悪魔の居る世界で  傲慢な男

AAA

悪魔の居る世界で  傲慢な男

 ガタン……ガタンと音をならしながら、馬車が動く。


 商人と思わしき人物は荷台の前に舵をとり、荷台の方には一人の男が寝ている。


 寝ている男のそばには小さいネズミがうろちょろと動き。荷台の小さい袋のなかにはいる。


 少したつと赤い果実が小さい袋から現れ、すぐ後にネズミも出てくる。


 コロコロと転がる果実が荷台の端までいき、ネズミは止まった果実を齧る。


 そうやって果実が半分になった程度で舵をしている男が声をあげる。


 男「魔物だ。魔物がでたぞ」


 その言葉に反応したのかネズミが荷台の男に向かう。


 先ほど果実を追いかけてるよりも早くネズミが動き。すぐに男の足から移動していき顔の前までつく。男の顔で走り回るも男の起きる気配はない。


 男「おい、おい」


 舵の男が大声で後ろを確認するが、後ろの男は


 寝てる男「スピー」


 と寝息をたてている。


 男「まだかよ、あぁ」


 ガタンと言う音からガタガタと常時荷台が揺れる。


 その揺れからか、ネズミが男でピョンピョンと跳ね回り。


 寝てた男「うっ、いってーななんだよ」


 男「魔物だ、魔物が出た」


 前の男の言葉が聞こえたのか、起きた男の行動は周囲を見渡す。


 すると後ろから迫って来ている魔物と目が合う。


 男はため息を吐き。


 寝起き男「はぁ、朝からきついわ」


 といい、そばにある剣を持ち。魔物と退治する。


 男の体はどんどんと変化していく。肌色の皮膚が黒く、やせ形だった体型は筋肉がつき、それに合わせるかのように剣も太く長くなる。


 そうして、男の変化した後、荷台の端へといく。男の目の前には、今のっている荷台と同じような魔物が一匹。


 その毛は青く光、その瞳は赤く輝きその鼻息は目の前まで迫った男にあたり。その牙で食べてしまおうかと半開きにしている。


 終わりは一瞬だった。寝起きの男だった人物は、口を開けて迫っていく魔物に突っ込み剣を振る。


 グチャっという音と、ギイィーーという骨を斬る音が辺りに響きわたる。


 その音が聞こえたのか馬車は止まり。舵をとっていた男は後ろに向き魔物の死骸とそこに倒れこむ男に向かう。


 倒れこんだ男の付近には、黒い液体がとけだしており。それをペロペロとネズミが舐めている。


 男「おい、あんた」


 ネズミ「あぁ大丈夫、いつものことだから」


 あまりの驚きに男はキョロキョロと見渡す。


 ネズミ「ここだよここ」


 男はようやく、声の主であるネズミに気づく。


 ネズミ「やぁ、彼が悪魔に成ったときだけ喋れる。まぁ彼の契約者かな僕は、まぁ今は彼よりあれを解体した方がいいんじゃないの。保存が良ければ今なら結構な金になると思うけど」


 男はちらりと左右を見る。男の左右にはきれいに真っ二つになった魔物がある。


 ネズミ「魔物は悪魔つきに高く売れるからね、そろそろ消えるかも知れないし早めにとった方がいいんじゃないかな。解体道具がなければ、そこにある剣や僕たちの持ち物の手袋を使えば簡単にとれるよ」


