爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん
空白の幽霊 その6
 振り回される根をかいくぐって、隙を見ては鎌を振り下ろす。
切断された根が、後方に飛んでいくのが見えた。
 大牙が穴を開けるまでの時間稼ぎ。
息をつく間もないが、不思議と余裕があった。
「いちごちゃん!このまま距離詰めてって倒せないかな?」
 いちごちゃんは、縦横無尽に跳ね回り、結晶化攻撃の阻害を続ける。
「正直、倒せるかもしれない!」
 いちごちゃんが言いながら、目玉を爆破する。
 魔獣は、その攻撃に大きく仰け反る。
立ち上る煙が、与えているダメージの大きさを物語る。
 大牙の方を見ると、まだ進展はなさそうだ。
「ごめんミスった!」
 いちごちゃんが叫ぶ。
 私が大牙を見ている間に、魔獣は結晶化攻撃を仕掛けたようだ。
足元が崩れ、動かす足が飲み込まれる。
 なんとか腕を使い這い出すと眼前には根。
体を転がして回避し、斬りつける。
「なんとかだいじょーぶ!」
 同時に閃く。
「ねぇ!大牙!いちごちゃん!ちょっと思いついたことがあるんだけど......」
 天井を目指して飛ぶ。
耳元の息遣いは荒い。
「あの......えっと......」
「どうしました......?」
 空中で止まる。
「その......魔獣、だと思います」
 そう言う紫苑の目は下を向いている。
 その視線の先には。
「あれは......」
 どこからか現れたその魔獣の姿は、電車の姿を模していた?
「どうして......」
 レールは、緩い角度だがこちらを向いている。
気付かれていたら、攻撃は......効かない。
「とりあえずここを出ましょう......!」
 面倒な状況に、内心舌打ちする。
速度を上げ、結晶を目指す。
しがみつく腕は、それに比例してよりきつく締まる。
 速度だけなら、私の方が速い。
勢いのまま、結晶に突っ込む。
 が、結晶は砕けない。
衝撃だけが、私たちを襲う。
 紫苑の顔が苦痛に歪む。
後ろには魔獣が迫る。
 ダメ元で、氷柱を飛ばす。
「なっ......」
 しかし、氷柱は効かないどころか、その体をすり抜けていった。
 半ば落下するように避ける。
猛烈なスピードで魔獣が、通り過ぎる。
 このままどこかに行ってくれれば楽なのだが、既に方向転換を始めている。
「あの魔獣、攻撃が効かないんです」
「......のようですね」
 姿形こそ同じだが、性質は全く異なるらしい。
実体を持たない魔獣。
この前のとは別個体だ。
おそらく、電車の乗客を繰り返し襲っていたのは、この魔獣だろう。
 考えていると、体が急に軽くなる。
「紫苑......?」
 空中で身を翻し、着地する。
どうやら、自らの意志で降りたみたいだ。
「大丈夫......です」
 よろめきながら、紫苑が言う。
「どうしたんですか?急に」
「ちょっと手伝ってくれませんか......?」
 そう言う紫苑は、魔獣を見据えている。
 紫苑の側まで、飛んでいく。
魔獣は既に紫苑に向かって発進している。
「何か策があるんですか?」
 魔獣の突進を一度、やり過ごす。
「私なら......」
 紫苑の腕から、数本の紫色の光の筋が伸びる。
その光は、そのまま魔獣に伸びているが、ダメージはなさそうだ。
「私は、多分エネルギーを吸ったり、逆に送ったりってことが出来るんだと思います......多分」
「どう言うことですか?」
「今なら、あの魔獣はエネルギー過多で実体化してる......はずです」
 魔獣を見る。
さっきと外見に変化はない。
 紫苑は集中しているのか、一歩も動かず魔獣に向けて光線を飛ばし続ける。
体力を使うのか、表情は辛そうだ。
 魔獣の進路に、氷の壁を創る。
 魔獣は、すり抜けると思っているようで、速度を落とさない。
 私も、実体化しているという実感は湧かなかった。
しかし、進路を変えられても困るので、動きはしない。
 魔獣が迫る。
 思わず体に力が入る。
あの時の小鳥も、こんな気分だったのだろう。
 魔獣が氷に衝突する。
その体はすり抜けない。
 氷が砕け、降り注ぐ。
 大剣を盾にして紫苑に覆い被さると、背中を破片が打つのを感じた。
「大丈夫ですか......?」
「それより......!」
 紫苑の目は、魔獣を睨み続けている。光の筋は繋がったままだ。
 紫苑の覇気に押されて、駆け出す。
魔獣に大剣を突き立て、体を裂きながら上を走る。
 一番後ろに辿り着く前に、魔獣が絶命し、光の粒に変わる。
 突然足場を失い、受け身もとれず転がる。
「やれるもんですね......」
 膝をついて立ち上がる。
 紫苑は力を使いきったのか、再び意識を失い倒れていた。
「多少雑なのは勘弁してください」
 腰を抱えるようにして、肩に担ぐ。
 出口まで戻りはしたが、結局壊せないでいる。
先程の突進で壊れないのなら、もう何をしても壊れないのではないだろうか。
 おそらく、大牙たちは徹底しただろう。そう言う風に教えて来ている。
 自分で出なければならないのだ。
「どうしますか......」
切断された根が、後方に飛んでいくのが見えた。
 大牙が穴を開けるまでの時間稼ぎ。
息をつく間もないが、不思議と余裕があった。
「いちごちゃん!このまま距離詰めてって倒せないかな?」
 いちごちゃんは、縦横無尽に跳ね回り、結晶化攻撃の阻害を続ける。
「正直、倒せるかもしれない!」
 いちごちゃんが言いながら、目玉を爆破する。
 魔獣は、その攻撃に大きく仰け反る。
立ち上る煙が、与えているダメージの大きさを物語る。
 大牙の方を見ると、まだ進展はなさそうだ。
「ごめんミスった!」
 いちごちゃんが叫ぶ。
 私が大牙を見ている間に、魔獣は結晶化攻撃を仕掛けたようだ。
足元が崩れ、動かす足が飲み込まれる。
 なんとか腕を使い這い出すと眼前には根。
体を転がして回避し、斬りつける。
「なんとかだいじょーぶ!」
 同時に閃く。
「ねぇ!大牙!いちごちゃん!ちょっと思いついたことがあるんだけど......」
 天井を目指して飛ぶ。
耳元の息遣いは荒い。
「あの......えっと......」
「どうしました......?」
 空中で止まる。
「その......魔獣、だと思います」
 そう言う紫苑の目は下を向いている。
 その視線の先には。
「あれは......」
 どこからか現れたその魔獣の姿は、電車の姿を模していた?
