3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
三百五話 光5
「兄様! 兄様!」
タチアナは腰を下ろして
瀕死のバーゼンを寝かせる。
バーゼンは一応タチアナの
呼ぶ声に反応を示したが、
声を発することもできずに
ただ苦しそうに呼吸をしている
だけだった。
「だ、誰がこんなことを......」
タチアナは声を震わしながら、
魔王のいる玉座を見た。
「貴様か!! 私の兄を傷つけたのは!」
タチアナは焼け付くような視線を
魔王に向ける。
魔王はふっと不敵に笑った。
その反応を見てタチアナは
自分の拳を握り絞める。
隣では、もはや戦意を失った
カクバがただ呆然としている。
バーゼンをそんな目に合わしたのは
俺なんだよ......
カクバが元に戻ったタチアナに
そう伝えようと
「......タチ──」
口を開いたその時。
シュンッ!!
途轍もない勢いで玉座の前に
立っていた魔王がカクバに接近し、
そして蹴り飛ばした。
「余計なことを口にするな。
人間。」
蹴り飛ばされたカクバは
そのまま壁に激突し、意識を失った。
タチアナは今の現状が飲み込めず、
カクバ! と叫ぶことすらできなかった。
「......何をそんなに震えておる。」
カクバを蹴り飛ばした魔王は、
視線をタチアナに移す。
「......き、貴様! よくも私の仲間を!!」
「仲間? 何を言っている。
あやつらは貴様の仲間では
ない。寧ろ、敵ぞ。」
「......?」
「我にその体を乗っ取られていた時の
記憶も無いか......よかろう。
今まで我の体と共に生きてきたのだ。
言わば貴様は、我の分身──いや、
我そのものと言える。
ならば、我は貴様に教えよう。
貴様が何者であるか。
そして、貴様が今後どうなるかを。」
「貴様はさっきから何を──」
「よく聞け。タチアナと
名付けられた我よ。貴様は
以前、我の部下に捕まった
とある人間に、我の生き肝を移植して
生まれた人間と魔族のキメラである。」
「......何をふざけたことを──」
「ふざけてなどおらん。
聞くが、貴様に幼い頃の人間としての
記憶はあるのか?」
「.......」
「貴様と同じ血が流れている人間は
いるのか?」
「......」
今まで避けてきた、忘れようと
していたことを魔王は自分に
尋ねてくる。
タチアナの顔色はどんどん真っ青に
なっていった。
「同じ血が流れていなくとも......
私の家族はここにいる。」
答えられたのはこれだけだった。
「? こやつが? 馬鹿を言うな。
このような下等生物が貴様の家族な
わけがなかろう。」
「私の兄を馬鹿にするな!!!
たとえ、私に記憶が無かろうと!
兄様と同じ血が流れていまいと!
私は兄様の妹──」
「愚か者めが!!! 
貴様に家族などおらん!!
貴様は我の体に生まれた
人間でも魔族でもない
偶然の産物にすぎん!
そんな貴様に家族など
いるものか!」        
タチアナは腰を下ろして
瀕死のバーゼンを寝かせる。
バーゼンは一応タチアナの
呼ぶ声に反応を示したが、
声を発することもできずに
ただ苦しそうに呼吸をしている
だけだった。
「だ、誰がこんなことを......」
タチアナは声を震わしながら、
魔王のいる玉座を見た。
「貴様か!! 私の兄を傷つけたのは!」
タチアナは焼け付くような視線を
魔王に向ける。
魔王はふっと不敵に笑った。
その反応を見てタチアナは
自分の拳を握り絞める。
隣では、もはや戦意を失った
カクバがただ呆然としている。
バーゼンをそんな目に合わしたのは
俺なんだよ......
カクバが元に戻ったタチアナに
そう伝えようと
「......タチ──」
口を開いたその時。
シュンッ!!
途轍もない勢いで玉座の前に
立っていた魔王がカクバに接近し、
そして蹴り飛ばした。
「余計なことを口にするな。
人間。」
蹴り飛ばされたカクバは
そのまま壁に激突し、意識を失った。
タチアナは今の現状が飲み込めず、
カクバ! と叫ぶことすらできなかった。
「......何をそんなに震えておる。」
カクバを蹴り飛ばした魔王は、
視線をタチアナに移す。
「......き、貴様! よくも私の仲間を!!」
「仲間? 何を言っている。
あやつらは貴様の仲間では
ない。寧ろ、敵ぞ。」
「......?」
「我にその体を乗っ取られていた時の
記憶も無いか......よかろう。
今まで我の体と共に生きてきたのだ。
言わば貴様は、我の分身──いや、
我そのものと言える。
ならば、我は貴様に教えよう。
貴様が何者であるか。
そして、貴様が今後どうなるかを。」
「貴様はさっきから何を──」
「よく聞け。タチアナと
名付けられた我よ。貴様は
以前、我の部下に捕まった
とある人間に、我の生き肝を移植して
生まれた人間と魔族のキメラである。」
「......何をふざけたことを──」
「ふざけてなどおらん。
聞くが、貴様に幼い頃の人間としての
記憶はあるのか?」
「.......」
「貴様と同じ血が流れている人間は
いるのか?」
「......」
今まで避けてきた、忘れようと
していたことを魔王は自分に
尋ねてくる。
タチアナの顔色はどんどん真っ青に
なっていった。
「同じ血が流れていなくとも......
私の家族はここにいる。」
答えられたのはこれだけだった。
「? こやつが? 馬鹿を言うな。
このような下等生物が貴様の家族な
わけがなかろう。」
「私の兄を馬鹿にするな!!!
たとえ、私に記憶が無かろうと!
兄様と同じ血が流れていまいと!
私は兄様の妹──」
「愚か者めが!!! 
貴様に家族などおらん!!
貴様は我の体に生まれた
人間でも魔族でもない
偶然の産物にすぎん!
そんな貴様に家族など
いるものか!」        
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