異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!
クラスメイトは、ある意味強い!
俺は朝に弱い。宿屋に止まっていた時も起こしてくれる人がいなかったので、昼前までベッドから動けない事も多々あった。
そんな俺を叫び起こしたのは、言うまでもなくフェーン先生だ。
『ァアルトレアァ!! ……大事な試合の朝に寝坊とは随分肝が太い様だな! 私が学生……更にその日に試合を控えているのならば真っ先に起床し、誰よりも先に試合場で待っておくぞ! とにかく早く迅速に外へ出ろ!』
本当うるさい。凛としていて綺麗な見た目なのだからもう少しおしとやかに怒鳴れば良いのに……いや、怒鳴らないでほしい。
俺は驚いてベッドから落ちた体を起こし、目を擦る。そして伸びをした後、着替え始める。
「寮生活、最初の朝は叫び起こされるって……てか、校内放送で名指しされる気持ちを考えて欲しい……」
いくら生徒が十人未満しかいないSクラスでも羞恥心が小さくなるわけでは無いのだから。
俺はそのまま部屋の窓を開け、外の百メートル程の距離にある試合場まで早足で駆ける。
昨日に引き続き、ハイデ姉妹以外の六人と先生が待機している。
「おはようございます先生。みんなも……あれ? まさか今から試合ですか!?」
俺は軽くみんなに挨拶したあと、魔法で結界が張られている試合場をみて目を見張る。
「ああ。今から、と言ってももう昼前だ。もう皆万全を期している」
万全って言っても元気なのはキューテ位でみんなぐったりしてるんですけど……。
俺の視線を感じたのかキューテが明るい顔で口を開く。
「あたしは寝起きで寮内一周なんて楽勝だ!」
アリスとかロイルとか今にも倒れそうなんだけど……。
「じゃ、そんな訳で、福田とアルトレアは決勝戦だ。早く入れー」
「分かりました。レト、行くぞ?」
なに澄ました顔で行こうとしてるの!?
「ちょ、俺、朝御飯もまだなんですけど……」
「うむ。皆も昼食はまだだ」
確かに、今食べるのなら昼食に入るのだろうが!
「はぁ……分かりましたよ」
俺は和樹と結界内に入る。
尚、朝御飯を諦めたわけではない。非常食の干し芋をアイテムボックスから取りだし、かじる。
甘さは控えめだが歯ごたえがあり、少しは腹の足しになった。
『両者準備は良いか? 決勝戦だ。それなりの準備はテリスがしているし、万が一の時は上を連れて来るから、遠慮、心配等は無しで頑張れ。では……始め!!』
残念。もう一本食べようと思っていたのに……。
俺は無念のうちに干し芋をしまい、まだ固まっている背筋をほぐすため、もう一度伸びをしつつ、改めて辺りを見る。
試合場は約三十メートル四方。下は昨日とは違い、石になっている。
俺が干し芋を食べていたときにアイテムボックスから取り出して、装着したのか、和樹は昨日と同じ戦闘態勢の全身鎧と、槍の先端に斧も着いている……確かハルバードという名前だったような気がする武器を手にゆっくりとこちらに向かって来る。
昨日、レミルに勝って和樹と戦ったドラヴィスには残念だったが、最初の一手で俺は、和樹の勝利を確信した。
それは単なる相性だった。逆にレミルならば勝てたのかも知れない程の。
最初の一手、と言ったが、実は試合はその一手で終わったのだ。
今と同じように和樹はゆっくりと距離を詰める。そこに特大のウォーター・ボールを放ったドラヴィスだったが、和樹はそれを弄ぶ様に鎧の表面を滑らせ、そのままドラヴィスの首元にハルバードを当てたのだ。
まず、騎士に対しての最大の利点であるリーチが活かせないということ、飛ばす様な魔法が使えない事、という制限が掛かった訳である。
「『レジスト・フルアーマー』」
俺は全身にレジストを掛け、鋼鉄の皮膚という鎧を纏う。
「『パワー・腕』」
次に腕を強化し、更に魔力を腕に集中させる。
俺が何もせず、待っている様に見えたのか、和樹が歩みを止めずに話しかけて来る。
「レトは……土のナイフとか創らないのか?」
「ああ。そっち系は消費がエグいからな。それに、本職相手に武器を使うってのもそっちに分がある気がするしな」
「確かに……そうだな」
俺が軽く答えると、自分の武器に目を落とす。
