柳暗・花明

紅紫蝶舞

金色の薔薇・結界 ~第6章~

 ようと出会ってから2ヶ月が経った頃。央も村のみんなと仲良く暮らしていた……混ざりモノの村とは違いいじめられる事もなかった……むしろ初めて見る混ざりモノ・緋雨ひさめ様が大事にしている方として暖かく迎えられ央はとても大切に扱われていた……

「おはよう、緋雨さん!」
「央君、おはよう」
 央はしっぽと右手をパタパタと振りながら緋雨に近づく。
「緋雨さんのおかげでボク、毎日がとっても楽しいんです」
「それはよかった」
 央の言葉に緋雨はとても柔らかい笑顔で笑う。
「朝から元気やな、央」
「あっ!陽春ようしゅんさんおはよう」
 緋雨と央が楽しく会話している中を陽春が訪れる。
「央は今日どうするんや?」
「今日は黄呀こうがさんに術の出し方を教えてもらおうかと思ってるんです」
「術を?」
「はい、ボクは何も出来ないのに緋雨さんはそんなボクをここに置いてくれてますから」
「そんな……私はそんなつもりで……」
 陽春が気軽に央に話しかける。
 知らないうちに緋雨は央を追い詰めていたのか?と考え目に涙が溜まっていた……そんな目を見て央が焦り出す。
「あっ!違うんです緋雨さん……ボ・ボクは……」
「大丈夫や央。緋雨様……央は自分なりに出来ることを探しているんや、恩返ししたいとちゃうか?」
「陽春……」
 陽春の言葉に、緋雨はそういう考え方もあるんだと初めて知り涙を拭った……
「はい!ボク何かしたいんです。緋雨さんにもこの村の人達にも」
「ええなぁ、その心がけ」
「央君ありがとう、無理はしないでね」
「はい!では黄呀さんの所に行って来ます♪」

 そういうと央は緋雨と陽春の前から走って黄呀のいる場所に向かった……その後ろ姿を見た緋雨はちょっと嬉しくなった。

「お待たせしました、黄呀さん」
「央、おせぇでございやす」
「ごめんなさい……緋雨さん達と話してて……」
「まぁいい、央がやる気になってんだ始めやすか」
「はい!」
「まずは、央の能力が何かを知らねーといけねぇ」
「ボク、狐とのハーフとお父さんに聞かされた事があります」
「狐か……親父さんの能力は見たことあるのか?」
「あんまり覚えてないけど……嗅覚と聴覚にすぐれている事とたぶん力もあったような……」
「そうか、まずはその3つを試してみよう」
「はい!」

 そういうと黄呀は央を連れ山の中に入って行った。いろいろ試したところ央は聴覚を自分の中で封印している事が分かった……いじめられていた事で聞きたくない影口も聞いていたからだろうと黄呀は思った……

 いろいろ試したが……力は無く唯一嗅覚が以上に発達している事だった。
「央は嗅覚を使えば危険を察知する事が出来そうだな」
「本当ですか!?」
「他の事も練習次第で開花出来るが、今は嗅覚を練習致しやしょう」
「はい!」
「それにしても……あの日の央とは違うじゃーありやせんか」
「ボク変わりたいんです……やっとお父さんの言ってた事が分かったから」
「何て言ってやした?」
「『強くなろうと思ったとき、その心掛けから強さは始まる。自分自身を信じろ』」
「いい事言うじゃーありやせんか、親父さん」
「昔お父さんも言われたみたいです……ずっとそんな事出来ないって思ってた……」
「フッ やる気になったって事か、いいじゃねーか」
「それに緋雨さんからも『出来ないからいらないじゃない』って言葉嬉しかったですから」
「おめぇさんも男になったてぇことか」
 
 黄呀は楽しそうに笑った、それを陽春と緋雨が影から見ているなんて央には分からなかった……

「ええ感じやな」
「嬉しい事ですね……人は変われると教えて頂きました」
「ホントやな」
 2人しみじみしている時だった……陽春の元に赤い色の蝶が舞い降りた。手に下りた瞬間その蝶は一枚の手紙に変わった。

「使役神ですね」
「そうやな……紅剡こうせん様からや……」
 陽春が手紙を読み上げる『拠点が出来上がった……緋雨は5つの拠点を線で繋ぎ結界を張れ。使役神を飛ばしても自分で行っても構わないが出来るだけ早めに行うように』
「どうするんや緋雨様」
「そうですね……状況も知りたいですし、他の拠点に向かいましょう」
「ほな、黄呀にも言うてくるわ」
「お願いします、私は他の神官にここを守るよう伝えてきます」

