3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

三百三話 光3

「ヨーテル!! ホーズキ!!」


壁に激突した二人は
そのまま地面に倒れこみ、
ピクリとも動かない。



「我を忘れるな。
貴様らなどいつでも殺せる。」



鬼灯とヨーテルの元に駆け寄るカクバに
タチアナは言った。



「息はある......」



カクバはその言葉に耳を貸さず、
ヨーテルと鬼灯の安否を確認する。


「......もう容赦しねぇぞおおお!!!!」



そして、カクバは憤怒の形相で吠えた。


たとえ、相手が元仲間のタチアナで
あったとしても。
これまで共に努力してきた
友人であったとしても。
もうカクバに躊躇いの気持ちなど
一切無かった。


殺す。タチアナを殺す。
ただ、それだけ。
タチアナ以外の物などカクバの
目には入っていなかった。



「風神!!!」


カクバは体を高速で回転し、
竜巻を発生させた。
その発生させた竜巻を
残された左手へと集めていく。


その竜巻はまるで生き物のように
カクバの握り拳にまとわりつき、
最終的にはヒュンヒュンヒュンヒュン
と音を立てて、カクバの拳の中に
収まった。


「ほう......」


タチアナは一目で、
カクバの拳の中に途轍もない
エネルギーが凝縮されているのに
気づき、少し興味深そうな表情を
浮かべる。


だが、それにカクバは臆することなく
突っ込んだ。
今自分が出せる最高の技を
この拳に秘めて......カクバは
無我夢中でタチアナに突撃した。


カクバが通った地面は台風のような
風が発生して小石が飛び散る。


「これは見物だな。」


タチアナはカクバの拳が届く
一歩手前でそう呟く。


「しねぇえええええええええええ!!!」


対してカクバは、憎しみと怒りを
込めて拳を振り抜いたのだった。



ドゥギュッ!!


鈍い音と共にカクバは確かに
拳が相手の体を貫いたのを
感じた。


.........勝った。



カクバはそう確信しながら、
自分の拳がタチアナの心臓部を
貫いているかを改めて確認する為、
顔を上げた。


「なっ─────」


だか、カクバの目の前にいたのは
タチアナではなかった。
カクバの拳を受け止めたのは、
親友であるバーゼンだった。


「ゴホッ......」


バーゼンの腹部は見るに耐えない程、
破壊されており、口からは絶えず血を
吐き続けている。


「な、なんで......なんでだよ!!
バーゼン!!!!」


カクバは動揺しながらも、
自分の左腕をバーゼンから抜いた。
その時カクバは、バーゼンの後ろに
タチアナがいるのを見た。


まさか、この後に及んで......バーゼンの
奴......タチアナを庇ったのか!?
鬼灯やヨーテルがあんな目にあった
ってのに!!
なんでだよ!! なんでお前は
そこまでタチアナを守るんだ!!



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