3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百六十八話 魔王城

マントをタチアナにあげたことから、
少し腕を振りやすくなった俺は
全速力で魔王城へと向かう。


少し、彼女と仲良くなりすぎたな......


だが、タチアナとの思い出も時間が
経てば忘れていく。
忘れてしまえばいいんだ。
その方が楽だから......


「......!? これは......魔族の死体か?」


と、ここで俺は自分の走っている
地べたに何かの死体がそこら辺に
散らばっているのに気づく。
鳥のような羽がはえた不気味な生物や、
アイラス島でも目にした豚の
化け物と犬。


「......」


中には魚人もいた。


俺はそれを見ても足を緩めることは
なかった。
この光景を見れば、戦いがもうすでに
始まっていることなどまるわかりだ。
ならば、俺はこれ以上犠牲が出る前に
この戦いに終止符を打つ必要がある。


そう思っていた俺だったが、
あるものを目にしてその場に
立ち止まる。


それは人の死体だった。
しかも、その死体は俺の知り合いに
よく似てる。


違ってくれ......



そんな願いは叶わず、残酷な
現実が俺を待ち構えていた。


「......牛喜さん......」











時は少し遡ること四時間前......


上の大陸へと上陸した約三十名の
職業者達は、既に人間達を待ち構え
ていた魔族と全面戦争を余儀無く
されていた。


「風流  覇王砲!」


「インフェルノ!」


約五千体もの様々な魔族が
少数の人間に襲いかかる。


「忍法 地獄沼......」


「ラヴィッチ バースト! 」


だが、そんな過酷な状況でも
人間側が優勢だったのは、
帝国精鋭隊一人一人が圧倒的
戦闘力を誇っていたからなのかも
しれない。


「......あいつらがアグリーを......」


しかし、そんな状況も別の島から
召集された刺客によって逆転して
しまった。


上空からほうきにまたがり
敵を一掃していたヨーテルが、
後ろに何かの気配を感じて
振りかえる。
そこにいたのは、自分の
ほうきに堂々と立つ謎の
ピエロだった。


「アンタ誰よ!!」


「? お前こそ誰だぞ?」


お気に入りのほうきを
土足でふんずけている
そのピエロにブチ切れた
ヨーテルは


「消えなさい!!」


右手のひらをそのピエロに向け
吹き飛ばそうとしたが


「お前、頭が高いぞ。」

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