異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!
降服勧告をしたが、悪魔と呼ばれた!
    「そろそろ頃合いだな……」
俺が椅子を立ち、呟く。棟の屋上から見えるのは見渡す限りの砂の地面とそこに乱立する他の棟。そして目と鼻の先にその他の棟のどこかからかやって来た軍団……いや、集まりの中の残党。
「頃合い? 何かするつもりでして?」
「まぁ……適当にな。レミル、アインは戻ってろ。あと、ついでに教室にいるSクラスに伝言を頼みたい」
「ひゃ、ひゃい!」
第一に棟から出ないこと。第二に何でもいいから窓側に窓側にバリア系やウォール系等警戒は怠らないこと、第三に中まで侵入してきたやつには下手に手を出さずに教室に入って来れない様にだけすること。
「――後は……そうだな、これは出来たらだけど、極力気絶している生徒は起こせ。また気絶するようなら放置でいい」
「わ、わかりゅました!」
「ええ。何をするつもりかは計りかねますの。ただ安全に関しては、相手がポーションが無くなった時点で去っていない事から何らかがあるのか、ただの馬鹿なのか、見極める必要がありますの」
とまあ、用心を怠る事がなければおそらく安全だろう。二人は階段のドアへ入り、二階へ下りて行く。
「セリフ……台本無しだが大丈夫か? あ、いけるか……? 『強欲の書』相手の心理状況」
――――――――――
権限レベルが足りない為、一部分のみ表示します――。
全体……疲弊六割・恐怖二割・憤怒一割・冷静一割。
疲弊……魔法の連続使用、ストレス状態、呆れ。
恐怖……ストレス状態、恐喝、魔力欠乏による過剰反応。
憤怒……自尊心の負傷、時間の経過による苛立ち。
冷静……???
――――――――――
表示された。権限レベルと言うのが何か分からないが、上昇したのか、もしくは質問の仕方で変わるのかもしれない。
……で、結果だが……おそらく『俺が見て』こうだろうと判断出来る部分だけだろう。だから冷静は説明が無い。何故ならよくわかんないから。
纏めると、一人が立場が偉くて怒ってる、近くにいる側仕えが二人。一人は冷静一人は疲労。その他が疲労五人と恐怖二人。
ストレス状態は憤怒している奴が怒鳴っているからだろう。端的に言えば恐怖支配に似たものを感じる。そこの八人しかり、教室の百人しかり。
分析はこのくらいにして、行動に移ろう。俺は強欲の書を魔法の感知に切り替え、魔力操作を使う。
和樹から声に魔力を乗せる感覚を教えてもらった。俺は魔力を操れるので簡単だった。が、その真価は威圧だけでは無い。
『魔力発声』……俺が手に入れたスキルだ。分類は魔力操作に入るかと思っていたが、独立したスキル。使い方は変わらず、声に魔力を乗せる。その乗せた魔力を操り、指向性や効果を生み出す。効果の幅や範囲は込める魔力量に比例……といういつものテンプレ説明だ。
「あー、あー。ごほん『拡声言語』……『おい、お前ら。こっち見ろ』」
よし、出だしは上々。全員がビクッとしてこっちを見る。
『よし、俺はSクラス、レト・アルトレアと言う。一言だけ伝えたい。降伏をオススメする、お前らはクラスメイトを大事にしなさすぎだ、帰れ。そっちの生徒、今は教室に閉じ込めてるが条件付きで解放もする』
俺が勧告すると、ギャーギャー騒ぐ。あ、聴力を強化しよう。忘れてた。
「は? 何故!? 何故!? 何故!? 何故あいつが!?」
「お、落ち着いて下さい。ここで叫んでも向こうには伝わりません。ここは指示通り一度戻って冷静に――」
怒鳴る奴の肩を冷静な奴が押さえる。が、しかし心配は無用なのである。
『大丈夫、聞こえてるから安心しろ?』
俺には聞こえている。何故かは知らんが冷静な奴が舌打ちしたのも聞こえている。なんでだろーなー。
『で、どうする? 俺は、降伏して帰る事を推奨する。生徒は安全だから安心しろよ』
さっき強欲の書で見たとき、こいつには自尊心の負傷とあった。つまりはプライドを傷つけられていると、そういうことだ。
俺からすると、プライドが大きければ大きい程、怒っていれば怒っているほど周りからの注意や助言に対し否定的になる。つまりは俺は仲間の為に帰れと言ったが、今、こいつの心境はどうなっているのだろうか?
