3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

百八十一話 海底の城6

そして、眠り続けていた人魚姫は......


「......ナギ......? 」


ゆっくりと目を覚ました。


「......ここは......?」


そう言いながら人魚姫はぎこちなく
辺りを見渡す。


「ひ、姫様!!!」


一番最初に人魚姫と目があったのは
ご老人だった。
さっきまで、俺達人間のことを
あんなに怖がっていたのに、
人魚姫の声を聞いたとたんに、
彼女に飛びついた。


「ばーや? どうしたの?」


人魚姫はまだ意識がはっきりしないのか、
俺とヨーテルを見てもまだポカンと
している。


「キャッ!!!!」


と思ったら、俺と目を合わせた瞬間に
やっと目の前に人間がいるという
ことを把握したようで、
俺を見て、人魚姫は悲鳴をあげる。


「ひ、姫様! お、お逃げください!
こ、ここは私めが囮に。」


「ば、ばーや。いったい
これはどういう状況なの!?」


「お、落ち着いてください。
ばーや様。人魚姫様。」


パニックになっている
二人をなんとか安心させようと
ワインは奮闘するが
効果はなかった。


「あ、あなたたちは一体何者!?
ど、どうしてここに、し、しかも
ここ海の中なのに!」


「ひ、姫様! 急いで、早くお逃げに!」


片方は怯え、もう片方は質問責め、
という状況になり、いよいよ騒がしさが
ピークになってきた。
そうなったら次はどうなるのか、
俺には予想ができる。


「あーーー!!!! もう!
うるっさーーーーい!!!」


ほら、こうなる。


「少しは私たちの話を聞きなさいよ!」



「まあまあ、落ち着いて。
人魚姫も目覚めたばっかりで
困惑してるんですよ。」


こうなると、ぶちギレた彼女を止める
役目を背負うのは俺なのである。


「目覚めたばかり......?」


「そうよ! あんたは今まで
百年間ここで眠っていたのよ!」


「ひゃ、百年間.....? う、嘘よ。
そんなことあるはずない。」


「嘘じゃないわ。」


「ば、ばーや。本当なの?」


「ええ。左様にございます。」


「......百年......」


受け入れられない現実が
人魚姫を絶望の縁においやる。


「......嘘よ。だって私は......
私は......あの......時......」



すると、人魚姫はなにかを
思い出したのかいきなり黙りこむ。


「姫様? どうなされたのですか?」


しかし、人魚姫はご老人の言葉に
反応しない。
そのかわり、人魚姫の
目から何かが溢れてきた。
それは海の中でもはっきりと
わかる、涙だった。


「......ナギ......ナギ......」

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