3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百八十九話 到着6

「火事だ!!!!」


リオンとルドルフが家に戻り、
夕食を食べていた頃。
外で村人の叫び声が聞こえた。
この村は決して裕福ではなかったが、
その代わりに盗賊に襲われたり、
村人内でのもめ事が起こったり
などすることはほとんどなかった。
だから、これほどの大きな火事に
対応できる者など誰一人と
していなかった。


家は焼け落ち、村から逃げようにも
村を囲っている山々にも火が放たれて
おり、ルドルフとリオン、そして
彼の家族達は逃げ場を無くしてしまった。


「母さん......僕達はどうなるのですか?」


「......ルドルフ。よくお聞きなさい。
今からリオンを連れて教会に行き、
回復魔法士様に助けを求めてきなさい。」


そう言ってルドルフの母はルドルフに
家から持ち出した全ての金を与えた。


「これだけしかないけど、きっと
あんた達二人だけなら助けてくれる。
あの人達は神様なんだから。」


「で、でも、それでは父さんと
母さんが......」


「安心しろ、ルドルフ。父さん達も
どうにかしてこの村から抜け出すさ。
だが、お前達二人はまだ子供だ。
この山火事の中に入るのは
危険すぎる。」


父親の言葉を信用していない
わけではないが、ルドルフ
は不安な表情をする。


「そんな顔をしては駄目よ。
あなたは兄なのですから、
しっかりリオンを守ってあげて。」


「し、しかし......」


「いいから、行きなさい!!! 
ここも直に火が回るわ。そしたら、
もう逃げ場なんてなくなる。
だから、早く!!」


母親の力強い言葉に
ルドルフは怯えるように、
母親に泣いてしがみつくリオンを
引き離す。


「リオンは僕が守ります。」













「上手くいったねぇ。」


「そうですね。」


村と山に火を放った老婆と付き添いの
回復魔法士二人はまだ火が回っていない
山の中を歩いていた。


「どこに行かれるのですか? 隊長。」


しかし、その行く手には
あの集団が待ち構えていた。



「いえ......元隊長とお呼びした方が
よろしいでしょうか。」


老婆達を探していた謎の集団は
一斉に顔を隠していた布を脱ぎ、
素顔を表した。


「!? ほー、わかってたのかね。」


「ええ。なんせ、前にも同じ手で
逃げられましたから。」


「......それで......なぜ、あたしらを
探していたんだい。」


「とぼけないでください。あなたが、
持ち去った本を取り返しに来た
のですよ。
代々、回復魔法士の隊長にのみ
受け継がれてきた、聖職者の
更に上。レベル900を超える者にしか
扱えない回復魔法が記された、
その名もレッドブック。
あなたがそれを十三年程前に
持ち去ったのをまさかお忘れでは
ないでしょう?
私達はそれを取り返しに来たのです。」



「......しつこいねぇ......あんた達も。」


「それでは......お覚悟を......元隊長様。」

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