 2人はその場から立ち去りおのおの準備を始めた。準備も終わり入り口で待っている緋雨。

「だから言ってるだろーが、お嬢の邪魔になるからここにおれって……」
「嫌だ!」
「どうしたのですか!?」
「さっきから、こーやねん……」
黄呀と央が言い争いしながら緋雨に近づき陽春がため息交じりで話す
「緋雨さん、ボクも連れてって下さい」
「えっ!?」
「お嬢も困っとるやろぉ」
「でも……」
「自分これから戦いもあるんやで」
「うっ……いつ……いつ帰ってくるんですか?」
「それは分からんが……」
「もういいです、央君も一緒に連れていきます」
「「「えっ!?」」」
 緋雨も言葉にみんながビックリする。
 ドキドキしながら央が言葉を出す
「本当に!?」
「ええ」
「まぁしゃーないな」
「ありがとう!」
「お嬢に感謝しろよ、じゃ~行きやすか」
 行くことがきまり緋雨はこれからの事を話し始めた。
「そうね、母屋からここまではすでに結界を張って歩いて来たのであと4つです」
「んで、どこから行くんや?」
「まずは樹羅きらさんの所からにしましょう。戦闘タイプの彼女と一緒に旅をしてもらう為に」
「ええなぁその考え」
「その前に……ここに結界の点を……金色の杖をこの手に……」
 そういうと緋雨は自分の手から金色の杖を出しその先で薔薇を描き始めた。その薔薇は具現化し見たことのないくらい大きな金色の薔薇が目の前に咲く。
「緋雨さん、すごい!!」
 央は緋雨の術を初めて見てびっくりしながらも目をキラキラと輝かせた。
「ほな、行きましょか」
 陽春の言葉でみんなが歩き始めた。
 4人はそう話しながら樹羅の拠点まで行くことにした。

 どのくらい歩いたのだろうか……突然央が声をあげた……
「あやかしの臭いがする……」
 大きな木の後ろに3人のあやかしが隠れて何かを話していた
「何!?」
「緋雨様、後ろに下がっとき」
 黄呀と陽春は緋雨を庇うように立つ
 すると目の前に3人のあやかしが現れる……
「ばれちまったか~」
「だから早く出た方がよかったんですよぉ~」
「見られてますよ……ものすごく俺達を見てますよ……」

 その変な3人のあやかしを見た緋雨達はぽか~んとしていた……
「なんやねん、あいつら……」

 陽春の言葉にあやかしの3人は反応しいきなり動き出す、黄呀はその反応に緋雨と央の前で構える……3人のあやかしはさもばれていないかのように、もう一度登場シーンをやり始めた……
「俺様の名前は灰酒はいしゅ!」
「オレの名前は灰卑はいひ!」
「そしてこの俺が空灰くうはい!」
「3人合わせて」
「「「獣拳の~~~ドルフィ~~~ンッ!!!!!」」」

 3人のあやかしはいきなり決めポーズをとると空灰は喜び呟いた。
「決まった♪」
「なんやねん……自分ら」
 
 陽春はいてもたってもいれずツッコンでしまった……緋雨達は未だにぽか~んとしている。
「何?まだ覚えてないのか……俺たちは」
 バカなのか?という気持ちで灰卑がもう一度とばかりに言い出す。
「「「獣拳の~~~ドルフィ~~~ンッ!!!!!」」」
「それ、さっき聞いたんやけど……」
「っていうか……ドルフィンに手ないけど……」
 陽春のツッコミに合わせて、央はボソッと疑問を口にした……
「何!聞こえてるけぞ!!ってか弱そうなヤツですね」
「おぉ~!!お・女がいるじゃん!俺の相手だなぁ」
「戦うの?痛いの嫌なんだけど……」
 空灰・灰酒・灰卑は言いたい事を言い出した。
 そう話している内に灰酒が緋雨の隣に行き肩を組み始めた……
「きゃっ!」
「てめぇ~お嬢に何しやがる!!」
 黄呀は灰酒の顔面を殴る。
「いってぇ~」
「大丈夫?緋雨さん」
「ええ……ちょっとお酒臭くて気持ち悪いけど……平気です」
 央は緋雨に近づく。
本当はかなり気持ち悪かったのか……目に涙を浮かべながら少しだけ強がる……
「よかった」
「何したか分かっとるやろうな……」
「お嬢に手を出したんだ、ただじゃ~おかね~」
「3人まとめてやらせてもらうわ」

 黄呀・陽春は獣拳のドルフィンに向かっていった。
「本気にならなくても、ほら話し合いで……」
「話し合いだぁ~ふざけるな!」
 黄呀の蹴りをくらい飛ばされる灰卑。
「いや、俺も……ほら……」
「なにしとるん、自分…………」
 術を使うまでもなく陽春はオロオロしている空灰を殴り吹っ飛ばす。
「全然だめじゃね~か~おまえら……ってかここには樹羅はいねぇーのか?」
「いねーよ!」
「酔いすぎちゃうんか?酒臭くてたまらんわ!」
 黄呀の蹴りと陽春の拳が灰酒にあたり先に飛ばされた二人の元に落ちる……
「「「今日はこの辺にしてやる!覚えてろよ!!」」」
「覚えてるわけねーだろうが!!」
 黄呀が大声で叫んだ。
 
あやかし三人衆はそう叫ぶとそこからもうスピードで走って逃げていった……
「なんだったのでしょう……あの方たちは……」
「でも緋雨さんが無事でよかった」
「何が獣拳のドルフィンだ」
「名前負けしてるんやな……めっちゃ弱いわ」
「さぁ……樹羅さんのところに急ぎましょう」
「分かりやした」


 変なあやかしに出会ったと少しイライラしながら黄呀と陽春は思い。緋雨は少し樹羅が心配になった……央は緋雨が無事でよかったと思う反面自分が守れなかった悔しさをかみ締めていた。

 おのおの思う事は違うけど、その後はまた楽しく会話をしながら樹羅のいる拠点に急いだ……

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