 男は倒れこむ男を素通りし、真っ二つになった魔物をさらに解体する。


 ネズミ「ふふ」


 その様子を見たネズミは笑い、倒れこんだ男の前にいく。


 ネズミ「馴染め馴染め、最強になるために」


 倒れた男の周囲にはもう黒い液体はなく赤い液体だけが残っていた。


 そうして、何時間たっただろうか。男も満足し荷台に乾いた男を投げ捨て喋らなくなったネズミを連れ、先を目指す。




 ……


 カタカタ と音がなる。その周りは舗装されており、振動も魔物と出会った道よりはるかに平坦になっている。


 男「おーい、そろそろつくぞ」


 赤く変色した服を来た男はグゥグゥと寝ている。


 服の胸ポケットから、ネズミが出てくる。魔物のとき同様、男の顔で走り回る。


 寝てた男「あー、うっとうしい」


 寝てた男は、ネズミを払い除けようとするがネズミは器用に交わし、手に乗ったり顔に落ち来たりと男の攻撃を回避する。


 そうして、ネズミのかわした手が男の顔に当たり。


 寝てた男「いってー」


 と飛び上がる。


 ネズミは起きた男を確認すると、胸ポケットに戻る。


 男「おい、この駄ネズミ」


 胸に戻ったネズミを、男は掴み、顔の前にやる。


 寝てた男「お前はまともに起こせないのか?」


 男「荷台で爆睡してる兄ちゃんを起こしてくれるんだ。そのネズミ……悪魔? はいいやつだぜ」


 寝てた男は馬車の方に振り向き。


 寝てた男「あぁ、んなこと……」


 起きた男が振り向いた先には、大きな門がある都市が見えている。


 寝てた男「……」


 男「中々おおきいでしょ。そこそこでかい都市なんだよここは」


 門の前まで行き。男が門番の前に行く。


 幾つかのやりとりの後。


 門番「後ろの男、降りてこい」


 男は気だるそうに、荷台から降りるが足を滑らせ落ちてしまう。


 寝てた男「いて」


 尻を叩き地面に落ちてできた汚れを落とす。


 その男を尻目に、胸からネズミが飛び出し肩に乗る。


 門番「身分証明書は?」


 男は内ポケットから身分証明書を出す。


 男の身分証明書は皮のホルダーに青いカードが入っている。カードにはソロ・エラーという名前、悪魔飼い、そして上部の☆の中に傲慢の文字。


 門番「……」


 門番はそれをまじまじと見。何も言わないまま門を開けた。


 ソロ「じゃあ、もう少し寝てるから」


 そういい傲慢な男は荷台の中に戻る。


 門番「傲慢なんて良く雇えたな」


 門番は男にそう聞く、その言葉は素直に賞賛に聞こえたのか男は雇った理由を話してくる。


 男「どうやら聖王国を目指してるみたいで、そこに行くルートはなるべく安く請け負ってくれるみたいで……有名らしいですよ【自殺志願の悪魔】は」


 その言葉に門番も反応する。


 門番「あぁ、わざわざ殺されれに行くデビルバスターか。確かに何人か見たことはあったな」


 男「でも彼は死にに行くようには見えないんですねぇ」


 門番「なら殺しに行くんじゃなにのか、どちらにせよ最大の軍事国家にわざわざ餌付きで行くんだ。碌なもんじゃないんだろうな」


 男「はは、そうですね。では熟睡されると起こすのが大変なので、そろそろ先に行きますね」


 門番「気をつけろよ」


 やりとりが終わり、男が馬車に戻る。


 ソロ「ちっ、チョロチョロと動くな」


 ソロが起きてることに男は気づき、笑いながら門をくぐり都市に入る。


 大きな店が見えてきたところで、馬車を馬小屋に止め。男が店内へと入る。


 男が店内に入ると、何処からか男達が現れ、荷台の荷物を盗もうとするが。


 ソロ「あっ」


 と青い身分証を見せながらガンをかけるソロを見て、幾ばくかの金を置き逃げて行った。


 そんなやりとりが何度かあった後。男が身なりの良い男性と出てきて。荷台に上がってくる。