「だから俺は……」
「……かはっ!?」
「これでいい」
その隙を狙い、俺は跳躍して間合いを詰め、鎧を殴る。
パワーで強化した威力に加え、集めた魔力が放たれ、鎧越しに衝撃を与える。レジストした上、痛覚軽減(大)がある為、痛みは無いが、明らか異変が目の前で起こる。
俺が殴った衝撃で鎧が割れたかと思えば、それが逆再生するように直っていく。それと同時に俺の魔力が拳から吸われていく……否、喰われていく。
「……はぁ、はぁ『暴食の鎧』」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体が強張り、一瞬だけ硬直する。
「ぃ、ぃぁ……ぐはっ!!」
威圧か、と俺が口にしようとした瞬間、ハルバードの横凪ぎを食らい、俺の体が吹き飛ぶ。
体感だが、今の吸収でMPは半分ほど奪われただろう。
「すまないな、レト。鎧頼りの戦い型で」
「はは……あはははっ! いいねいいね。この前のとは違う。面白い」
楽しくなって来た。久しぶりに本気の魔法でも披露しよう。
「第二課題」
延いては風魔法に続く、タシューさんからの二つ目の課題。
「『我が君臨せし大いなる大地よ・その欠片を我が腕とし、脚とし、体に出来る事を請う――』」
「……っ!」
和樹は俺が詠唱していることに気付き、俺を追撃しようと、ハルバードを薙いで来る。が、俺は止まらない。
風魔法の課題……エア・プロテクト、バーストでタシューさんのハードルが上がったらしく、何度もやり直しを食らった事から一番苦労した課題。尚、これのお陰で次も苦労したのだが。
俺は残り少ないMPを回復させる為、昨日和樹から貰ったポーションを取りだし、口に含む。
「ぷはっ……『そして、針とし、壁とし、剣とし、盾とし、我を守る騎士として君臨させる・アース・エレメント・ゴーレム』……!」
十四重詠唱魔法アース・エレメントゴーレム。
俺がその詠唱を終えると、ゴゴゴゴッという地響きが辺りに響き、俺と和樹の間の地面がパックリと割れる。そこから迫り上がるように出てきたのは四、五メートルはある土の人形。
それは自立して動き、和樹に迫る。
ゴーレムは右腕を変形させ剣の形を作り、切りつける……剣も軽く二メートルはあるだろうから、切るのではなく、潰すという方が合っている気もするが。
和樹はそれを紙一重で交わし続けるが、少しずつゴーレムに押されている。
ゴーレムは更に左手を地面につけ、和樹の左右と後方に土壁を出して退路を絶つ。
和樹は残った逃げ道、即ちゴーレムへの突撃をすぐさま行おうとするが、ゴーレムの体は既に盾となり、壁に同化している。そして最後。
四方を完全に囲まれた和樹に襲い掛かるのは土の壁から次々と飛び出す針。その一つ一つは細い。体に刺さっても身を捩ればポキッと折れてしまう。だが、一度に二本、三本と刺さるうちに動けなくなる。
「……降参だ」
俺が聞がこえない程小声でポツリと言ったのか、結界が解除され、ロイルと先生が近づいて来る。
「アルトレア、解除しろ」
と、先生が言いながらMPポーション瓶を渡してくる。
俺は言われる通りに魔法を解除する。
「ひぇっ……!」
針による支えを失った和樹は前のめりに倒れ混む。
「ほぅ、これは……テリス」
「は、はぃ……」
和樹は死んでないから大丈夫。血溜まりは出来てるけど、動かないけど、多分大丈夫です。はい。
「レ、レト君?」
少ししてからロイルがこちらを向く。
「なんだ?」
「き、傷口塞いだのに、和樹君が動かないよ?」
「……?」
ロイルだけでなく、先生までこちらを向く。
「ち、違います! ただちょっと痺れてるだけだって。……っとこれこれ」
俺は地面から一つの根っこを引っ張り出す。
「これはザッキロムの根っこと言って、麻痺効果がある根っこで、強力ですが十分程で自然に消えますし、命の危険もありません。……大丈夫、息してます」
俺は改めて心臓や首に刺さっていないか確認して、頷く。
「ならいい。とりあえず、放っておくか」
先生の一言で俺たちは教室に戻った。
「何、忘れてくれてんだよ!?」
しばらくして、和樹がゾンビの様な出で立ちで教室のドアを開ける。
「あ、ゴメン忘れてた……でも、遅かったな」
