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牧之原智花は人を殺さない

もやもや

19

いつのまにか森は深くなり、木々に包囲されているように智花は感じていた。日光は木々に遮られ薄暗い。地面は土のためスーツケースが転がりにくいため、スーツケースを引っ張るのに多大な労力が必要だった。さらに右腕で抱えている猫は全く起きる気配がない。

 引き返した方がいいのではないかと思ったそのとき、少し遠くで誰かの話し声が聞こえてきた。智花は最後の力を振り絞って、重たいスーツケースを引きずり走り出した。
突如視界が開けた。
 
すると一人の女性が智花を見て近寄ってくる。
「あなたはどこの里からやって――」女性は言葉を言い切る前に、叫び声を上げ走り去ってしまった。
 智花は反射的に周囲を見渡したが、何も怪しいものはない。だが、遠目で見ていた人も蜘蛛の子を散らすように去ってしまった。
「なんなんだ一体」
 智花は首を傾げ、数歩歩いたときだった。
「止まれ!」
 強い警告を示している声。智花が振り返るとすでに十人ほどのエルフに囲まれていた。
 さすがに抵抗しないほうがいいか……。

 智花は左手からスーツケースを離し、抱えている毘沙門天を地面に置いた。智花に犯行の意思がないとみたのか、一人の短刀を腰に携えている女エルフが持ち智花に近寄ってくる。

「どうして人間がエルフの村に入り込んでいるんだ」
女エルフは 耳が長く肌は白く金色の髪は後ろにまとめている。
「まあいい。女王の元に連れていけ」

 女エルフが叫ぶと後ろで弓を構えていた他の女エルフが智花に近寄り、草の蔦と思われる植物で智花の手首を縛った。

「ちょっと待って。その猫まだ寝てるんだ。起こさないようにしてくれないか」
 智花は毘沙門天を触ろうとした他の女エルフに声をかけると、毘沙門天を触ろうとしえいた女エルフは智花の言った通り、まるで自分の赤ん坊のように抱きかかえた。






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