 ソロ「あっ」


 身なりの良い男性「ひぃ」


 と若干声をうわずる。


 男「驚かせないでください」


 後から、きた男の顔を見て。


 ソロ「あぁ、ちゃんとしたのか」


 男「ちゃんとって……あぁ襲撃がありましたか」


 ソロ「金おいて帰ってたけどな」


 男がソロの周りを見れば周囲には金が置かれていた。


 ソロ「それで、もういいのか」


 男「はい、ありがとうございました」


 男はソロに荷台にある1つの袋を渡す。


 男「それとあなたにも」


 ソロの胸ポケットに小さい果実が入れられる


 ネズミ「キュゥー」


 ソロの胸ポケットの中が激しく動くのが見える。


 ソロ「暴れるな、オロチ」


 ネズミは顔だけ出し口に果実であろう何かを含みながら男を見ていた。


 ソロ「んじゃあな、またあっちに行くことになったらよろしくな」


 そういいソロは移動していった。






 ……


 ソロ「ここか」


 ソロの目の前には地下に続く道がある。隣には変なお婆さんが小さな部屋に入って周囲を見ている。


 婆さん「身分証は?」


 ソロは青い身分証を見せる。


 婆さん「……傲慢ね、さっき馬鹿が2人は行ったから。むかついたら潰してくれよ」


 ソロ「……」


 ソロは何も話さず地下に降りていく。


 トントントンと階段を下りる音が響く。最下層につきソロはドアを開ける。


 ???「あなた方に良心はないのか」


 ???「悪魔になに期待してんだお前らは」


 ドアを開けた先は鎧を纏った女と柄の悪い男の口喧嘩であった。


 ???「そんなに助けたいなら助けたらいいだろ。聖騎士さん。おっと悪魔にトドメを刺したら悪魔になっちまうんだっけ」


 聖騎士「貴様」


 喧嘩している男を余所にソロは店主に先に挨拶に行く。


 カウンター越しにいる女店主の前に来たソロは店主の前に袋を置き。


 ソロ「周辺の情報と後、換金と飯を頼む」


 女店主の首には色欲と書かれた紫の身分証明書が見える。


 女店主「あらいい男じゃないか。どぉ今夜一晩」


 そう言う女店主にたいし。


 ソロ「……情報と旨い飯。後酒、お前の奢りで」


 女店主「あらら、屈服させようと思ったのにねぇ」


 ソロはカウンターの席に座り飯を待つ。


 聖騎士「何よ、この悪魔」


 ???「あぁ、だから悪魔のたまり場にここは。そんなゴミ見たいな依頼ならちゃんとした所で受けてこいよ」


 聖騎士「上にも言ったわよ。けど無理だったのよ……。そんな危険な物は受けられないって」


 ???「んなもんこっちも一緒だろ」


 聖騎士「はぁ、あんたら見たいな屑共なんて命なんて価値ないでしょ」


 その言葉に周りいた多くの同類が反応した。


 ???「お前、立場わかって言ってる。俺ら請負者、お前依頼者」


 聖騎士「だから、ただで餌を狩らせてあげるんだから黙ってついてくれば良いんじゃない何が嫌なの」


 ???「お前何か勘違いしてないか」


 聖騎士「はぁ、なによ何が嫌なのよ」


 ???「それを受けるのは土色の怠惰だけだ。あいつらは何もしないのが理由だからそいつらなら受けるだろうな。まぁ依存されるがな」


 聖騎士「はぁ?」


 さっきの発言で静まりかえったのかただ口喧嘩した2人の声だけが響く。


 ソロの前では女主人がトントンと机に音を立て。ソロの前には腹が膨れそうなボリュームのある料理と黄色に輝く水が置かれる。


 ソロ「頂きます」


 ソロが飯を食う中、話は続く。


 ???「報酬が見合ってないんだよ、怠惰ならそれでいい。嫉妬ならお前の長所を捧げればいける。まぁ今回ならこの場で嬢ちゃんと一緒に持ち物全部明け渡して全裸にでもなって土下座すればいけるんじゃねぇの」


