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牧之原智花は人を殺さない

もやもや

18

何か冷たいものが頬に垂れてきた、そんな気がした。
 智花はゆっくりと目を開き、頬に垂れてきたものを手で拭った。
「水……」
 上を見上げると、大樹の下で自分が倒れていたことに気が付いた。周囲を見渡すと。へそ点にしている毘沙門天の姿。
「ちょっと、毘沙門天ったら」
 お腹を軽くゆすると、毘沙門天が気だるそうに、声を出す。だが目を覚まさない。
穴から落ちてどこか怪我でもしたのかも……。
不安がよぎった。
こんな見ず知らずのところで一人だなんて考えたくない。
 智花は毘沙門天にどこか外傷があるのではないかと思い、あちこち触ってみたが特に外傷は見つからなかった。
「よかった怪我はないみたい……」
 智花は毘沙門天の鼻の近くに耳を寄せた。規則正しい鼻息が聞こえてきた。
「寝てるだけかよ」
智花は眠っている毘沙門天を何度もゆすった。だがゆすっているにも関わらず、起きる気配はない。
「ったく……。この猫は毎度毎度寝てばかりで」
智花は毘沙門天を抱え上げた。
「仕方ない。運んでやるか」
 側に転がっているスーツケースを拾い左手に猫。右手にスーツケースを転がしながら
歩き出し立ち止まった。
「どこへ行けばいいんだ……」
 智花は頭を捻りパーカーのポケットからスマートフォンを取り出すが、聞いた通り圏外のままだ。
「やっぱりダメか……。そうなると人がいそうなところに行かないとだけど……。どこに行けばいいんだ」
 周囲を見渡しても人が住んでいるようなところは見当たらない。
「まあ。しばらく歩いてみれば誰かいるだろ」
 智花は再び歩みを進めた。





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