異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

新しくステータスを貰ったけど、努力は報われる!

 「は?」


 思わず、声が出てしまった。


 「あら、どうかしたの? レト」


 「い、今、あの神父さんがステータスを配るって言わなかった……?」


 空耳と思いたくて、母さんに聞く。


 「ええ、言っていたけどどうかしたの? 私、言ってなかったかしら?」


 「言ってなかった!! はぁ、俺の三年間の努力が……」


 「三年がどうかしたの?」


 「何でも……はぁ」


 なんだろう、ワクワクしてたせいで、より大きな絶望が飛びかかって来た気がする。
 しかし! 俺はまだ諦めてない、なんにせよパワーアップに繋がるのだから、三年間の努力がここで実ったと思えばいいのだ。


 おっと、聞き逃さない様にしないとな。


 「王都では毎年、このステータス授与の場に偉大なる王がご来賓されるのだが、今年は諸事情で、お越しいただけないとの事でしたので、代理として、第二王子のエルルト様に代理ではありますが、祝福の言葉を……」


と、神父さんが紹介を締めくくり、場を譲ろうとしたとき……。


 「ええい! 遅い! 遅いぞ平民。さっさと我に喋らせろ!」


 と、壇上の椅子から立ち上がり、神父さんを突き飛ばし、置かれている教壇に、バンッ! と手をつき喋り出した。半数から睨まれているが、そんなことはお構いなしにペラペラと、俺ら、授与組に対して、バカだアホだ協調性がないうざい出ていけ等と、盛大にブーメランな罵声を浴びせたあとに、


 「今年は、俺も受ける。つまりは、この中で一番強いのは俺だ!」


 と、自分からブーメランに当たりに行って、さらには未だに立ち上がれてすらない神父を笑っていた人達からも怒りを買い、悠々自適に椅子に戻って足を組む。


 正直、殴ろうかとも思える瞬間があったのだが、もうここまで来ると、殺s……ゲフン! 清々しくなって来る。
 俺と同じことを思ったであろう、この場にいる全員も、殴りたくても王子という事で自分の命を大事そうに行動を起こすものは居ない。睨み付けている位で留まっている。


 「さ、さて、ではこれより今年度のステータス授与式を行います。魔方陣を展開させていただきますので、保護者の方々は、ご退室願います」


 母さんもそそくさと出ていくのだが、「はぁ」とため息を発する。
 あいつのこと何か知っているのかもしれない。あとで聞いてみる事にしよう。


 神父さんがなにやら小声でボソボソとしているかと思えばそばに置いてあった水瓶に入っている液体を床にぶちまけた。
 思わず後ずさってしまうが、その液体は一瞬固まり、止まったかと思えば今度は規則的に広がり、人がいる所は避けて全体に広がる。それに囲まれると身動きがとれなくなってしまう。おそらくは間違って液体を踏まない様にするためだろう。


 やがて液体は網のようになり、光を放つようになった。それは少しずつ強くなり、やがて視界全体を覆う……。


 心臓に熱い鉄を押し付けられるような痛みが走る。


 「っ!――――」






























 光が小さくなっても痛みは消えず、倒れるのを堪えながら、ぎゅっと目を瞑る。


 「は? なんだお前。死にたいのか? クズ!」


 エルルトとか言う王子の声がして目を開ける。王子はこっちを見ていた。


 「何ですか、自分が何か?」


 「違う! 何で……


 辺りを見回して見ると他の子供は皆地面に伏してうめき声を出したり、完全に意識を手放している。
 (確かに痛かったけど、倒れるほどだったか?)


 「せっかく頑固な姉上を説得して一時的とはいえ痛覚遮断の秘薬を使ったと言うのに……何で俺と同じ目線で立つのだ!」


 「知りませんけど……」




 すると、いつの間にか別の扉から奥の部屋に行っていた神父さんが戻ってきて、


 「おお! 今年はもう二人も回復しているではありませんか! 流石は王子。やはり回復力が違いますな。そちらの君も頑張ったね、お疲れ様。説明は全体でしたいので、奥の部屋に行っといてもらえると助かります」


 そう優しく微笑んで俺とエルルトは奥の部屋に進む。少しずつ人が増えるが、構わず俺に怒鳴って来る王子……疲れないのか?


