異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!
時間は経ったけど、平穏は続かない!
今、俺は十三歳の誕生日を迎える前日を過ごしていた。
明日は十三歳。俺が初めて自由に魔法を使えるように……。
待ち遠しい。
「何でこんなに時間が進むのが遅いんだ?」
自然の魔力で動く掛け時計を見つめて、俺は首を傾げる。
いつもは気が付けば十五分は経っているのに対して、現在、ベッドの上に寝転がって目を閉じてしばらくして目を開けてを繰り返しても五分しか経っていない。
ふと、
「それは、いつもが忙しいからだよ」
と、心地いい風と共にタシューさんが外から顔を見せる。
「そうですかねー? いつもは楽しいからすぐに時間が経つだけで、忙しくはないと思うんですけどね」
「いやいや、最近は勉強とは別で僕の研究にずっと協力してくれて、ろくに休憩してなかったでしょ?」
言われてみて、ご飯と寝る時以外はずっと魔法の練習をしてた気がする。
でもMP切れすることも無かったから、喉が乾きはすれど疲れないし、水を飲めばそれで潤う。
「疲れないですしねー」
「本当、君のMPは無尽蔵だからね」
因みに、タシューさんにはステータスを見せていない。教会で、他人には見せるなって言われてるし、タシューさんも、「いいや、自分で考えたいから」と、言ってたからだ。
「無尽蔵じゃないですよ。普通ですよ、寧ろHPの方が多い位に。ね」
「あはは、それじゃ君は化け物みたいじゃないか」
「何でMP中心に考えるんですか。逆ですよ、化け物じゃなくて一般人です……?」
ゴトン! と、大きな音がして起き上がる。
父さんの書斎の方からだ。
「珍しい。父さんはいつもは物音一つたてないのに……何かあったのかな?」
「僕が見てくるよ」
と、タシューさんが走って行く。
しばらくすると、今度は窓からではなくドアから顔を出す。
「ちょっと来てくれるかな?」
「何かあったんですか?」
少し焦っているようにも見えるが、それほどまでに大事だったのだろう。
ベッドから降りて部屋を出る。
「来てくれ」
と言われて付いていく。
書斎に連れていかれるかと思ったが違うみたいだ。通りすぎ、先に進む。
向かったのは俺の部屋の反対側。裏庭を挟んでその向こうにある二階への階段だった。
「なんで二階に? 入れないですよ、結界が……」
階段を上り、踊り場にある結界を指すが、タシューさんは、
「ごめん」
とだけ言ってから、素手で結界を切り裂いた。俺は唖然としてしまう。
ドアを開けて中に入るが、異様な数の魔方陣と合わさり、不安になる。
「何があったのか教えて下さい」
と、改めて聞くが、答えずにぶつぶつ言いながら魔方陣を見て回っている。
やがて、一つの魔方陣の前で立ち止まり、こちらを見る。
「君のお母さんに頼まれてね。断れなかった。ごめん」
「何を頼まれたんですか? 一体何が……」
「ごめん」
タシューさんはそう言って魔方陣を起動する。
偶然俺が踏んでいた魔方陣を。
魔方陣から出ようとするが、間に合わなかった。
目の前が真っ暗になる。
最後に見たタシューさんの顔は涙を流していた。
その涙を見て、何となく分かってしまった自分を呪いたい……。
「これじゃ前と逆じゃないか……」
場所は変わり、セルカトブルグ王城。
「ほ、報告いたします!!」
いつもの訓練が終わり、みんなと昼飯を食べていると、ドアをバァン! と、蹴破る勢いで兵士が入って来る。
「なんだ、食事の間に! 不敬なるぞ!」
と、王様が怒鳴る。
みんなは食事と会話の口を止め、兵士に視線を注ぐ。
「ひぃ! す、すみません! し、しかし至急ご報告したい事が……」
兵士はおどおどしながら、王様に顔を向ける。
「なんだ。言ってみろ。内容次第でお前の首は飛ぶぞ」
「はっ! ご報告致します。南東のエルフ族との国境にある、アルトレア辺境伯ご夫妻が.....死亡したとの報告であります!」
「バカな!? 犯人は?」
王様は報告を聞いた途端、顔から血の気が無くなる。
「それらしき人物を特定しましたが、発見したときには既に息はありませんでした!」
「どうかされましたか?」
と、クラスのリーダー格の守島龍正が王様に訊ねるが、王様は魂が抜けたように、戦争とかエルフとか呟いている。
俺の予想だが、国家間の重要人物が殺害されて戦争が起きるとかそんな事だろう。
「至急、貴族どもにその件を検討すると伝え、集めろ……」
「はっ!」
「一体なに……ひっ!」