俺と和樹で鎮圧した時、ほとんどの生徒が既に疲労状態だった。それがこいつの仕業だとすれば、こいつはクラスメイトを手下とかだと思っている筈で、自分第一の考え方だとすれば……。
「そんな物知るか! 残念だったな! 第一勝手に捕まった奴らが悪い! それより、お前……降りてこい! これはセルカトブルド第三王子、エルルトの命令である」
耳を強化してなくても聞こえない位大声で叫ぶ。
へー、王子だったんだ。それは知らなかった。……あれ? 強欲の書に反応が……。
「何をしている! 早く降りてこい! 我が待っているのだぞ!? それとも何か、反逆罪で罪人になりたいのか!? 分かったのなら早くしろ、命令だ!」
はぁ……溜め息しか出ない……はぁ。王子だからもっと分別がついている者だと思っていたが、想像以上だった。これは過剰演出だったか……。
いつでも来ていいって王様に言われてるんだよな……学園への入学が決まったあのとき、学園の説明と称してお茶会が開かれて、たまに俺への報告も兼ねてお茶会を開くから来いって。そんな気軽に呼ばれても……と、思っている訳なのだが、場合によっては報告するチクる事も考えよう。
「何をしている! 早く降りて来て、謝罪をしろ。ふっ、本当はこんな事をしたくはなかったのだがな……お前は不敬にも程がある。民を導く立場にあるこの俺に文句をつけようとは……」
まあ、ここは都合がいい。従おう。俺は屋上から飛び降る。二階で一度『フライ』を使い、キューテに伝言を頼み、そのまま歩いて王子のもとへ進む。
「はっ、やはりお前か、俺はあのときの屈辱を忘れては居らぬぞ!」
え、あの時って何時だっけ? てか会った事有ったっけ?
王子は少し薄い金髪で、背丈は俺より高い。よし、記憶に無い。
「俺はあの時――」
と、ペラペラ喋り出す。側仕え的な人もその後ろで涙ぐんでいる。どこかの悲劇を話しているかの如く拳を握って演説する。
あ、ちょっとタイミングが早いな……まあいいか。
「エルルト王子……覚えて無くてすみませんでした!」
俺は腰を九十度折り、謝罪する。顔は見えていないが、多分ぎょっとしている事だろう。
俺が謝った事に出はなく、自分目掛けて魔法が飛んで来ている事に。尚、俺は頭を下げ、謝罪中。その間たっぷり二十秒。
「王子ィィィィ!!!!!!!!」
宥めていた側仕えが絶叫するのが聞こえる。いや、多分どうしようもないと思う。数が数だし、百人の一斉攻撃は止められないだろう。
俺は頭を上げ、にこりと笑う。
「いやー、本当、覚えて無くてすみませんでした。その話はまた後日に。……あ、君。王子はちょっと話せないみたいだから用件を……あ、降伏でいい? うん、まあ詳細は詰めるとして――俺からの条件は……うーん、金は流石に無理だから……物、いや、そうだな……俺らのクラスとそっちのクラスで同盟みたいな感じで良いか。うん、一人じゃあれだし、君にも頼もう。俺としては多数決をしたいが流石に王子が黙って無さそうだし、これあげるから何とか説得してね」
二人を指名して、背を向ける。王子はバタリと倒れた。
「王子ィィィィ! ……あいつ……いや、あの悪魔は私が必ず倒して見せます! だから目を覚まして下さい! エルルト王子ィィィィ!」
一人を倒して百人を救ったのだから比較的に俺は良いことをしたと言えるのでは無いか?
