爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん
空白の幽霊 その3
 「いちごちゃんたち以外にも、魔法少女って居るんだ......」
 ベッドに寄りかかり、虚空を見つめる。
「そりゃあ、居るさ」
 ベッドの上から、いちごちゃんが答える。
 今日は久しぶりの晴れだった。
「魔法少女もっと増やせればいいのにねぇ......」
 布の擦れる音がする。
いちごちゃんが体の向きを変えたのだろう。
「魔法少女なんて、増えない方がいいよ......」
「え?なんで?......実際、人手足りないじゃんか。もっと多ければ、救える人も多いんじゃない?」
「それはそうだけど......」
 いちごちゃんが、言葉に詰まる。
 なんだか分からないが、あまり掘り下げない方がいいみたいだ。
 気分を変えるために、深呼吸をする。途中からあくびに変わってしまった。
「もうすぐ夕ご飯だね」
 もうこの話は終わりっと、立ち上がる。
 いちごちゃんも、私の言葉に応えて起き上がる。
 その頰には、シーツの皺の跡がついていた。
 いちごちゃんの後ろに回り込み、ツインテールを操縦桿に見立てて握る。
「?」
「ストロベリーロボ発進!」
「急にどうしたの......?」
 本格的に困惑しているみたいなので、手を離す。最後に髪を指でなぞると、柔らかい毛先がくすぐったかった。
「んもー、何?」
「なんでもない、なんでもない」
 いちごちゃんを追い越して、部屋を出る。
すぐに、後を追う足音が聞こえてきた。
 私だよ。
私なんだよ。
 暗い部屋。
当たり前にある自室で、膝を抱える。
 自分の部屋なのに、ひどく心細い。自分の愛用の道具でさえ、違和感を覚える。
 ここは私の家。
私の家族が居て、私の育てた植物がある。
ここは、私の家なんだ......。
 「どどーん!どうだ!」
 エプロンを着けた大牙が、冷やし中華をテーブルに運んでくる。
「うーん、なんて言うか......」
 大牙にエプロンは似合わないなと思った。
「エプロンの上からでも、ベルトするんだ......」
 いちごちゃんがいつものベルトを見て言う。
 革製のちょっとくたびれたやつだ。
「当たり前だよ。ベルトはヒーローのシンボルだからね。てか、ボクが盛り付けた冷やし中華にコメントが欲しいんだけど......」
「盛り付けただけじゃないですか」
 奥の台所から、海月さんが出てくる。
「ていうか、なんで急に大牙が?」
「なんでも」
 どうも気まぐれらしい。
「もーいーからさー、食べようよぉ」
 いちごちゃんが喚く。
「まださっちー来てないよ」
「......そうですね」
 海月さんが、少し不思議そうにする。
「ちょっと様子を見てきてくれませんか?」
 海月さんが私に頼む。
「いい、けど......」
「廊下の突き当たりの部屋です」
「あ、うん」
 席を立ち、リビングを出る。
階段を横切り、廊下を真っ直ぐ進む。
 リビングの話し声は遠のき、少し涼しくなる。
 廊下の奥。
扉の隙間からは、一筋の光が漏れ出ていた。
「叔母さん?」
 扉をノックする。
「どうしたの?」
 声と同時に扉が開く。
部屋には机と、ベッドだけがあった。
「あの......ご飯出来たんですけど」
「あぁ......今日は早いわね。私何もしてないわ。ごめんなさい」
「いえ」私もしてないので。
「さ、行きましょ」
 叔母さんが小走りでリビングに向かう。
 私もその後を追った。
 リビングでは、既に食事が始まっていた。
多分、いちごちゃんが待ちきれなかったのだろう。
 叔母さんが座ると、みんな手を止める。
「「いただきます」」
 その言葉で、食事が再開される。
 まだ慣れない頃は、少し恥ずかしかったけど、今は慣れた。
 私が知らなかった賑やかな夕食だ。
 放課後。
またブランクに潜っている。
 今回の目的は、この前の少女を見つける事なんだが......。
「いるね」
「いますね」
 ショッピングモールの駐車場に、生えている。
 細い茎には、捻れた光の筋。
花にあたる部分には、球体だけがあり花弁はない。
そしてその球体には、大きな瞳が青い光で描かれていた。
 どこからどう見ても魔獣だ。
「えっと......どうします?」
 海月さんに視線を送る。
 答えたのは、いちごちゃんだった。
「どうするもこうするもないっしょ」
 海月が笑う。
「こうなっては止められませんね」
「なるほどね」
 鎌を取り出す。
相手は植物型。
「私でも、少しはやれそうだ」
 いちごちゃんに視線を送って、ショッピングモールへ駆け出した。
 足音が重なる。
歩調が鼓動と同期する。
