキョロキョロ
見回しているタチアナがいるだろう。
確信はない。なぜなら、俺の視界はこの
暗闇で何も見えないのだから。
けれど、右手に感じるタチアナの
温もりが、彼女が俺のすぐそばにいる
ことを教えてくれた。


俺はこの暗闇で動揺している
彼女の手を引いて、前に進む。


「俺の記憶が間違っていなければ、
ここに............あった......」


俺は暗闇の中左手を伸ばし、
掴んだ扉の取っ手を自分の方へと引いた。
すると、扉の隙間から、中の光と
音が俺達に押し寄せて来た。


「うっまぶ──」


俺はそう言いながらも、タチアナと
一緒にその扉の中へと入る。


「!? ここは......」


タチアナはその光景を見て言葉を
失っていた。
無理もないだろう。
なんせ、今俺達の目の前に広がっている
のは、タチアナの世界よりもはるかに
技術の進んだ近代的な空間だったからだ。
この空間をどう説明すればいいのか、
俺にもわからないが、例えで言うなら
ナイトクラブに近いだろう。
天井からは多彩なスポットライトで照ら
され、人々は酒を飲みながら躍り
狂っている。だが、それだけではなく
異世界でよく見かけるギルドの
受付所や、バーにありそうなカウンター
があり、そこで談笑しながら
酒を飲む者や、隅っこの方で目を
ギラギラ光らせながら酒を飲んでいる
者もいる。


「は、隼人......」


その異様な光景に不安になったのか、
いつの間にか、俺の手を握るタチアナの
手に力がこもっていた。


「タチアナ......ここはな......俺達のような
転生者や転移者、正式にはそれらを
まとめて異世界人って言うんだが、
その異世界人が集う異次元なんだよ。」


「異次元......?」


「ああ......俺達異世界人は総じてここを
異世界寄合所と言う。」


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