 ???「なら受けてやるよ」


 ケラケラと奥から笑い声がする。


 聖騎士「この」


 ???「おっそれなら、お前ら2人を捧げれば色欲ならいけんじゃないか。どっちもそれなりの上玉だし」


 ???「おいおい、数が足んねぇよ」


 ???「せめて2桁は行かないとな」


 ???「村の女の半分とかでいいんじゃないか」


 そこでまた笑いが起こる。その言葉でなにかのことせんに触れたのか。


 聖騎士「この下朗ども」


 と聖騎士が武器を抜く。


 女店主「あら、やり過ぎたみたいね。止めてくるわ」


 ソロ「行く前に依頼書を置いてけ」


 女店主「はいはーい」


 女店主は、食べ終わった食事を片付け。そこに何枚かの紙が置かれる。


 ソロ「少なくないか」


 とソロは女店主に聞いた。


 女店主「今聞いてる通り立て込んでいるのよ、あれが終われば増えるんだけどね」


 そういい、女店主は仲裁に入っていく。


 ソロは飲みかけの酒を飲みながら、注文書に目をやる。


 女店主「はいはーい、そこまでよ」


 聖騎士「店主、そこをどけ」


 聖騎士の威圧をものともせず。聖騎士の前まで行き。


 女店主「おいたは、だ・め・よ」


 と聖騎士の体に手を触れる。


 聖騎士「なっ」


 すると聖騎士は膝をついてしまう。


 ???「店主のタッチが決まったー」


 ???「店主ー、俺だー、骨抜きにしてくれー」


 女店主「はいはい、仕事が終わったらね」


 必死に体を動かそうとする、聖騎士をよそに。


 女店主「それでぇ、結局これを受けてくれるかっこいい悪魔様はいないのぉ」


 と女店主を聞く。


 ???「いくら店主の頼みでもこんな屑の依頼はなぁ」


 ???「背後から不意打ちで殺されそうだしなぁ」


 聖騎士「誰……グッ」


 発言しそうな聖騎士に女店主は自分の足を突っ込み口をふさぐ。


 女店主「お口チャックよぉ。そ・れ・と・も。骨にされたいの?」


 モガモガと何かを言う聖騎士に紫に変色した足が入る。


 女店主「てなわけでどぅ、坊や。この依頼うけない? 紙の一番下の奴なのだけど」


 変異した女店主はソロの方を向く。


 女店主「依頼内容は、村に来た悪魔の駆除。専属もいるみたいね。そして報酬はなんと、10万ベラですって地上では高いみたいだけど。うちだと価値ないわね」


 女騎士「ふごぉ」


 女騎士は何かを喋ろうとするが、足をより突っ込まれ言語にならない。


 女店主「せめてうちに来るなら相場くらいわからないと。ねぇお嬢ちゃん」


 女店主は女騎士の後ろを見る。そこにはまだ垢抜けない少女がいる。


 女店主「怖い? でも駄目よここに来ちゃったんだから、ちゃんと契約して帰らないと……損するだけよ」


 ソロは依頼書を見ながら女店主の方に歩く。


 ソロ「そこの足洗に聞きたいことがある」


 女騎士は反応するが、女店主がそれを許してくれない。


 女店主「ダーメ、ちゃんと契約してからじゃないと」


 女店主がソロの顔を触れようとし、手首ごと斬られる。


 女店主「あら」


 ソロ「悪い、反応してしまった」


 変異した黒い手を見せつけながら。紫の手を女店主に返す。


 女店主「ふふ、なら依頼を受けてもらわないとね」


 女店主は返された手を無くした腕に押さえつける。


 グチョグチョと音をたて数秒後にはもう元通りに戻っていた。


 ソロ「……まぁいい、受けてやる」


 女店主「ありがとう」


 女店主はソロに抱きつく。


 女店主「聞き分けの良い子は好きよ……てあら」


 抱きついた女店主がすぐに離れる。


 女店主「珍しい、まさか」


 ガキンと音がなる。女店主はなにかと見れば、鎧を纏った女騎士とソロがつばぜり合い状態になってる。


 女騎士「殺す」


 ソロ「足は美味しかったかい」


 女騎士「あぁぁぁ」


 と叫び声をあげソロに斬りかかるがいっこうに当たる気配はない。


 オロチ「無駄だ、ソロには勝てない」


