3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百七十話 魔王城3

「!? んだこれぇ!! か、体が
重い......」


カクバ、ヨーテル、バーゼンの
三人はそろって地に跪く。


「またこれ!? 一体何なのよ!」


「糞......身動きが取れないのだよ。」


「当然だぞ。なぜなら、お前たちに
かかっている重力を重くしたから
だぞ。」


「重力......だと」


必死に立ち上がろうとする
バーゼンの頭を、そのピエロは
無表情でふんずける。


「ぐっ!」


「よくも......俺の親友である
アグリーを......!」


途轍も無く重い足で、ピエロは
バーゼンを何度も踏み続ける。


「てめぇ! 止めろ!」


「止めないぞ。次はお前も
こうなるぞ。」


何とか立ち上がってピエロを一発ぶん
殴ろうと試みるカクバだったが、
どうしても体が動かない。
まるで地面に体が縛りつけられて
いるかのようだった。
呼吸もしずらい。
ただそこにいるだけで、三人の
意識が段々遠退いていく。


糞っ!! 動けよ!!
じゃねぇとこのまま......


「忍法 放炎」


とその時、鬼灯の放った炎の球が
ピエロ目掛けて飛んでくる。


「俺に炎は効かないぞ。」


しかし、そのピエロは身動き一つせず、
堂々とその炎を受け止め、やがて
炎は消えた。


「......」


鬼灯は炎をくらっても傷一つ
負っていないピエロから
一旦距離を取るため姿を消す。


「......」


鬼灯の姿を消す速さに、
相手もなかなかのやり手だと
察したピエロは、バーゼンの頭から
足を退けて警戒体制に入る。


「忍法 放炎」


が、鬼灯が放ってきたのは
同じ炎系の忍法だった。


「警戒して損したぞ。
所詮は人間。学習を
しない馬鹿めが。」



そう言いながら余裕の表情で
その炎を受け止めたピエロだったが


「馬鹿はお主じゃ。」


と、その炎の中に潜伏していた
長老によって殴り飛ばされた。

「グアアアアッ!!!」


長老の本気のパンチで
そのピエロは空高くまで
飛ばされ、やがて見えなくなった。


「......うまくいった......」


「ナイスじゃ、鬼灯ちゃん。」


「......長老......ちょっと火傷してる......」


「わしのことはいいんじゃ。先に
カクバ君達の回復が先じゃ。」


服は焼け、肌に火傷を負ってしまった
長老は意識を失った三人に
駆け寄り、回復ポーションを
飲ませていく。


「......回復ポーションだけじゃ......
完治するの時間かかる......」


「そうじゃの......サッちゃん
がいてくれればこれほどの犠牲
を出さすに済んだんじゃがの。」


五千体もの敵に対して、人間は約三十人。
帝国精鋭隊が敵をほぼほぼ壊滅した
とはいえ、その間に八名もの職業者達が
戦死した。


アルナや牛喜を含む生き残った
職業者達は、その戦死して
しまった八名の職業者達を
敵の死体の山から掘り出して
担ぎ上げ、長老達の元へと
集まってくる。


「長老さん。我輩達は
これからどうすれば......」 


「とりあえず、この三人が
目覚めるのを待つしかないのう。」


急ぎたいところでもあるし、
ここは魔王城の目の前。
安全な場所ではない。
が、カクバやバーゼン、ヨーテル
無しで魔王城に突入しても
人間の敗北は目に見えてる。


牛喜はそうですねとだけ言って
不安な表情を浮かべた。


「......牛喜。俺の部下が
そんな顔をするのは許さないのだよ。」


と、ここで一番ダメージを負っていた
はずのバーゼンが目を覚ます。


「隊長!!」


「......もう目覚めたのか、バーゼン君。」


「ええ、助かりました。長老。
呪覆島の時といい......貴方には
何度も──」


「いいんじゃよ、バーゼン君。
それよりもカクバ君とヨーテルちゃん
にポーションを飲ませるのを
手伝ってくれ。」


「はい。」


「君達にも手伝ってもらっても
構わぬか? 」


と長老は他の職業者達を呼び掛け、
一度全員を一ヶ所に集合させる。


「......馬鹿はお前達だぞ。」


それを見計らっていたかの
ように、奴は再び現れた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品