睨み付けられて思わず息を吸い込んでしまい、変な声を出す守島。
よく見渡して見れば他のみんなも気圧されて、黙ってしまっている。
マントを翻し王様は出ていく。
「だるいなぁ。今はひたすら訓練してステータスを上げる時じゃないのかよ」
俺は小声で言う。が、隣には聞こえていたようで、
「だよな! 面倒とかはごめんだぜ。まだ慣れてねぇっつうのによ」
賛同を得た。流石はおれの盟友、坂田壮児さんだ、よく分かっていらっしゃる。
ここで俺たちが戦争等に参加するとなると、死者……とは言いたくないが、大半が犠牲者となるはずだ。乗り越えれば大きく進歩する事になるだろう。しかしその分リスクが大きい。
誘われる事が無ければいいが……。
忘れるところだった。そういえば、
「壮児、例の件を確かめてくれたか?」
「いや、まだ。でも案の定というか、やっぱり俺たちに情報を握らせたくないらしい。たかが図書室なのに国の財産をしまっている部屋より警備が厳しいとか……」
壮児は、隠密に長けている。ステータス的にも精神的にも。俺たちに配られた[ステータスカード]というものが俺たちの身体能力や特殊な力をステータスとして表示するものを見れば明らかだ。
俊敏、技能の数値が二百を越えているのは置いても、スキル『音量調節』、『気配操作』はチートと褒め称えてもいいと思う。
それを踏まえて俺が依頼しているのは、この国の歴史についてだ。
よくあるだろう、王様が悪役でしたって。それを確認したい。あの王様のスピーチには嘘がある気がするのだ。上手く確認してくれるだろうが……。
「ああ、頼む。でも焦って失敗することは避けてくれ。功績さえあれば、表から堂々と入れるかもしれないからな」
「了解。ところで、このシチュー旨いよな! 何杯でも行けるわ。お前は痩せすぎなんだよ、食え食え」
「あ、ああ」
お前の腹の贅肉だけは信用できそうにないよ、坂田。
一方、王は明日の貴族との対談を控え、自室にいた。
「ふむ。ならばアルトレア辺境伯を襲ったのはほぼ例の如く、貴族の仕業とな?」
ええ……間違いないかと――
「どうすればよいのだろうか?」
貴族内には純血を尊ぶ派閥があると聞き及んでおります。そこをあたって様子見を致しましょう――
「分かった。助言、感謝する」
いえ、勿体なきお言葉――
どこからか声のする、影と共に……。
明日は十三歳。俺が初めて自由に魔法を使えるように……。
待ち遠しい。
「何でこんなに時間が進むのが遅いんだ?」
自然の魔力で動く掛け時計を見つめて、俺は首を傾げる。
いつもは気が付けば十五分は経っているのに対して、現在、ベッドの上に寝転がって目を閉じてしばらくして目を開けてを繰り返しても五分しか経っていない。
ふと、
「それは、いつもが忙しいからだよ」
と、心地いい風と共にタシューさんが外から顔を見せる。
「そうですかねー? いつもは楽しいからすぐに時間が経つだけで、忙しくはないと思うんですけどね」
「いやいや、最近は勉強とは別で僕の研究にずっと協力してくれて、ろくに休憩してなかったでしょ?」
言われてみて、ご飯と寝る時以外はずっと魔法の練習をしてた気がする。
でもMP切れすることも無かったから、喉が乾きはすれど疲れないし、水を飲めばそれで潤う。
「疲れないですしねー」
「本当、君のMPは無尽蔵だからね」
因みに、タシューさんにはステータスを見せていない。教会で、他人には見せるなって言われてるし、タシューさんも、「いいや、自分で考えたいから」と、言ってたからだ。
「無尽蔵じゃないですよ。普通ですよ、寧ろHPの方が多い位に。ね」
「あはは、それじゃ君は化け物みたいじゃないか」
「何でMP中心に考えるんですか。逆ですよ、化け物じゃなくて一般人です……?」
ゴトン! と、大きな音がして起き上がる。
父さんの書斎の方からだ。
「珍しい。父さんはいつもは物音一つたてないのに……何かあったのかな?」
「僕が見てくるよ」
と、タシューさんが走って行く。
しばらくすると、今度は窓からではなくドアから顔を出す。
「ちょっと来てくれるかな?」
「何かあったんですか?」
少し焦っているようにも見えるが、それほどまでに大事だったのだろう。
ベッドから降りて部屋を出る。
「来てくれ」
と言われて付いていく。
書斎に連れていかれるかと思ったが違うみたいだ。通りすぎ、先に進む。
向かったのは俺の部屋の反対側。裏庭を挟んでその向こうにある二階への階段だった。
「なんで二階に? 入れないですよ、結界が……」
階段を上り、踊り場にある結界を指すが、タシューさんは、