いや、然るべき制裁であった。ついでに俺がやったのではない。これは向こうのクラスに伝えた伝言『やりたい奴だけやれ』に従い、やりたい奴がやっただけである。
俺が椅子を立ち、呟く。棟の屋上から見えるのは見渡す限りの砂の地面とそこに乱立する他の棟。そして目と鼻の先にその他の棟のどこかからかやって来た軍団……いや、集まりの中の残党。
「頃合い? 何かするつもりでして?」
「まぁ……適当にな。レミル、アインは戻ってろ。あと、ついでに教室にいるSクラスに伝言を頼みたい」
「ひゃ、ひゃい!」
第一に棟から出ないこと。第二に何でもいいから窓側に窓側にバリア系やウォール系等警戒は怠らないこと、第三に中まで侵入してきたやつには下手に手を出さずに教室に入って来れない様にだけすること。
「――後は……そうだな、これは出来たらだけど、極力気絶している生徒は起こせ。また気絶するようなら放置でいい」
「わ、わかりゅました!」
「ええ。何をするつもりかは計りかねますの。ただ安全に関しては、相手がポーションが無くなった時点で去っていない事から何らかがあるのか、ただの馬鹿なのか、見極める必要がありますの」
とまあ、用心を怠る事がなければおそらく安全だろう。二人は階段のドアへ入り、二階へ下りて行く。
「セリフ……台本無しだが大丈夫か? あ、いけるか……? 『強欲の書』相手の心理状況」
――――――――――
権限レベルが足りない為、一部分のみ表示します――。
全体……疲弊六割・恐怖二割・憤怒一割・冷静一割。
疲弊……魔法の連続使用、ストレス状態、呆れ。
恐怖……ストレス状態、恐喝、魔力欠乏による過剰反応。
憤怒……自尊心の負傷、時間の経過による苛立ち。
冷静……???
――――――――――
表示された。権限レベルと言うのが何か分からないが、上昇したのか、もしくは質問の仕方で変わるのかもしれない。
……で、結果だが……おそらく『俺が見て』こうだろうと判断出来る部分だけだろう。だから冷静は説明が無い。何故ならよくわかんないから。
纏めると、一人が立場が偉くて怒ってる、近くにいる側仕えが二人。一人は冷静一人は疲労。その他が疲労五人と恐怖二人。
ストレス状態は憤怒している奴が怒鳴っているからだろう。端的に言えば恐怖支配に似たものを感じる。そこの八人しかり、教室の百人しかり。
分析はこのくらいにして、行動に移ろう。俺は強欲の書を魔法の感知に切り替え、魔力操作を使う。
和樹から声に魔力を乗せる感覚を教えてもらった。俺は魔力を操れるので簡単だった。が、その真価は威圧だけでは無い。
『魔力発声』……俺が手に入れたスキルだ。分類は魔力操作に入るかと思っていたが、独立したスキル。使い方は変わらず、声に魔力を乗せる。その乗せた魔力を操り、指向性や効果を生み出す。効果の幅や範囲は込める魔力量に比例……といういつものテンプレ説明だ。
「あー、あー。ごほん『拡声言語』……『おい、お前ら。こっち見ろ』」
よし、出だしは上々。全員がビクッとしてこっちを見る。
『よし、俺はSクラス、レト・アルトレアと言う。一言だけ伝えたい。降伏をオススメする、お前らはクラスメイトを大事にしなさすぎだ、帰れ。そっちの生徒、今は教室に閉じ込めてるが条件付きで解放もする』
俺が勧告すると、ギャーギャー騒ぐ。あ、聴力を強化しよう。忘れてた。
「は? 何故!? 何故!? 何故!? 何故あいつが!?」
「お、落ち着いて下さい。ここで叫んでも向こうには伝わりません。ここは指示通り一度戻って冷静に――」
怒鳴る奴の肩を冷静な奴が押さえる。が、しかし心配は無用なのである。
『大丈夫、聞こえてるから安心しろ?』
俺には聞こえている。何故かは知らんが冷静な奴が舌打ちしたのも聞こえている。なんでだろーなー。
『で、どうする? 俺は、降伏して帰る事を推奨する。生徒は安全だから安心しろよ』
さっき強欲の書で見たとき、こいつには自尊心の負傷とあった。つまりはプライドを傷つけられていると、そういうことだ。
俺からすると、プライドが大きければ大きい程、怒っていれば怒っているほど周りからの注意や助言に対し否定的になる。つまりは俺は仲間の為に帰れと言ったが、今、こいつの心境はどうなっているのだろうか?