 女店主「あら喋れたの?」


 オロチ「期間限定だけどな」


 ふぅふぅと息を荒らげる※女騎士をしり目に何事もないように会話が始まる。


 女店主「そぅ、その彼なんだけど……」


 オロチ「ノーコメントって言いたいけど、まぁこれだけはいってもいいか、いいかソロはな」


 猛攻の女騎士の武器である剣を飛ばす。


 オロチ「負けないけど、終わると気絶しちゃうんだ。だから部屋を頼むな」


 無防備になった女騎士にさらに一撃を与え鎧を砕く。


 女騎士「キャア」


 そして防具も武器もない女騎士に……


 オロチ「おっと」


 一撃を与えようとするが近くにオロチがいくと、急に立ち止まりバタンとたおれこむ。


 オロチ「てなわけで、部屋を頼むよ。ルームサービスに果実がつくと更にいいね」






 ……


 トトト と音が鳴る。


 駅馬車の中には、女騎士のアラ、依頼の少女ヴィタ。何故かついてきた喧嘩した悪魔使いのベット。そして爆睡しているソロ。


 アラは簀巻きにされ、ヴィタはオロチに餌を与え、ベットはニヤニヤと窓の外を見ている。


 アラ「はーなーせー。悪魔飼い」


 簀巻きにされゴロゴロと転がるアラにたいし。


 ベット「悪魔憑きだ悪魔憑き。飼いは後天性、俺先天性、わかる?」


 アラ「んなことはどうでもいいのよ。とりあえずはーなーせー」


 ベット「あぁー、命の危機になったらな」


 なぁなぁtoベット。


 ヴィタ「アラやりすぎ、そもそも私達では無理だからここまできたのに」


 アラ「だからって、そもそもこいつらが」


 ベット「あん、悪魔融合体作って神の子扱いしてる聖騎士が何言ってんだ」


 アラとヴィタがベットの方を見る。


 ベット「というか、そいつ融合体だろ。お前が離れれば問題ないんじゃないか」


 アラ「あんた、何言ってんのよ私達はね、身寄り無いところをあの所の……」


 ベット「あぁ、餌又は実験体及び慰め物だろ。良かったな才能あってなければこいつ見たいに悪魔化だ」


 淡々とベットが話を始める。


 ベット「聖王国は色欲だけはいち早く融合させたからな」


 それにたいしアラは反論を行うが、


 アラ「何を根拠にそんな馬鹿なこと言ってんのよ」


 ベット「身長がとまってんだろ。それは融合した際にそこで止まったんだよ。それぐらいが好きな奴もいるからな」


 その言葉に一瞬アラは苦悶になるが。


 アラ「身長って、普通より小さいだけじゃない」


 ベット「あほか、普通の人間は120で止まらな……あぁお前んと出荷町か。じゃあ証拠隠滅か襲われるのは」


 アラ「出荷町って」


 動きを止め聞きに入るアラ。


 ベット「幾つかあるんだよ、聖王国が実験や人間牧場してる場所が。知ってる権力者は欲しい奴を見つけたら、施設に送りつけ好みになったら融合体にして出荷する。そうやって聖王国の一部は金を稼いでるのさ。まぁ今回は出荷以外で誰かが村から出るか。知らない上の奴が村に来るから証拠隠滅って感じか」


 アラ「そんな、じゃあ私が聖王国に行きたいって行ったから」


 ベット「まぁだいたい、99%それだな。村長とか幾つかの村人は見つからなかっただろ」


 アラ「うっ」


 アラはゴミ捨て用の窓に顔を出し、嘔吐する。


 ベット「やれやれ、やられた本人は我慢してるって言うのに」


 ヴィタ「使われてましたので」


 ベット「……あー、もう終わってるのね」


 ヴィタ「アラは知らないですが、私の方が数十年お姉さんなので」


 ベットはヴィタの方を向き。


 ベット「知ってるよ……見たからな」




 ……


 アラ「落ち着いたわ」


 ベット「そうかそりゃ良かった」


 ヴィタに顔を拭かれながら、アラはベットの方を向く。


 アラ「……他にないの私が知らないこと」


 ベット「んーそうだなぁ。例えば、聖王国の上位連中は全員悪魔飼いだったり。そもそも今のような体の変化をつけたのは聖王国の処置だったり、悪魔飼いは異常分子の排除が目的だったり……きりがないな」


