3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

五十八話 選抜試験17

「もし、それを拒否するもんなら、
わいはお前をここで殺して
失格になるわ。」


にやにやと嫌な笑顔で俺を見てくる。


おそらく鼠やろうは、回復魔法士相手なら
絶対に勝てるとふんでいるのだろうが、
その相手は俺。
自慢ではないが、何千もの世界を
救ってきたこの俺に対して、
こいつはそんな浅はかな考えを
浮かべているだろう。


鼠やろうの申し出を快く受け、
こてんぱんに倒しても別にそれは
それでいい。
だが、そんなことより、
俺にはやるべきことがある。



「確かに俺はお前の言う通り、
相手の自滅で勝った。」


「は、隼人......?」


ずっと敬語だった俺が
急にため口になったことで
少し、牛喜さんは驚いているよう
だった。


俺は基本、初対面や優しい人には
敬語を使うが、
馴れてきた人やこういうくず人間には
ため口を使う。



「そして、お前は自分一人で
勝手な行動をとり、
無様に鼻水を垂らして負けた。」



「な、なんやと!」


「どちらも試験に合格できる
資格は無い。」


「何を訳のわからんことを!
お前よりかはわいの方が
そのバッチを受けとる資格がある!
せやから、そのバッチをわいに──」


「だが。」


俺は鼠やろうの言葉に耳をかすことなく
続ける。


「俺達の他に、この班には
このバッチを受けとる資格のあるもの
がいる。俺じゃなく、お前のような
くずでもなく。」


「は、はぁ? そんなやつ一体どこに──」


困惑する鼠やろうを尻目に
俺はその人の方に歩み寄る。
そして腰を低くし、その人に
目線を合わせながら言った。









「アルナさん。」


「......え?」


ずっとうつむいていた彼女は
きょとんと俺を見る。



「あなたには
試験に合格できる資格がある。
だから、このバッチを受け取ってくだ
さい。」

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