異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

補給は断ったが、汚れるのは仕方ないだろう!

    傍目に和樹が先陣を切った所を見て、姿勢を崩さないように意識し、俺は俺の役割を果たしに飛ぶ事にする。


 「『バースト』


 ご存知の通り、俺の高速移動方法である、エア・プロテクトからの魔力操作を用いた部分的バースト。風の暴発による内側へのダメージを防ぐため、すぐさま魔力を集めてエア・プロテクトを再構築、修正し、それを繰り返す、オリジナルの技である。


 ある程度離れているとは言え、見られては厄介なので、一気に後方まで回り込み、伏せる。


 ここから見えるのは並んで魔法を今も放ち続けている敵の後方部隊らしき集団と、その間から少し安定しない足取りで離れていく生徒と生徒が向かう方向に設置された台。そこには数人の生徒が居てポーションを煽っている。飲み終わった生徒は少し気合いを入れ直してからまた後方部隊の列に加わっている。そんな光景だ。

 ポーションが置かれている台を詳しく言うと、屋台とかのそれだ。出店とかで売ってそうな感じだ。


 俺の目標はざっくり言うと後方部隊を叩きつつ、和樹達が頑張るのを願って、撤退させる事。殲滅ではない。

 その為にも疲弊を促す必要がある。ので、回復ポーションを狙う。


 前述した通り、作戦を効率よく進めるための前段階であって、破壊も回収も同じ事なので、俺がこれからするのは作戦の一つであって、決して興味本意でポーションを持ち帰って分析したりしても、それは破壊も可能だった俺が破壊せずに回収したという事なので、俺が所持する権利を持っているので、誰にも文句は言われない。むしろ感謝位はされたいものだ。


 大事なのでもう一度……俺はポーション目当てでここに来た。以上。


 人数が少なくなった所を見定めて一気に近づく。

 二人ほどいるが問題は無いだろう。


 「ふぅ……おい、確か学園内での戦争に勝つと待遇が良くなるって話だったよな?」


 「ええ、やはりご勤勉でいらっしゃいますね。流石はエルルト第二王ぶふぉ!?」


 「な、なんだいきなり!? 我の前で汚ならしいぞ!」


 「う、うし――」


 「『バースト』」


 『ぎゃぁぁぁぁ』


 急接近空の指向性を持たせないただのバーストで近くにいた二人を吹き飛ばす。

 あれ? なんか言ってたか? 良く聞こえなかったが……ま、いいかポーションの方が優先だ。


 「『ライト・ウォール……アース・ウォール』っと、こんな物でいいか……さて、どんな代物か査定しなくては……」


 ライト・ウォールで見えなくした上、内側にアース・ウォールで物理的にもガードできる。完璧だな。


 俺は置かれてあるポーションを手に取り、一口だけ口に含む。


 一応エルフの血筋なのか種族特性的な感じで薬草の種類や野菜の育て方など、乾いたスポンジの様にどんどん吸収出来た。

 俺としては他の……主に歴史等の勉学も補正が掛かってくれていたらなんて何度思った事か……。


 「ふむふむ……日光が駄目な薬草が多いがその分回復出来るって感じか……だが、品質は中の上程度、おまけに熱に弱い薬草も入っているな、こりゃ」


 ま、その分薬学に励むとしている。このポーション、恐らく生徒の手製だろう。日光に弱いものと熱に弱いものの分類が甘い。

 俺としてはいっそのこと熱に強い薬草も入れちゃって、熱に対しての弱みを打ち消して、日光は諦めたとしても、後二割は回復量を上げて及第点位か?

 いや、クラス全員の分を作るから質より量か……いやでも打ち消すときにかさ増し出来てるから及第点の効果位は最低限望めるか……。


 おっと、危ない危ない。ここは敵陣地だったな……さて、どうやって逃げるか……。

 危うく我に帰れたものの、なんか全方位から攻撃を受けている。今は少しずつ補強しているから良いが、このままではいずれ……ん? いや、こっちに回復ポーションあるし、持久戦だったら勝てるな……。

 あ、いや、止めよう。後で和樹とか先生とかそこら辺に怒られそうだ。


 「『アース・ホール』あ、ついでに……『アイテムボックス』紙とペンで[三十八点です。効果はそこそこの市販程度ですが、次回に期待します(笑)]っと……ま、期待している点は嘘ではないから煽ったのも許してくれるだろう」


 俺はポーションをアイテムボックスに一本残らずしまった後、メモを残した。八割は煽り目的で、なのだが。

 最後に少しだけ大きく土の壁を補強して、アース・ホールで地面に開けた穴に入る。地上に開けた穴はアース・ウォールで隠した。俺はそのまま地下を進み、体感で百メートル程進んだ所で地上へ出る。そこはクラス棟のすぐ近くで、ハイデ姉妹が魔法で和樹を援護している所の隣だった。


 一人不運と言えたのは一人で縦横無尽にハルバードを振り回す和樹でもなく、魔法の射撃に夢中なハイデ姉妹でもなく、地面からゾンビの如く現れた俺に足を掴まれた運搬係のキューテであった。


 「ぎ、ぎゃぁぁぁぁなのだぁぁぁぁぁ!」


 「え、何ですか、どうかされましたかキューテちゃ……ぁ」


 「お、お姉ちゃん!?」


 キューテは即気絶、キューテの叫び声を聞き、こちらを見たアインも気絶、キューテとアインを放って置くわけにもいかず、マインは戦線離脱、ついでに、ため息をつきながら新品の制服についた土を払っている俺に言った。


 「アルトレアが原因。私は悪くない。けどお姉ちゃんが大事だからついでにそこの過剰反応も連れて離脱する。だから後は任せた」


 アインを抱え、キューテを引きずってマインはクラス棟の中へ入って行く。


 一つ訂正しよう。


 俺は二人目の不幸な者であったと。


 「はぁ。せっかく新品の制服だってのに……どうせならポーションで汚したかったな……既に土で泥だらけだけど……ははっ、和樹の鎧は無傷っぽいけど、あの中の制服はズタズタなんだろうな……せっかく新品の制服だってのに、もう替えを寄越せって注文しなきゃいけないのか……大切にしようぜ、物は」


 精々ダメージを受けない様にしなければ……。


 「『レジスト・フルアーマー』『パワー・腕』『エア・アーマー・タイプフルメイル』……はぁ」


 プロテクトの上位互換とも言えるアーマーを発動。アーマーは固いが故にバーストしても威力はそこそこだし、応用もしにくい。が、魔力操作なら形状は自由に決めれたりする。今回は和樹の鎧を真似た。


 まさに今の俺の気持ちを代弁してくれる言葉があるとするなら戦々恐々だ。多数……それも囲まれる程の数を相手にした事がない為、上手く動けるか分からない。下手をしたら前線の魔法で武具を造り、使いこなしている感じの奴らにブスッといかれかねない。和樹が。

 え? 俺? 俺は万に一つぐらいだろう。纏ってる魔力の質が違うからな。


 嫌々だが仕方がない。このままだとブスブスッといかれかねない。和樹が。

 俺は基本的に攻撃魔法はいつも全力だから今回はどれだけ手を抜くかが重要だろう。


 俺は自家製、アドレナリンポーションを飲み、更に拳に麻痺ポーションを掛ける。少しだけ痺れるが許容範囲内だ。和樹の方も撃退というよりは手加減に手こずっている様だ。これは俺の秘蔵のポーション達が役に立つだろう。


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