3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百話 再会を夢見て14

その後、直ぐに魚人族と
人間の戦いは終演を迎えた。
といっても、今まで長い間
戦争をしてきた人間と魚人が
ここで和解ができるはずもなく、
人魚姫が仲裁しながら互いに
停戦協定を結んだだけだった。
人間も魚人も、どちらも相手を
恨んでおり直ぐにその憎しみが
消えるわけではない。
こればっかりは時間に風化して
もらうしかないのだ。


それからまたしばらくして
人魚姫は俺たち人間に船を修理
するための場所と時間を提供
してくれた。
期限は三日。それまでにこの
ボロボロになった船を
修理してこの島から出発してほしいと
いうことだった。
呪いを解いてあげたのにも関わらず
随分な扱いだと言いたいところだが、
あまり長いをすると中には
また攻撃をしかけようとする輩
が人間と魚人のどちらにも
いるのでそれも仕方ない。
三日という少ない時間だが
人間側にはヨーテルをはじめとする
魔法使いがいるので、船の修理には
そう時間はかからないだろう。
現に今は二日目の夜だが、
ほぼほぼ船の修理は終わっており
後は食料を積むだけだ。
ただ、唯一気がかりなことと言えば、
長老があの後、人魚姫に
会いに行ったのかということ
なのだが、正直それは
俺にもわからない。
だが、昨日人魚姫が俺に
老人はどこにいるの?
とこっそり聞きに来た
ということはおそらくまだ
会っていないのだろう。

俺は少し余計なことを
しただろうか......

まだ、目の前に会える人がいる
というのに会わない長老に
俺はただ八つ当たりを
しただけなのかもしれない。
自分にもう会いたくても
会えない人がたくさんいるから
といって、俺は長老に
どうしようもないこの気持ちを
ぶつけただけだったのだ。














【海底洞窟 秘密の海】


自分では、この前ここに来たはずなのに
何故だかこの海を見るととても
懐かしく感じてしまう。
彼はもう私には会ってくれない
のだろうか......



そう落胆し、私は体に尾ひれを
生やして海の中を泳ぎ、まだ
ファラリオを植えてなかったところ
を確認する。


本当だ......あの人間が伝えてくれた
言葉通り、完成してる......



きっとこれが
小さな海は完成したということ
なのだろう。
そして、約束は果たせそうに
ないという言葉が意味するのは......
もう会えないということ。


「どうして......ナギ......
私のことが嫌いになったの......
会いたいよ......このまま姿を
見せてくれないの......?」


私は思わず心の中で思って
いたことを声に出してしまった。


人間たちがこの島を出発するまで
あと約六時間。
もしもナギがこのまま姿を見せてくれ
ないのなら......私は......


そして、私は意を決して
おそらくナギが最後に植えたで
あろう五本のファラリオに
手をのばした。


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