 アラ「なによそれ」


 ソロ「そろそろつくぞ」


 急に割って入るソロにアラは慌てる。


 アラ「あ、あんた」


 簀巻きにされ地面に落ちている


 ソロ「そういうプレイは2人っきりでした方がいいぞ」


 アラ「しーばーらーれーてーるの」


 バタバタと左右に揺れるアラに、ソロは蹴りを当てる。


 アラ「あっ」


 ベット「えげつねぇあっち、若干ゲロが残ってるから移動してきたのに」


 ソロ「それで何か臭ってたのか」


 さらにそこで駅馬車が止まるのでアラは上にジャンプしながら。頭から落ちる。


 男「着いたぞー」


 舵をとった男が後ろの方に入ってくる。


 男「これ以上は……。なにやってんだあんたら」






 ……


 依頼人の町へ着く。アラは簀巻き


 ベット「無人だな」


 ソロ「いや、裏にいるな」


 ???「おやおや、やっときましたか」


 奥からでかい悪魔が出てくる。


 ベット「なんだあの肉塊」


 ヴィタ「意外と速いから驚く」


 肉塊が動く、肉体が変異しても脂肪の部分は変わらないのか。一歩歩くごとに腰から首までが若干波打つ。


 アラ「うわ」


 ヴィタ「間近で見ると気持ち悪い」


 肉塊「そんなこといっていいのですか」


 肉塊の後ろから身長が半分になっただけの肉塊が更に2つ。


 ???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」???「キキキ」


 それに大量の鳴き声が聞こえる。


 ???「お姉……」???「アラ」???「ヴィタちゃ」


 その中の一部からアラやヴィタを呼ぶ声が聞こえる。




 アラ「母さん?」


 ヴィタ「ゼリおばさん?」


 肉塊「貴方たちを待っているのが暇だったからつい。苦労したんですよ。意識を少し残しながら悪魔にするのは」


 アラ「この」


 アラが斬りにかかる。しかし肉塊に着く前にアラと喋る何かが前に立つ。


 ???「アラ」


 アラ「父……さん」


 ???「アラ」


 アラ「母……さん」


 ヴィタ「アラ逃げて」


 アラの母らしき者と父らしき者からアラは動けない。


 肉塊「あぁ、あなたの死はそれが良さそうですね。殺しなさい」


 アラの目の前に居る2つの眷属がアラに襲いかかる。


 アラ「やめてよ」


 ヴィタ「アラ」


 ヴィタは大声で叫ぶ。アラはそれに答えられない。


 アラ「いやぁぁぁ」


 とアラは叫ぶ。


 グシャっと音がする。悪魔、眷属特有の黒い血が飛び散る。


 アラ「あっ」


 その体は黒く、太く、光沢がある。


 片腕には剣が握られもう片腕はもはや手の形はせず。鋭利な何かに変わっている。


 肉塊「おや」


 ソロに大量の眷属が近づく。


 肉塊「おやりなさい」


 眷属がどんどん襲ってくる。それをソロは躊躇せず斬り殺す。黒い液体がなくなった眷属は元の姿に戻る。


 アラ「やめて」


 アラにも黒い血がかかる。


 アラ「やめてよ」


 肌色の体が赤く変色する。服はなくなり、爪は伸び、羽が生える。


 アラ「#%△□」


 アラはソロに襲いかかる。ソロは攻撃をかわし、持ってる剣で一撃を与える。


 アラ「###」


 アラは倒れ込む。


 ヴィタ「アラ」


 ベット「動くな、死ぬぞ」


 アラの元に駆け寄ろうとするヴィタをベットが止める。


 ベット「安心しろ生きてるなぁ、ネズミ」


 オロチ「オロチだ」


 ヴィタ「あなたはなんで」


 ベット「お前と一緒だ。融合体なんだよ俺もまぁ」


 ベットの体が変色する。


 ベット「体に出せないわけじゃないぜ。まぁこれをやっても肉体が強化されるだけだからな」


 先ほどまで持っていた棒を捨て、素手や蹴りで眷属を殺していく。ソロの方とは違いこっちは小さい眷属が多い。


 ヴィタ「あっ」


 とヴィタは目をやる。


 ヴィタ「あっ、あっ、あぁっぁぁぁぁぁぁ」


 ベット「叫んだ所でかわらん。そんなことするなら処理を手伝うかせめて移動できる準備をしろ、間近であいつを見れないだろ」


 ベットの周囲には欠損した眷属が落ちている。


 ベット「はぁ、もうちっと変異種とかいないの」


 ベットの後ろの方には原形をとどめていない眷属がいる。


 ヴィタ「あぁぁぁぁ」


 ヴィタが泣く、アラは気絶し、ベットは沸いてる眷属を処理する。


 そしてソロはただ黙々と眷属を殺しながら。アラを蹴飛ばしベットの方に押し出していく。


 肉塊「面白くないですね」


 ぷるんぷるんと体を振動させながらソロの方へと向かう。


 ベット「おっ、ついに本命か」


