3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

百五十一話 三日月島16

「おい、何で船がこんなに揺れてんだよ!」



「そんなの俺が知るわけねぇだろ!」



ヨーテルが戻った船内は、
パニックに陥っている職業者で
溢れかえっていた。


「ヨーテル様。この地震は一体......」


アルナも不安げに駆け寄ってくる。



「わからないわ。でも、上空から見ても
魚人の姿がひとつも見えなかったから、
多分魚人の仕業じゃないと思うけど.....」


「けど?」



今、ヨーテルはこの揺れのことよりも、
先ほど見た船の下の黒い影の方が
気になっていた。



「ジュラ島近辺に生息している
巨大魚でも迷いこんだのかしら。」



そう考えていたその時だった。



「津波だ!!!」



一人の職業者がそう大声を上げた。


「!?」


ヨーテルは咄嗟に顔を上げる。


するとそこにはいつの間にか
海の壁ができていた。



「こ、こんなのいつから──」



津波というより、巨大な海の壁が
船を四方八方から包囲している。


もう、逃げられない。



ヨーテルを含む、職業者全員が
そう悟った。


悲鳴を上げる者、恐怖で動けないもの、
失神するもの。
絶望に打ちひしがれている職業者全員を、
その海の壁は容赦なく飲み込んだ。



まるで巨大な手のように、
海の壁はより深く、海に船を引きずり
込んでいく。



「スカイリム。」



そんな中、ヨーテルは自身に
水中呼吸ができる魔法を
かけた。


「一体なんなのよ!」



ヨーテルはややイライラしながら、
辺りの状況を把握しようと、
薄暗い海に目をこらす。



「!?」



海の中で職業者達を待っていたのは、
投石よりも残酷なものだった。

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