3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

三十六話 鳥と少女6

ガビルさんの雑貨店で鳥に
ついての書物を探していたら、
外をすでに夕暮れ時になっていた。


「あ! いっけない。私、
これからバイトあるんだった。
隼人今日はありがと。ガビルさんも、
それじゃまたね!」


そう言ってメグはペルーを抱きかか
えると、店の鈴を鳴らして外に出て
いった。



「忙しいやつだな……」



「まあメグちゃんはいろんな
店をかけもちして働いてる
から仕方ないさ。」


「え、そうなんですか?」


「あぁ、居酒屋、パン屋、花屋に
服屋、わしが知ってるだけでも
四つの店で働いてるよ。」


この二日間俺はメグと一緒に
ペルーを飛ばそうと奮闘していた。
しかし、彼女は時おりバイトが
あると言ってペルーを俺に任せる
時があった。


「どうしてそんなに働いているん
ですかね。」



「さぁ……あ、でも……あんちゃん、
メグちゃんの昔のこと知ってるかい?」


「いえ、特に何も聞いてないですね。」


「メグちゃんは二年前まで
孤児院で暮らしてたんだよ。」








ガビルさんは俺に貸してくれた
本を元の位置に戻しながら、
メグのことについて話してくれた。






五年前、彼女がまだ10才の時である。
その当時、この島ではある緊急任務が
計画されていた。
その計画とは、俺が以前参加した
ヘルドラ討伐のような、とある
幹部の討伐任務だった。
その緊急任務は十四才以上の
職業者全員が強制参加しなければ
いけなかった。
そして、その任務に参加させられ
たのは、メグの両親と十四才に
なったばかりのメグの姉だった
という。





「それで、その任務は成功したん
ですか?」


「いや、大失敗。討伐は愚か、
全滅したって噂だ。
今の職業者がこの島に少ないのも、
その緊急任務のせいだよ。
その任務後はメグちゃん
みたいな両親を失った孤児達が
続出してね、彼女らを引き取る
孤児院が必要だったんだ。
その孤児院を作るために島中で
募金をしたのは今でも覚えてる。
そうか……もうあれから五年も
経ったのか……そりゃメグちゃん
達ももう大人になってるわけだ。」


ガビルさんは店の品であろうガラスの
コップを拭きながらどこか遠くを
見てるようだった。


「メグちゃんはもしかしたら、
職業者になりたいのかもな……」


「どうしてそう思うんです?」


「だってほら、職業者になれば
この島を出て自分の家族を
探しに行けるからさ。職業者に
なれば防具や武器を買うために
お金も必要になる。だからあんなに
必死にお金を稼いでいるのかもね。」


ガラスのコップを吹き終わると
今度は皿を一枚一枚丁寧に拭いて
いく。


「だから、あんちゃん達が
アイラス島を取り戻してくれて、
メグちゃんやわしも本当に助か
っとるよ。
みんな、この島を見捨てていなくなって
しまってからというもの、
客もろくに来てやくれなかった。
けれど、あんちゃん達のおかげで、
この二、三日の間でも下の大陸から
この島に来る者がどっと増えてくれた。
きっとメグちゃんも以前より、
お金を稼げるようになっとるはず
だよ。」






「ありがとな、あんちゃん。」



カビルさんは何度目かわからない
この言葉をにっこりと笑って
俺に言ったのだった。

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