 やがて最後の一人と共に神父さんが入って来る。


 「ふん! 覚えてろ」


 と、悪役が吐き捨てるような感じに俺から離れて行く。


 「では皆さん、これから君達の腕となって機能する、一つの魔法についての説明を始めます。ここからは、個人の情報なので一人一人、障壁を張りますので、少し間隔を開けて……そうそう、それでお願いします『ライトウォール』」


 周りに光の壁のようなものができる。外の様子は見えなくなっている。ポンッと音がして、耳のそばに声が聞こえる。


 『聞こえていますね? では簡単に説明させていただきますのでよく聞いておいてください。
ステータスと唱えると目の前に……人によって色は違いますが、透明な板のようなものが出てきます。このステータスは行動から身体への影響、反対もしかりなのですが、数値化すると同時に活性化も……簡単に言えばこれがないと魔法が使えなかったり、効率的に体を鍛えることが出来ません。つぎに、これは個人情報です。家族でもあまり見せてはいけないのですが、ステータスを使った魔法具があり、簡易的にステータスを表示するのですが、見られたくないスキルなどは、そこに触れ、操作してください。では今から五分の間、設定と確認の時間を設けるので、各自、開いてください』


 「……よし、なんとなく分かった。つまりは、ここに……『ステータス』!」




 ――――――――――


 性:アルトレア 名:レト 年齢 5


 HP 260/300 MP 50/50


 体力 70
 筋力 60
 魔力 130
 敏捷 40
 技能 80
 物理耐性 240
 魔法耐性 20


 スキル  自動HP回復(小)・痛覚軽減(大)


 固有魔法 魔力操作(使用魔力量軽減(特大)・パワー・レジスト)・強欲の書・討伐の書


 称号 転生者 




 ――――――――――


 おお! 見たことあるやつだ。上から見ていって最初に目についたのは、スキルと固有魔法だ。スキルの『自動HP回復(小)』や、固有魔法の『魔力操作』は絶対、修行の成果だ。ヤバい、涙が出てきそう! でもまぁしかし。


「やっぱりか……本……ここにあったんだな。HP類は比較対照が無いため、置いておくとしても、本と称号は隠しておこう。もう一つの本も気になるが、今は堪えて隠蔽作業に集中しなければ……っとこの『魔力操作』ってスキルも隠しておこう。問題は、HP類だけどどうしようか……」


「そこまでといたしましょう! では障壁を解きますね……ふう。では、親御様を呼んでくるとしましょう。少し、待っていて下さい」


 そう言って神父さんは俺らの入ってきた扉から出ていった。となるとやはり……。


 「おい! そこの平民! お前のステータスを見せろ!」


 当然、うるさい奴が寄ってくる。どうしたものか……。


 「はっ! 俺に負けるのが怖いのか? 俺は怖くないぞ、ほら見せてやる。ありがたくおも……」


 「ありがとう!」


 これには流石に感謝だな。ありがたく見させて頂こう。


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名:エルルト 性:セルカトブルド


HP 160/200 MP 250/250


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 ふむふむ。なるほど、この部分だけを見せられるなら大丈夫そうだな。そしてHPが減っているのはさっきの痛みのせいだろう。


 「俺のはこんな感じです」


 と、HPとMPのところだけに設定して見せる


 「ふっ! 単なる壁役のステータスだな。HPは少しあるようだが、MPがこれじゃあお前には魔法なんて一生使えないな」


 と、挑発してきたので言い返そうとしたが、神父さんが来てそのまま母さんの所につれていかれて、解散となった。


俺と母さんは、また魔方陣で帰ったのだった。
 

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