3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

三百一話 光

面白い。少し見守るとするか......


仲間同士で言い合いをし始めた
鬼灯とカクバの様子が、タチアナには
興味深く思えて一時カクバ達への
攻撃を止めた。


「お前にとってタチアナが
大切な存在だってことはわかってる。
けどな、腹をくくれよ。ホーズキ。」


「カクバ......間違ってる...... 
きっと他に......魔王を倒す方法が──」


「なら教えろよ!!!!! 今すぐ
こいつの倒し方を俺に教えろ!!!」


「......」


「ほらな.......わからねぇんだろ?
ホーズキ。それでも、そこを退か
ない気か? それなら俺はお前を──」


「落ち着くのだよ! カクバ。」


頑としてタチアナを庇おうとする
鬼灯に、カクバが手を出そうとした
ところでバーゼンが止めに入った。


「魔族に言われたことを
そのまま真に受けるな。
本当に俺の妹の体に魔王の
心臓があるなどという確証は
ないのだよ。」


「......もうその妹って言うの止めろ。
タチアナはお前の実の妹じゃねぇだろ。」



「......何が言いたいのだよ。」



「そもそもタチアナが人間だっていう
証拠なんてどこにもなかったって
言いたいんだよ!!!」


「......」


「なあ......バーゼン。言ってみろよ。
お前はタチアナとどこで出会ったんだ?」


「......」


「タチアナはお前と初めて出会った時、
人の言葉を喋れたのか?」


「......」


「何とか言ってみろよ!!!!」


「それでも!!! タチアナは
俺の家族なのだよ!!!」


「なら今すぐそれを証明しろ!!!
俺にタチアナを殺させないように
俺を説得してみせろ!!」


「......カクバ。」


カクバは本気だった。
本気で後ろで不敵に笑う妹を
殺そうとしているのだった。


だが、それでもバーゼンと
鬼灯は動かない。


このまま本当にこいつらと
やり合っていいのか?


二人と敵対していたカクバも
また心の中で葛藤していた。



けれど、俺にはこれしか......



「馬鹿じゃないの?」


とここで、足がおぼつかない中、
ヨーテルはゆっくりと三人の
ところまで歩いてくる。


「てめぇも反対する気か......」


しかし、ヨーテルの取った行動は
カクバの予想の真逆だった。


なんと、ヨーテルはカクバ側に立った
のだった。


「......ヨーテル......血迷っ──」


「黙りなさい。」


バーゼンとヨーテルは互いににらみ合う。


「あんた。なんでそこまでタチアナ
を守るの?」


「それは俺の妹だからなのだよ。」


「シスコンも大概にすれば?」


「まさか、お前がカクバを援護する
とは......」


「援護? じゃあ、あんた達に魔王を
倒す方法があるの?」


「......」


「それなら、私はタチアナを殺すわ。」


「貴様──」


「いい加減にしなさいよ!!!!!」


ヨーテルの声は城中に響き渡った。


「いつまでわがままを言ってる
つもり!? ここに来るまでどれだけの
人間が死んだかわかってるの!?
魔王を倒すという目的のために、
どれだけ人間が犠牲になった
のかあんた達だって知ってるでしょ!!」


仲間なんて必要ない。
いつもそう言っていたあの
ヨーテルが心の底から叫んでいた。


「妹だからってタチアナを守る
つもりなら......死んでいった仲間に
同じこと言ってみなさいよ!!!!」




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