3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百五十一話 フリーズランド11

謎の声の正体を確かめる
べく、反射的に後ろを振り返った隼人
だったがそこには何もいなかった。
そこで次に隼人は、一人で木を伐採
しに行ったタチアナに警告するために
前を向き直り、タチアナを呼び止め
ようと口を開いたとき


「石火切烈!」


タチアナはもうすでにその謎の声の
主と戦闘していた。
タチアナはエレディア村で貰った
ナイフで素早くその声の主に刃を振るう。
しかし、その女の姿をした声の主は
まるで幽霊のようにしゅわんと
姿を消し、タチアナの斬撃をかわした。


「何......!?」


力強く振るったナイフが
かわされたことにより、タチアナの
軸はぐらつく。
素早く体勢を立て直そうとした
タチアナだったが、先ほど煙のように
消えた声の主が再び現れた。


「フリーズ。」


そう言って再び姿を表した声の主は、
氷の蒸気を発生させている右手で
タチアナの顔に触れようとする。


その時、何かを感じたのか
声の主はふとタチアナから
別の場所へと視線を移す。
その方向は隼人がいた場所だった。



「!!!」


目を移した声の主が見たものは、
いつの間にか自分の目の
前に移動していた隼人だった。
突然の隼人の接近に一瞬動揺した声の主
に対して、隼人は躊躇うことなく
拳を握り、声の主を殴り飛ばそうと
したが


しゅわん


と、間一髪のところで声の主は
それを回避した。
声の主は隼人のその桁外れの
身体能力を警戒し、一度隼人達から
距離をとる。



「奇襲なんて卑怯な真似するなぁ。
誰だお前。」


隼人は体勢を崩してコケてしまった
タチアナに手を差し伸べながら、
その声の主に言う。


「すまない、隼人。抜かった。」


「気にすんな。それより怪我はないか?」


「心配ない。ありがとう。」


隼人の手を取り立ち上がるタチアナ
の姿をじーっと遠目で声の主は見ている。


「わらわの名前は吹雪姫。
この島の主でありんす。」


その言葉を聞いて隼人は
タチアナに知ってるか? と
視線を送るが、タチアナは
首を横に振る。


「貴様らのような侵入者は
久しぶりじゃ。何を企んでおる。
わらわの仲間でも殺しに来たのかや?」


「安心しろ。お前らに危害を加える
つもりはない。」


「ならば消え失せろ。
今なら見逃してやるでありんす。」


「俺らもそうしたいんだが、この島から
出る手段が無くてな。
悪いがそこの木、何本か伐って
もいいか?」


「......」


すると、その発言で急に隼人の
ことをキッと睨み付ける。


「聞いてなかったのかや?
この島にいるわらわの仲間を
傷つけるつもりなら......」


何か言ってはいけないことを
言ってしまったかと隼人が
思っていると、吹雪姫は氷の蒸気を
発生させながら手を合わせて


「ここで消え失せろ。」


目をカッと開いた。

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