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屋根裏の吸血少女は騙してる

べるりおん

助けたくても助けれないから


「くっそ……もっと……もっと速く走れぇぇぇ!!!」

 自分を奮い立たせる様に走る俺は、息を切らしながらある事を考えていた。

「最悪リリスだけでも、あのポーションを使って……逃げてもらおう……」

 それはこの世界に来た時に使っていたポーションの事である。
 きっと元の世界へ帰るように持っているはずだ。と考えた俺は、そのような考えを思いついたのだが、

「じゃあなんでまだ戦い続けてるんだ?」

 もし持っているのならさっさと使って逃げてしまえばいい。
 使わない理由はなんだ? まさか持ってきてないとか? それはないか……。
 色々な憶測を立てるが考えがまとまらない。
 そうこうしているうちに、だいぶリリスがいる所の近くまで来た。周りには派手に壊された家や、怪しげに光る蜘蛛の糸のようなものが広がっていた。俺はとりあえず。と、物陰に隠れながら様子を見る事にした。場合によっては俺が介入したら厄介なことになるかもしれないからだ。

「はぁ……はぁ……で、リリスはどこだ?」

 家と家の間から大通りを覗くとそこには三人の冒険者が立っており、そして――

「さて、これにて討伐は終わりだ。帰るか!」
「そうだな、さっさと風呂に入って寝たい」
「まーた、ロニーの風呂宣言かよ」

 ははは! と笑うのはボロボロになったリリスを担いだ聖剣持ちの男だった。

――リリスが……負けた?

 ドクンッ。

 心臓の音がうるさい。

 どうしたらいい?

 何をしたらいい?

 このままではリリスが連れていかれる。

 助ける?

 助けたい。

 でもどうやって?

 わからない。

 勝てない。俺は弱い。力がない。

 だったら大人しく時間が経つのを待って、リリスを諦めるしかない。

 そうだ。俺頑張ったよな?

 死ぬほど走ったし、弓使いの正体の謎にも気づいた。助けたいとも思った。てかそもそも俺があいつを助ける義理がない。最初俺の事殺そうとしたやつだぞ? 大丈夫。みんな許してくれるさ。そうだ、俺は間に合わなかったってことにすればいいんだ。着いた時にはリリスはいなかった。そうしよう。

 俺は目の前の惨状を見なかったことにし、背を向ける。

「悪いなリリス。俺は弱いし最低な男かもしれない。でも俺は、お前の命と比べた時、自分の方が大切だと思った。ただそれだけだ……」

 俺は笑い続ける冒険者達を背に、持ってきていた鎌を静かに置き、その場を後にする。

「半年間ありがとう。じゃあな……」

 こうして俺はまた、最低な人間になった――



 

 


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