二百四十一話フリーズランド1

「構わん。寧ろ怒りと共に魔力の
上がる奴にとっては好都合だろう。」

「ソダネー。ア、アトサ。
ラーバノブカガ、ニンゲンフタリ
ツカマエタ、ミタイダケド、ドウスル。
オラッチガモラッテイイ。」

「好きにせよ。」

「ハーイ。」

【魔王城人間室】

目隠しをされ、口には布を
咥えられたサッちゃんとルドルフは
手足を拘束されたまま檻の中に
閉じ込められていた。

「んんんっ！」

ルドルフはここから出せ！と
必死に叫んでいる。

「人間だ。」

「新しく捕らえたのか？」

「みたいだよ。」

「いいなー。ほしい。」

「駄目だ、この人間どもは
マッドサイエン様の実験体だ。」

「ちぇー。」

その檻の外では何体もの魔族が
ルドルフ達を珍そうに観察していた。

【船内】

俺は自分の部屋に戻ると直ぐに
荷物の準備を始めた。
次の目的地はいよいよ魔王城。
急だが、仲間が捕らえられて
しまった今、時間に猶予はない。
この船の最大火力を使って
最速で魔王城に直行することが
決まった。

「ペルー！お前も準備しろ。
いよいよお前の故郷だぞ。」

本来であれば俺も魔王城に
向かうのだが、魔王城に行って魔王
を倒してしまえば、おそらく俺は
この異世界からいなくなる。
そうなるとペルーをフリーズランドに
連れていく約束が果たせなくなるため、
俺は先ほどタチアナに頼み込んで、
魔王城に直行する前にフリーズランドに
寄ってもらって俺はそこで船を
降りることとなった。

タチアナは、君はペルーを
フリーズランドに連れていった後、
どうやって魔王城に来るつもりだと
尋ねられたが......まあ......何度も
溺れ死にながら上の大陸まで
泳げばいいだろ。
幸いフリーズランドと上の大陸との
距離はさほど離れてないらしいし。

「おい、聞いてるのか？」

俺の声にぼけぇとしているペルーに
もう一度準備しろと言おうとした
その時、船内が大きく揺れた。
しかし、おそらくだがこの揺れに誰も
動揺はしてないだろう。
なぜなら、この船の最大火力で
あるエンジンがかかると
船が揺れるだろうから注意しておけと、
さっきの会議でタチアナが皆に注意
していたからだ。

オオオオオオオオオオンッ！！！

揺れと共にエンジン音が船内に
響き渡る。

俺はそれを肌で感じながら
いよいよこの異世界とも別れが
近いのかとそう思った。