屋根裏の吸血少女は騙してる
大切なモノ
「さて。冒険者なんて危険なことしないで、平和に暮らせる方法でも探すかね……」
そんなことを呟きながら足を動かした時だった――
「しゅ……俊輔には……手を……出さない…………で…………私はどうなってもいい……から」
「お前まだ話せるのか。本当にすごいな! ……ロニー。とどめを刺せ」
――ドクンッ
また嫌な心臓の音だ。
やめろ。やめろ! やめろ!!!
もう聞きたくない!
弱々しくなったリリス。それでも俺の事を考えてくれている。
なんであそこまで俺の事を!
意味がわからない! と頭を振りながら、さっさとこの場をあとにしようとした時。
頭の中に、聞き覚えのない女性の声が響いた――
(自分で胸に手を当てて考えてみなさい? 本当にあなたは助けたくないの? 彼女を見捨てるの?)
ちっ! やめろよ! 俺はアイツなんかどうでもいい! 興味もない! 自分が助かればそれでいいんだよ!!! 俺は最低な人間なんだよ!!!!
(では、何故あなたはここに居るの?)
くっ!!!!
(助けたいと思ったから、死にものぐるいで走った。辛くてさっさと逃げ出したい。そう思いながらもあなたは足を動かし続けた。それが動かぬ証拠ではないですか?)
うるさい! 関係ない。だいたいあいつと俺はなんの関係も――
(本当ですか? この半年。何も無かったのですか?)
半年――
俺の脳裏に、リリスとの思い出がフラッシュバックされる。
初めてじゃがいもに似た植物が発芽した時――
あぁ俺、笑ってたわ……。
一緒にご飯を食べてた時に、お肉が食べたい! とリリスが駄々を捏ねた時――
あぁ、やめろと言いながら笑っていたのは俺か……。
一緒に探索に行った時、リリスが転んで泣きついてきた時――
本当お前は馬鹿だなと笑っていたのは俺か……。
あぁ……何もかも…………。
――元の世界では味わえないものじゃないか。
俺は友達もいない。親もいない。真司という空想キャラを立ちあげるくらい、俺は1人だ……。
そうか。俺は……。
――恵まれていたんだな。
俺は立ち止まり、リリスの方を向く、
「あぁ、しょうがない。今回は俺も一緒に死ぬとするか……。もうあの時みたいに一人で死なせない。……俺も死んでやる」
俺は置いていた鎌を手に取り、聖剣持ちの男に向かって足を進める。
「あぁ。大丈夫。上手くいく。一人で死なせない。俺はもう失いたくない。失いたくないから得ようとしなかったんだ……リリス、お前はもう俺の大切な人……絶対に……絶対に俺の前から消させない!!」
俺は鎌を思いっきり聖剣持ちに投げつけ、
「俺のリリスに、手ぇ出すんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
「なに!?」
「……しゅん……すけ?」
何をしたらいいのかなんて分からない。ただ気づいたら、
(それでいいのよ、あなたは私達に見守られている。だから大丈夫。思いっきり暴れなさい――)
――体が操られるかのように動いていたんだ。
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