「どうして......」
 レールは、緩い角度だがこちらを向いている。
気付かれていたら、攻撃は......効かない。
「とりあえずここを出ましょう......!」
 面倒な状況に、内心舌打ちする。
速度を上げ、結晶を目指す。
しがみつく腕は、それに比例してよりきつく締まる。
 速度だけなら、私の方が速い。
勢いのまま、結晶に突っ込む。
 が、結晶は砕けない。
衝撃だけが、私たちを襲う。
 紫苑の顔が苦痛に歪む。
後ろには魔獣が迫る。
 ダメ元で、氷柱を飛ばす。
「なっ......」
 しかし、氷柱は効かないどころか、その体をすり抜けていった。
 半ば落下するように避ける。
猛烈なスピードで魔獣が、通り過ぎる。
 このままどこかに行ってくれれば楽なのだが、既に方向転換を始めている。
「あの魔獣、攻撃が効かないんです」
「......のようですね」
 姿形こそ同じだが、性質は全く異なるらしい。
実体を持たない魔獣。
この前のとは別個体だ。
おそらく、電車の乗客を繰り返し襲っていたのは、この魔獣だろう。
 考えていると、体が急に軽くなる。
「紫苑......?」
 空中で身を翻し、着地する。
どうやら、自らの意志で降りたみたいだ。
「大丈夫......です」
 よろめきながら、紫苑が言う。
「どうしたんですか?急に」
「ちょっと手伝ってくれませんか......?」
 そう言う紫苑は、魔獣を見据えている。
 紫苑の側まで、飛んでいく。
魔獣は既に紫苑に向かって発進している。
「何か策があるんですか?」
 魔獣の突進を一度、やり過ごす。
「私なら......」
 紫苑の腕から、数本の紫色の光の筋が伸びる。
その光は、そのまま魔獣に伸びているが、ダメージはなさそうだ。
「私は、多分エネルギーを吸ったり、逆に送ったりってことが出来るんだと思います......多分」
「どう言うことですか?」
「今なら、あの魔獣はエネルギー過多で実体化してる......はずです」
 魔獣を見る。
さっきと外見に変化はない。
 紫苑は集中しているのか、一歩も動かず魔獣に向けて光線を飛ばし続ける。
体力を使うのか、表情は辛そうだ。
 魔獣の進路に、氷の壁を創る。
 魔獣は、すり抜けると思っているようで、速度を落とさない。
 私も、実体化しているという実感は湧かなかった。
しかし、進路を変えられても困るので、動きはしない。
 魔獣が迫る。
 思わず体に力が入る。
あの時の小鳥も、こんな気分だったのだろう。
 魔獣が氷に衝突する。
その体はすり抜けない。
 氷が砕け、降り注ぐ。
 大剣を盾にして紫苑に覆い被さると、背中を破片が打つのを感じた。
「大丈夫ですか......?」
「それより......!」
 紫苑の目は、魔獣を睨み続けている。光の筋は繋がったままだ。
 紫苑の覇気に押されて、駆け出す。
魔獣に大剣を突き立て、体を裂きながら上を走る。
 一番後ろに辿り着く前に、魔獣が絶命し、光の粒に変わる。
 突然足場を失い、受け身もとれず転がる。
「やれるもんですね......」
 膝をついて立ち上がる。
 紫苑は力を使いきったのか、再び意識を失い倒れていた。
「多少雑なのは勘弁してください」
 腰を抱えるようにして、肩に担ぐ。
 出口まで戻りはしたが、結局壊せないでいる。
先程の突進で壊れないのなら、もう何をしても壊れないのではないだろうか。
 おそらく、大牙たちは徹底しただろう。そう言う風に教えて来ている。
 自分で出なければならないのだ。
「どうしますか......」
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