3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

八十七話 ジュラ島13

「え、う、嘘でしょ?」


「......すまない。私としたことが......」 

 
この異世界の時計はどうやら時間と分を
分けていないようで、二十四時間を
一本の針で示している時計をここに
来る前に何度か目にした。
ぱっと見、方位磁石と大差なく見える
から、あり得る間違いではあるのだが、
いつもは軍の先頭に立ち、皆を引っ張って
いた彼女からは考えられないほどの
ミスだった。


「.....それで後どれくらい時間が
残っているんですか?」


「約一時間の半分といったところだ。」


「まあ、それなら今から走れば
何とか──」


「いや、それが......とても言いにくいの
だが、今方位磁石で確認したところ、
どうやら我々は船とは真逆の
方角に進んでいたらしい......」


「......まいりましたね......」


「......あぁ。」


時間の無いこの状況で途方に暮れて
いた、その時。


地面が揺れる。地震ではない。
何か地面がえぐられているような
そんな感覚がした。



「な、なんだこの揺れは。」


しかし、その揺れは十秒も持たずに
なくなった。


「......おさまりましたね。」


「ピッ!」


「もう今から向かっても
間に合わないな。」


「どうします? これから。」


「......」


彼女は腕を組んで必死に考え込む。


すると



グウウウウウウウ


と腹の音が森にこだまする。



その音を出した主を見ると
赤面していた。


「と、とりあえず日が暮れる前に
食料を確保しておきますか。」


「っ! ......」



恥ずかしさからなのか、彼女は
返答しなかった。












隼人達が感じた揺れの原因は
カクバが機械獣を
地面に殴り落としたものだった。

あらゆる部位が破損し、
動かなくなった機械獣であったが、
敵を発見する目の役目を果たしている
部位は未だ点滅をしていた。


そして



「修正プログラム始動。」



終わったはずの驚異がまた、
動き出す。

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