3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

百二話 エレディア村8

「人魚?」


「そう。真ん中にいるのが人魚、
その周りを囲って頭を下げているのが
魚人と私たちエレディアの民だ。」


彼の言う通り、全ての壁画に
人と魚人が中央で女神のように
たたずむ人魚を崇拝していた。


「なぜ我々人間が人魚と呼ばれる
魔族に頭を下げているのだ?」


「......そのさっきから気になっていたが、
魔族って一体なんのことだい?」


何千年もずっと地下で文明を
築いてきた彼らにとって、
そもそも地上で人間たちが魔族に
滅ぼされかけているなんて知らない
のだろう。


「それについては俺が話しますよ。
それと俺達が何者なのかを。」


そう言って俺は、俺が把握している
地上の現状と俺とタチアナが
ここに来た経緯を説明した。











「なるほど......にわかには信じがたいが、
地上ではそんなことになっていたのか......
それに今まで俺達が崇拝していた彼らが
地上では人間の敵だったとは......」



「そもそもなぜエレディアの民は
人魚を崇拝しているのだ?」


「それはな~、むか~しからこの
エレディア村の民と魚人は交流が
あったんじゃ。」



しわしわな目をしょぼしょぼさせながら、
ばっちゃんは何か遠くの記憶を
思い返しながら、エレディア村と
魚人との歴史について語った。






ジュラ島から更に西に行くと、
とある島にたどり着く。
その島の名は三日月島。
その名の通り、三日月型の陸に囲まれた
海の底に魚人の国があるという。
どうやらこのエレディア村と
三日月島を繋ぐ長い洞窟があるようで、
時おり、魚人はその洞窟を通って
この村と交流をしていたそうだ。
そんな中で、魚人の国の
王である人魚様を、エレディア村の民も
崇拝するようになったという。


「だけんど~、あたしが若いときんに、
パタリと魚人はこの村に来なくなって
もうそれっきりじゃあ。」


「どうしてパタリと来なくなっ
たんですか?」


「わからん~、でも~、それから
というもの、その洞窟からは
魚人じゃなくて、悪魔がきよったの~。」


「悪魔?」


「それはお嬢さんたちのいうところの、
魔族だろう。」


「今もその洞窟から魔族が来るん
ですか?」


「いや、その心配はない。
とうの昔にその洞窟は巨大な岩で
封鎖した。今ではその洞窟を
知っているのも、ほとんどいないさ。」


「......タチアナ。」


「あぁ、わかっている。すまないが、
バフといったか。我々を救ってくれた
者に度重ねで心苦しいのだが......
我々をその洞窟につれていっては
くれないか?」

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