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牧之原智花は人を殺さない

もやもや

5

「ただいま……」
 すでに正午になろうといている十一時三十分分。智花は何とか今日一日のノルマを果たし、自分のアパートに帰ってきた。
「毎度毎度ながら出迎えはなし、か……」
 冷蔵庫を開け水を一気に身体に流し込むと、ベッドの上で毘沙門天がこちらを見ていた。
「起きてるんなら、出迎えくらいしてもいいんじゃないかな」
 毘沙門天は大きく伸びをしてから「何を買ってきたの?」と尋ねてきた。
「お昼だよ」
 智花は全部食べ切ってある餌皿にキャットフードを入れ、減っている水を足した。待っていましたとばかりに毘沙門天は餌に飛びつく。
 あっという間にキャットフードを食べつくした毘沙門天は再びベッドの上で丸まった後智花に尋ねた。
「今日はどうだったの? 人間の寿命はしっかりとれた?」
「思ったより採れたわ。一度大山駅で降りたんだけど、そこから池袋までやたら身体を触ってくる奴がいたから、一週間分の寿命取ってやったわ。電車に降りる頃にはふらふらになって改札口へ歩いていったよ」
「だったらさ、いろんな人に身体触らせてあげればいいじゃない。そうすれば一気に手に入るし」
「嫌よ。なんで見ず知らずの人間に身体を触らせないといけないのよ。気持ち悪い」
 ちらと居間にかざってある時計が目に付く。
「後五分で、変身の時間ね。エルフだったらこのまま買い物に出かけちゃうから」
「じゃあ僕はひと眠りするから。おやつの時間までには帰ってきてね」
 毘沙門天は仰向けになり、身体を右側に捻りながら眠り始めた。
「毎度毎度随分器用に寝るよね。身体痛くならないのかなぁ……」
 智花は眠っている毘沙門天に近づき眺めた。
 眠っている顔は知り合った頃と全く変わっていない、あどけないままだ。
 ふふ。と智花は自然と笑みがこぼれた。


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