「ごめん」
とだけ言ってから、素手で結界を切り裂いた。俺は唖然としてしまう。
ドアを開けて中に入るが、異様な数の魔方陣と合わさり、不安になる。
「何があったのか教えて下さい」
と、改めて聞くが、答えずにぶつぶつ言いながら魔方陣を見て回っている。
やがて、一つの魔方陣の前で立ち止まり、こちらを見る。
「君のお母さんに頼まれてね。断れなかった。ごめん」
「何を頼まれたんですか? 一体何が……」
「ごめん」
タシューさんはそう言って魔方陣を起動する。
偶然俺が踏んでいた魔方陣を。
魔方陣から出ようとするが、間に合わなかった。
目の前が真っ暗になる。
最後に見たタシューさんの顔は涙を流していた。
その涙を見て、何となく分かってしまった自分を呪いたい……。
「これじゃ前と逆じゃないか……」
場所は変わり、セルカトブルグ王城。
「ほ、報告いたします!!」
いつもの訓練が終わり、みんなと昼飯を食べていると、ドアをバァン! と、蹴破る勢いで兵士が入って来る。
「なんだ、食事の間に! 不敬なるぞ!」
と、王様が怒鳴る。
みんなは食事と会話の口を止め、兵士に視線を注ぐ。
「ひぃ! す、すみません! し、しかし至急ご報告したい事が……」
兵士はおどおどしながら、王様に顔を向ける。
「なんだ。言ってみろ。内容次第でお前の首は飛ぶぞ」
「はっ! ご報告致します。南東のエルフ族との国境にある、アルトレア辺境伯ご夫妻が.....死亡したとの報告であります!」
「バカな!? 犯人は?」
王様は報告を聞いた途端、顔から血の気が無くなる。
「それらしき人物を特定しましたが、発見したときには既に息はありませんでした!」
「どうかされましたか?」
と、クラスのリーダー格の守島龍正が王様に訊ねるが、王様は魂が抜けたように、戦争とかエルフとか呟いている。
俺の予想だが、国家間の重要人物が殺害されて戦争が起きるとかそんな事だろう。
「至急、貴族どもにその件を検討すると伝え、集めろ……」
「はっ!」
「一体なに……ひっ!」
睨み付けられて思わず息を吸い込んでしまい、変な声を出す守島。
よく見渡して見れば他のみんなも気圧されて、黙ってしまっている。
マントを翻し王様は出ていく。
「だるいなぁ。今はひたすら訓練してステータスを上げる時じゃないのかよ」
俺は小声で言う。が、隣には聞こえていたようで、
「だよな! 面倒とかはごめんだぜ。まだ慣れてねぇっつうのによ」
賛同を得た。流石はおれの盟友、坂田壮児さんだ、よく分かっていらっしゃる。
ここで俺たちが戦争等に参加するとなると、死者……とは言いたくないが、大半が犠牲者となるはずだ。乗り越えれば大きく進歩する事になるだろう。しかしその分リスクが大きい。
誘われる事が無ければいいが……。
忘れるところだった。そういえば、
「壮児、例の件を確かめてくれたか?」
「いや、まだ。でも案の定というか、やっぱり俺たちに情報を握らせたくないらしい。たかが図書室なのに国の財産をしまっている部屋より警備が厳しいとか……」
壮児は、隠密に長けている。ステータス的にも精神的にも。俺たちに配られた[ステータスカード]というものが俺たちの身体能力や特殊な力をステータスとして表示するものを見れば明らかだ。
俊敏、技能の数値が二百を越えているのは置いても、スキル『音量調節』、『気配操作』はチートと褒め称えてもいいと思う。
それを踏まえて俺が依頼しているのは、この国の歴史についてだ。
よくあるだろう、王様が悪役でしたって。それを確認したい。あの王様のスピーチには嘘がある気がするのだ。上手く確認してくれるだろうが……。
「ああ、頼む。でも焦って失敗することは避けてくれ。功績さえあれば、表から堂々と入れるかもしれないからな」
「了解。ところで、このシチュー旨いよな! 何杯でも行けるわ。お前は痩せすぎなんだよ、食え食え」
「あ、ああ」
お前の腹の贅肉だけは信用できそうにないよ、坂田。
一方、王は明日の貴族との対談を控え、自室にいた。
「ふむ。ならばアルトレア辺境伯を襲ったのはほぼ例の如く、貴族の仕業とな?」
ええ……間違いないかと――
「どうすればよいのだろうか?」
貴族内には純血を尊ぶ派閥があると聞き及んでおります。そこをあたって様子見を致しましょう――
「分かった。助言、感謝する」
いえ、勿体なきお言葉――
どこからか声のする、影と共に……。
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