白い無機質な視界を、いちごちゃんが赤く彩っていた。
 
 ベッドに寄りかかり、虚空を見つめる。
「そりゃあ、居るさ」
 ベッドの上から、いちごちゃんが答える。
 今日は久しぶりの晴れだった。
「魔法少女もっと増やせればいいのにねぇ......」
 布の擦れる音がする。
いちごちゃんが体の向きを変えたのだろう。
「魔法少女なんて、増えない方がいいよ......」
「え?なんで?......実際、人手足りないじゃんか。もっと多ければ、救える人も多いんじゃない?」
「それはそうだけど......」
 いちごちゃんが、言葉に詰まる。
 なんだか分からないが、あまり掘り下げない方がいいみたいだ。
 気分を変えるために、深呼吸をする。途中からあくびに変わってしまった。
「もうすぐ夕ご飯だね」
 もうこの話は終わりっと、立ち上がる。
 いちごちゃんも、私の言葉に応えて起き上がる。
 その頰には、シーツの皺の跡がついていた。
 いちごちゃんの後ろに回り込み、ツインテールを操縦桿に見立てて握る。
「?」
「ストロベリーロボ発進!」
「急にどうしたの......?」
 本格的に困惑しているみたいなので、手を離す。最後に髪を指でなぞると、柔らかい毛先がくすぐったかった。
「んもー、何?」
「なんでもない、なんでもない」
 いちごちゃんを追い越して、部屋を出る。
すぐに、後を追う足音が聞こえてきた。
 私だよ。
私なんだよ。
 暗い部屋。
当たり前にある自室で、膝を抱える。
 自分の部屋なのに、ひどく心細い。自分の愛用の道具でさえ、違和感を覚える。
 ここは私の家。
私の家族が居て、私の育てた植物がある。
ここは、私の家なんだ......。
 「どどーん!どうだ!」
 エプロンを着けた大牙が、冷やし中華をテーブルに運んでくる。
「うーん、なんて言うか......」
 大牙にエプロンは似合わないなと思った。
「エプロンの上からでも、ベルトするんだ......」
 いちごちゃんがいつものベルトを見て言う。
 革製のちょっとくたびれたやつだ。
「当たり前だよ。ベルトはヒーローのシンボルだからね。てか、ボクが盛り付けた冷やし中華にコメントが欲しいんだけど......」
「盛り付けただけじゃないですか」
 奥の台所から、海月さんが出てくる。
「ていうか、なんで急に大牙が?」
「なんでも」
 どうも気まぐれらしい。
「もーいーからさー、食べようよぉ」
 いちごちゃんが喚く。
「まださっちー来てないよ」
「......そうですね」
 海月さんが、少し不思議そうにする。
「ちょっと様子を見てきてくれませんか?」
 海月さんが私に頼む。
「いい、けど......」
「廊下の突き当たりの部屋です」
「あ、うん」
 席を立ち、リビングを出る。
階段を横切り、廊下を真っ直ぐ進む。
 リビングの話し声は遠のき、少し涼しくなる。
 廊下の奥。
扉の隙間からは、一筋の光が漏れ出ていた。
「叔母さん?」
 扉をノックする。
「どうしたの?」
 声と同時に扉が開く。
部屋には机と、ベッドだけがあった。
「あの......ご飯出来たんですけど」
「あぁ......今日は早いわね。私何もしてないわ。ごめんなさい」
「いえ」私もしてないので。
「さ、行きましょ」
 叔母さんが小走りでリビングに向かう。
 私もその後を追った。
 リビングでは、既に食事が始まっていた。
多分、いちごちゃんが待ちきれなかったのだろう。
 叔母さんが座ると、みんな手を止める。
「「いただきます」」
 その言葉で、食事が再開される。
 まだ慣れない頃は、少し恥ずかしかったけど、今は慣れた。
 私が知らなかった賑やかな夕食だ。
 放課後。
またブランクに潜っている。
 今回の目的は、この前の少女を見つける事なんだが......。
「いるね」
「いますね」
 ショッピングモールの駐車場に、生えている。
 細い茎には、捻れた光の筋。
花にあたる部分には、球体だけがあり花弁はない。
そしてその球体には、大きな瞳が青い光で描かれていた。
 どこからどう見ても魔獣だ。
「えっと......どうします?」
 海月さんに視線を送る。
 答えたのは、いちごちゃんだった。
「どうするもこうするもないっしょ」
 海月が笑う。
「こうなっては止められませんね」
「なるほどね」
 鎌を取り出す。
相手は植物型。
「私でも、少しはやれそうだ」
 いちごちゃんに視線を送って、ショッピングモールへ駆け出した。
 足音が重なる。
歩調が鼓動と同期する。
白い無機質な視界を、いちごちゃんが赤く彩っていた。
 
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