もう、二十分程の時間が経っているのだが……。
「……何でもない」
そうか。迷ったんだな、和樹。
そんな俺を叫び起こしたのは、言うまでもなくフェーン先生だ。
『ァアルトレアァ!! ……大事な試合の朝に寝坊とは随分肝が太い様だな! 私が学生……更にその日に試合を控えているのならば真っ先に起床し、誰よりも先に試合場で待っておくぞ! とにかく早く迅速に外へ出ろ!』
本当うるさい。凛としていて綺麗な見た目なのだからもう少しおしとやかに怒鳴れば良いのに……いや、怒鳴らないでほしい。
俺は驚いてベッドから落ちた体を起こし、目を擦る。そして伸びをした後、着替え始める。
「寮生活、最初の朝は叫び起こされるって……てか、校内放送で名指しされる気持ちを考えて欲しい……」
いくら生徒が十人未満しかいないSクラスでも羞恥心が小さくなるわけでは無いのだから。
俺はそのまま部屋の窓を開け、外の百メートル程の距離にある試合場まで早足で駆ける。
昨日に引き続き、ハイデ姉妹以外の六人と先生が待機している。
「おはようございます先生。みんなも……あれ? まさか今から試合ですか!?」
俺は軽くみんなに挨拶したあと、魔法で結界が張られている試合場をみて目を見張る。
「ああ。今から、と言ってももう昼前だ。もう皆万全を期している」
万全って言っても元気なのはキューテ位でみんなぐったりしてるんですけど……。
俺の視線を感じたのかキューテが明るい顔で口を開く。
「あたしは寝起きで寮内一周なんて楽勝だ!」
アリスとかロイルとか今にも倒れそうなんだけど……。
「じゃ、そんな訳で、福田とアルトレアは決勝戦だ。早く入れー」
「分かりました。レト、行くぞ?」
なに澄ました顔で行こうとしてるの!?
「ちょ、俺、朝御飯もまだなんですけど……」
「うむ。皆も昼食はまだだ」
確かに、今食べるのなら昼食に入るのだろうが!
「はぁ……分かりましたよ」
俺は和樹と結界内に入る。
尚、朝御飯を諦めたわけではない。非常食の干し芋をアイテムボックスから取りだし、かじる。
甘さは控えめだが歯ごたえがあり、少しは腹の足しになった。
『両者準備は良いか? 決勝戦だ。それなりの準備はテリスがしているし、万が一の時は上を連れて来るから、遠慮、心配等は無しで頑張れ。では……始め!!』
残念。もう一本食べようと思っていたのに……。
俺は無念のうちに干し芋をしまい、まだ固まっている背筋をほぐすため、もう一度伸びをしつつ、改めて辺りを見る。
試合場は約三十メートル四方。下は昨日とは違い、石になっている。
俺が干し芋を食べていたときにアイテムボックスから取り出して、装着したのか、和樹は昨日と同じ戦闘態勢の全身鎧と、槍の先端に斧も着いている……確かハルバードという名前だったような気がする武器を手にゆっくりとこちらに向かって来る。
昨日、レミルに勝って和樹と戦ったドラヴィスには残念だったが、最初の一手で俺は、和樹の勝利を確信した。
それは単なる相性だった。逆にレミルならば勝てたのかも知れない程の。
最初の一手、と言ったが、実は試合はその一手で終わったのだ。
今と同じように和樹はゆっくりと距離を詰める。そこに特大のウォーター・ボールを放ったドラヴィスだったが、和樹はそれを弄ぶ様に鎧の表面を滑らせ、そのままドラヴィスの首元にハルバードを当てたのだ。
まず、騎士に対しての最大の利点であるリーチが活かせないということ、飛ばす様な魔法が使えない事、という制限が掛かった訳である。
「『レジスト・フルアーマー』」
俺は全身にレジストを掛け、鋼鉄の皮膚という鎧を纏う。
「『パワー・腕』」
次に腕を強化し、更に魔力を腕に集中させる。
俺が何もせず、待っている様に見えたのか、和樹が歩みを止めずに話しかけて来る。
「レトは……土のナイフとか創らないのか?」
「ああ。そっち系は消費がエグいからな。それに、本職相手に武器を使うってのもそっちに分がある気がするしな」
「確かに……そうだな」
俺が軽く答えると、自分の武器に目を落とす。
「だから俺は……」
「……かはっ!?」
「これでいい」
その隙を狙い、俺は跳躍して間合いを詰め、鎧を殴る。
