屋根裏の吸血少女は騙してる

べるりおん

異世界生活見直します


「でだなリリス! 俺達もうそろこの村から出ないか?」
「うーん。だって街の方行っても俊介が……」
「ぐっ……」

――街外れの小さな村。名をエキロ村と言う。

 俺達がここにたどり着いたのにも理由がある。
 異世界へとパジャマ姿で転移を無事果たしたあと、転移場所が大都市ということが分かったのだが、

「ここが俺の世界で死んだやつの転生先だったなんて……誰が想像するかよ!」
「それは! 私だって知らなかったわよ!」
「なんで逆ギレすんだエセ吸血鬼! おまけにほとんどのやつが女神から貰った能力やら武器があるじゃねぇか! 俺にあるのこのパジャマだけだぞ!」
「何を言っているの? もうひとつあるでしょ?」
「はぁ? んなもんねーよ!」
「私よ!」
「やかましいわ!」

 謎にえばるリリスのほっぺたをつねった俺は、涙目になりながら近くの切り株に腰を下ろす。

「てかさ、都市の方行かないと出会いもないしつまんなくね? もうそろ俺も異世界人の友達が欲しいんだが」
「え? 私がいるじゃない!」
「…………………」
「なにその夜中にリビング行ったら、ばったり親のキスシーン見てしまったみたいな顔」
 
 俺はリリスが冗談半分の笑顔から真顔になる瞬間の恐怖を味わいながら、畑作業に戻る。
 ちなみに、先程友達がいないと言ったが、それの最大の理由はこの村に人がいないということにあるのだ。
 大都市でダンジョンやらなんやらのクエストを攻略してる地球から転生してきた人間。そいつらにビビった俺は、大都市から10キロほど離れたこの村に来てしまった訳だが、まさか人がいないとは思わなかった。
 家も綺麗に残ってるし、貯蔵庫のような所に食べ物もあった。俺達はそれらの食べ物を節約しながら食べたり、元々あった畑作の知識が使えるかどうかは博打だったが、畑を耕し作物を育てた。
 作物に関してはさすが異世界と言うべきなのか、俺の想像の何倍も早く成長し、種を植えたら2週間後には実がなっていた。
 ちなみに、この生活が二ヶ月たった辺りで、リリスがしびれを切らし「お肉食べたい!」と言い出し、近くの森まで今ある最大の装備をして、散策をしに行ったのが、木の実などしか無かったため即撤退した。
 村を囲うように出来ている、木を削って出来たバリゲートからするに、近くにモンスター又は大型の動物がいてもおかしくないと考えたのだが、外れたようだ。
 と言うより、この世界に動物がいるのかも分からない……。
 二人して異世界のことを知らないのは致命的すぎる。やっぱり、大都市に行って、冒険者やらなんやらにならないとリリスの捜し物も見つけれないと思うんだが……。

――そんなことを考えていた時だった。



「お前達! 敵は魔物を制圧できるほどの強さを持った化け物だ! 決して油断せずに行くぞ!」
「「はい!!!!」」



 鎧などに身を包んだ五人の冒険者がそんなことを言いながら威勢よく村に入ってきたのだ。

「おいおいリリス! 俺らが行く前にあっちから来てくれたぞ!」
「え、うん……でもなんか様子が……」

 俺は何故か嫌そうな顔をしているリリスを引っ張りながら、冒険者達の前に行き、

「俺達この世界にうとくて困ってるんです! 宜しければ教えて欲しいんだけ――」

 俺の言葉が言い終わる前に冒険者達は各個人の武器を手に取り。

「奴が人間の姿に化けれる恐ろしい魔物だ! 行くぞ!」
「まって、クリア! 二体いるなど説明にはなかった! ここは一旦引くべきよ!」
「大丈夫だ! 俺にはこの#聖剣__エクスカリバー__#がある! 俺に任せろ!」


 そんな主人公みたいなセリフを言いながら、俺たちに攻撃を仕掛けてきた赤髪の男を横目に、俺はリリスに担がれながら全力で逃げたのだった――
 

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品