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牧之原智花は人を殺さない

もやもや

10

「充電器に着替え、タブレットに味噌汁にご飯、後はメロンパン……」
 智花は大きく口を開いたスーツケースに次々と持っていくものを入れていった。
「後は……ああこれこれ……」
 一冊の本を部屋に戻り持ってきた、すでにボロボロになっている。一冊の文庫本だ。
「……智花の趣味ってホント悪いよね。男同士の恋愛見て何が楽しいの?」
「うるさいな。あんたに私の趣味をどうこう言われたくないわよ。この『男性教師我慢ができない』は私が悩み落ち込んでいたときに読んで、目覚めさせてくれたものなのよ。これがなかったら今の私は存在していないわ!」
「……そんなのいいから。僕のご飯も忘れないでね」
「あんたはなんだって食うんだから、別になんでもいいでしょ」
「せめてあれが食べたい」
 私はかけっぱなしになっているテレビをみた。
 いかにも高級そうなガラスの入れ物に猫が食べる餌を移すと、飼い猫だと思われる、ペルシャ猫が餌を食べるというCM。
「……あんたこれがいくらするか知ってんの」
「そのテーブルのメロンパンくらいでしょ」
 毘沙門天は右に首をかしげながら言う。
「このメロンパンの十倍するわ! 私の一日の食事をあんたの餌にやれるわけないでしょ」
「いいじゃん。異世界行ったらもう食べる機会がないんだよ。一回くらいお願い。後チュールも一年分」
 人間が神棚で手を合わせるように毘沙門天も智花の前で両手で手を合わす。
「猫のくせに、そんな器用なことを……」
 智花は大きくため息をついた。
「一回だけだからね。後チュールは一週間分だけ」
「えー少ないよ」
「嫌ならいいけど」
「……分かった。それで手を打とう」
 智花はちらと時計を見た。午後三時。後三時間……。今はエルフだから耳を隠せば買い物に行ける。明日の朝にはこのアパートを出ないといけない。後三時間で必要になるものを買いそろえないと。
「あんたのさっきの餌とチュール。あと必要になりそうなものを買ってくるから。留守番宜しくね」
 智花は三時のおやつの準備をしながら毘沙門天言った。


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