パワーで強化した威力に加え、集めた魔力が放たれ、鎧越しに衝撃を与える。レジストした上、痛覚軽減(大)がある為、痛みは無いが、明らか異変が目の前で起こる。
俺が殴った衝撃で鎧が割れたかと思えば、それが逆再生するように直っていく。それと同時に俺の魔力が拳から吸われていく……否、喰われていく。
「……はぁ、はぁ『暴食の鎧』」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体が強張り、一瞬だけ硬直する。
「ぃ、ぃぁ……ぐはっ!!」
威圧か、と俺が口にしようとした瞬間、ハルバードの横凪ぎを食らい、俺の体が吹き飛ぶ。
体感だが、今の吸収でMPは半分ほど奪われただろう。
「すまないな、レト。鎧頼りの戦い型で」
「はは……あはははっ! いいねいいね。この前のとは違う。面白い」
楽しくなって来た。久しぶりに本気の魔法でも披露しよう。
「第二課題」
延いては風魔法に続く、タシューさんからの二つ目の課題。
「『我が君臨せし大いなる大地よ・その欠片を我が腕とし、脚とし、体に出来る事を請う――』」
「……っ!」
和樹は俺が詠唱していることに気付き、俺を追撃しようと、ハルバードを薙いで来る。が、俺は止まらない。
風魔法の課題……エア・プロテクト、バーストでタシューさんのハードルが上がったらしく、何度もやり直しを食らった事から一番苦労した課題。尚、これのお陰で次も苦労したのだが。
俺は残り少ないMPを回復させる為、昨日和樹から貰ったポーションを取りだし、口に含む。
「ぷはっ……『そして、針とし、壁とし、剣とし、盾とし、我を守る騎士として君臨させる・アース・エレメント・ゴーレム』……!」
十四重詠唱魔法アース・エレメントゴーレム。
俺がその詠唱を終えると、ゴゴゴゴッという地響きが辺りに響き、俺と和樹の間の地面がパックリと割れる。そこから迫り上がるように出てきたのは四、五メートルはある土の人形。
それは自立して動き、和樹に迫る。
ゴーレムは右腕を変形させ剣の形を作り、切りつける……剣も軽く二メートルはあるだろうから、切るのではなく、潰すという方が合っている気もするが。
和樹はそれを紙一重で交わし続けるが、少しずつゴーレムに押されている。
ゴーレムは更に左手を地面につけ、和樹の左右と後方に土壁を出して退路を絶つ。
和樹は残った逃げ道、即ちゴーレムへの突撃をすぐさま行おうとするが、ゴーレムの体は既に盾となり、壁に同化している。そして最後。
四方を完全に囲まれた和樹に襲い掛かるのは土の壁から次々と飛び出す針。その一つ一つは細い。体に刺さっても身を捩ればポキッと折れてしまう。だが、一度に二本、三本と刺さるうちに動けなくなる。
「……降参だ」
俺が聞がこえない程小声でポツリと言ったのか、結界が解除され、ロイルと先生が近づいて来る。
「アルトレア、解除しろ」
と、先生が言いながらMPポーション瓶を渡してくる。
俺は言われる通りに魔法を解除する。
「ひぇっ……!」
針による支えを失った和樹は前のめりに倒れ混む。
「ほぅ、これは……テリス」
「は、はぃ……」
和樹は死んでないから大丈夫。血溜まりは出来てるけど、動かないけど、多分大丈夫です。はい。
「レ、レト君?」
少ししてからロイルがこちらを向く。
「なんだ?」
「き、傷口塞いだのに、和樹君が動かないよ?」
「……?」
ロイルだけでなく、先生までこちらを向く。
「ち、違います! ただちょっと痺れてるだけだって。……っとこれこれ」
俺は地面から一つの根っこを引っ張り出す。
「これはザッキロムの根っこと言って、麻痺効果がある根っこで、強力ですが十分程で自然に消えますし、命の危険もありません。……大丈夫、息してます」
俺は改めて心臓や首に刺さっていないか確認して、頷く。
「ならいい。とりあえず、放っておくか」
先生の一言で俺たちは教室に戻った。
「何、忘れてくれてんだよ!?」
しばらくして、和樹がゾンビの様な出で立ちで教室のドアを開ける。
「あ、ゴメン忘れてた……でも、遅かったな」
もう、二十分程の時間が経っているのだが……。
「……何でもない」
そうか。迷ったんだな、和樹。
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