俺と和樹で鎮圧した時、ほとんどの生徒が既に疲労状態だった。それがこいつの仕業だとすれば、こいつはクラスメイトを手下とかだと思っている筈で、自分第一の考え方だとすれば……。
「そんな物知るか! 残念だったな! 第一勝手に捕まった奴らが悪い! それより、お前……降りてこい! これはセルカトブルド第三王子、エルルトの命令である」
耳を強化してなくても聞こえない位大声で叫ぶ。
へー、王子だったんだ。それは知らなかった。……あれ? 強欲の書に反応が……。
「何をしている! 早く降りてこい! 我が待っているのだぞ!? それとも何か、反逆罪で罪人になりたいのか!? 分かったのなら早くしろ、命令だ!」
はぁ……溜め息しか出ない……はぁ。王子だからもっと分別がついている者だと思っていたが、想像以上だった。これは過剰演出だったか……。
いつでも来ていいって王様に言われてるんだよな……学園への入学が決まったあのとき、学園の説明と称してお茶会が開かれて、たまに俺への報告も兼ねてお茶会を開くから来いって。そんな気軽に呼ばれても……と、思っている訳なのだが、場合によっては報告するチクる事も考えよう。
「何をしている! 早く降りて来て、謝罪をしろ。ふっ、本当はこんな事をしたくはなかったのだがな……お前は不敬にも程がある。民を導く立場にあるこの俺に文句をつけようとは……」
まあ、ここは都合がいい。従おう。俺は屋上から飛び降る。二階で一度『フライ』を使い、キューテに伝言を頼み、そのまま歩いて王子のもとへ進む。
「はっ、やはりお前か、俺はあのときの屈辱を忘れては居らぬぞ!」
え、あの時って何時だっけ? てか会った事有ったっけ?
王子は少し薄い金髪で、背丈は俺より高い。よし、記憶に無い。
「俺はあの時――」
と、ペラペラ喋り出す。側仕え的な人もその後ろで涙ぐんでいる。どこかの悲劇を話しているかの如く拳を握って演説する。
あ、ちょっとタイミングが早いな……まあいいか。
「エルルト王子……覚えて無くてすみませんでした!」
俺は腰を九十度折り、謝罪する。顔は見えていないが、多分ぎょっとしている事だろう。
俺が謝った事に出はなく、自分目掛けて魔法が飛んで来ている事に。尚、俺は頭を下げ、謝罪中。その間たっぷり二十秒。
「王子ィィィィ!!!!!!!!」
宥めていた側仕えが絶叫するのが聞こえる。いや、多分どうしようもないと思う。数が数だし、百人の一斉攻撃は止められないだろう。
俺は頭を上げ、にこりと笑う。
「いやー、本当、覚えて無くてすみませんでした。その話はまた後日に。……あ、君。王子はちょっと話せないみたいだから用件を……あ、降伏でいい? うん、まあ詳細は詰めるとして――俺からの条件は……うーん、金は流石に無理だから……物、いや、そうだな……俺らのクラスとそっちのクラスで同盟みたいな感じで良いか。うん、一人じゃあれだし、君にも頼もう。俺としては多数決をしたいが流石に王子が黙って無さそうだし、これあげるから何とか説得してね」
二人を指名して、背を向ける。王子はバタリと倒れた。
「王子ィィィィ! ……あいつ……いや、あの悪魔は私が必ず倒して見せます! だから目を覚まして下さい! エルルト王子ィィィィ!」
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