3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百六十五話 フリーズランド25

「......まあ、吹雪姫にそういう
過去があるんだったら、この資源を
荒らすわけにはいけないな。
タチアナ、別の手段を考えよう。」


「そうだな。」


「手段とはこの島から上の大陸まで
海を渡る手段かや?」


「そうだ。我々はこの島に
船で着たのだが、その船は仲間と共に
上の大陸に向かってしまってな。
それで私と隼人はこの島から出る
手段がないのだ。」


「仲間に置いていかれたのかや?」


「いいや、私が船に乗っていた
仲間に、魔王城に捕らわれてしまった
二人の仲間を急いで助けにいってほしい
と無理を言ったのだ。」


「ほう......仲間が。
それならソナタ達も急いで向かわねば
ならぬの。
よし、わらわに任してみるでありんす。」


そう言って傷も治った吹雪姫は
たくさんの小動物達を我が子のように
引き連れて、俺達を海辺まで
誘導した。


「見えるかや? あれが上の大陸
でありんす。」


吹雪姫が指差したその先には、
遠くからでも見てわかるほど
まるで地獄のように燃え上がっている
大地が広がっていた。


「あそこに魔王が......」


タチアナも少しその光景に圧倒され
ているようだった。


「けど、やっぱちょっと泳ぐには
遠いな......」


「ピピィ、ピピィピ!」


ペルーがお前、泳げないだろ!
とつっこんでいるのがわかる。


「安心せい。」


すると、俺がうーんと悩んでる横で
吹雪姫はちょこんと座って
右手を海に浸す。
すると......


ヒューーーンッ!


一瞬にして海が氷の大地へと
変貌した。


「う、海......が......」


タチアナは目を皿にして
その光景を見ている。


「これで泳ぐ必要もなくなった
じゃろ。さあ、いつまでも
そうたわけた顔をしとらんで、
早く行くでありんす。」


吹雪姫に背中を押され、俺は
はっと我に返り


「ありがとう。行くぞ、タチアナ。」


と、タチアナの手を引いた。


「あ、ああ! 吹雪姫!
助かったぞ!ありがとう!」


タチアナは振り返って吹雪姫に手を
振る。
すると、慣れてない感じで恥ずかし
そうに、吹雪姫は俺達
に手を振り返したのだった。

  

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品