 あたりを見渡せば元に戻った村人の死体が大量にあるだけで、生物と呼べる者はもう殆ど居なくなっていた。


 肉塊「まさか、この私ベルン自らが戦うことになるなんて」


 ソロ「そいつを頼む」


 蹴り飛ばして血まみれになったアラをベットに蹴り渡す。


 ベルン「最後のお別れは済んだかい」


 ソロ「雑魚が何か言ってるな」


 ベルンの体の波が速くなる。


 ベルン「私が雑魚ですって」


 ソロ「会話できる程の雑魚だ。森で会った魔物の方が遙かに強いらしいな。最もその豚みたいな腹だけは勝ってたかも知れないが」


 ベルンの波が顔まで届くようになる。


 ベット「あー傲慢だなぁ」


 オロチ「そうさ、あいつは傲慢さ。自分を見下す奴が大っ嫌いの我が儘な奴だ」


 オロチは剣を見る。


 オロチ「あの剣は、あいつの故郷の死んだやつを全部溶かしてできた剣」


 ベット「まるで、見たような言い方だな」


 オロチ「その時に契約したからな、怠惰の才能を生まれながら持っており、憤怒に至り傲慢に混ぜ嫉妬で保管した」


 ベット「その結果があれか」


 ベットはソロに目をやる。


 オロチ「見えているのか」


 ベット「あぁ、死んで体を変えて死んで。そうやって変わってく姿が見える。強欲なんでね。知らない未知の物があるとみたくなるのさ……決まったな」


 ソロがベルンの前に歩いていく。


 ベルン「死ねぇぇ」


 叫びながら振りかざした手は空を切り。ソロの片手が突き刺さる。


 ベルン「こっ」


 ソロ「終わりだ」


 回転し、片腕で切れた先を今度は持っている剣で再度なぞる。


 回転の最中に剣は長くなり回転が終われば真っ二つに切れていた。


 切れた場所から黒い液体が溢れだす。全身をいや全身だけでなく周囲も黒に染めながらソロは倒れる。


 あふれでた黒い液体は全てソロの体に入っていく。


 オロチ「馴染め馴染め、より強く強靭に」


 ベット「ご執心だねぇ」


 オロチ「それが、俺との契約だからな」


 黒い液体がソロに吸収される。にやけ面で見てるオロチにたいし。


 ベット「はぁ、どうすっかなこれ」


 辺りに散らばる惨状を目にベットはため息をついた。






 ……


 ベット「ようやく終わったか」


 ベット1人で村人全員の墓を作る。アラやヴィタは動かずに放心状態だ。


 ベット「労う声もないのか」


 アラ「……ありがと」


 かすれた声でアラが言う。


 ヴィタ「ありがと」


 ベット「おぅ、手伝ってくれたらもっとよかったんだけどな」


 ベットの言葉に、ヴィタやアラは答えない。


 ベット「冗談だ、笑えよ」


 アラ「笑えないわよ」


 顔を下げるアラにたいし、


 ベット「んじゃ、死ぬか。今ならサクッとやれるぞ」


 アラ「慰めはしないんだ」


 ベット「悪魔だぞ、たらし込まないだけありがたいと思え」


 アラ「あんたって、サイッテーね」


 ベット「おっ、依頼場の続きやるか。今なら邪魔もされないぞ」


 ベットはシュッシュと音をたて挑発する。アラは立ち上がり。


 アラ「いいよ、殺せば」


 と無気力な声で言う。


 ベット「ちっ、やめだやめ。こんなのと絡んでも全く面白くない」


 一同が静まりかえる。静寂がなくなったのはガタン ガタンと馬車の音だった。


 男「おーい」


 男が声をかける。


 男「君たちは先に行かないのかい? 彼はもう乗ったけど」


 男はアラ、ヴィタ、ベットに質問する。


 アラ「私は……、彼?」


 ベット「あいつ、居ないと思ったらもう乗ってたのかよ」


 ベットはすぐに後ろの荷台に向かう。


 ベット「せっま、座る場所がねぇじゃねぇか」


 男「ははは、あくまでおまけだからね」


 ベット「おら、小娘共なに呆けてやがる。とっと乗れ」


 ベットの声かけに反応する。しかし反応は2人で違った。


 アラ「乗れって」


 ヴィタ「わかった」


 動かないアラにたいし、ヴィタはそのまま荷台に向かった。


 アラ「ヴィタ!」


 ヴィタ「どうせ行くところもない、ならいけるところまで行ってみたい。ここに居ても何にもならないし」


 ベットがヴィタの手を取り乗っける。


 ヴィタ「ほら、アラも」


 アラ「私は」


 ソロ「うるさい」


 ベット「おっ起きたか」


 ソロは起き上がり、


 ソロ「殴りたくないのか? 俺はむかついたから殴りに行くぞ」


 アラ「殴りに行くって」


 ベット「復讐じゃないのかよ」


 ソロ「復讐?」


 あくびをしながらそれに返答する。


 ソロ「なんでそんなことしなきゃいけない? 俺はあの槍野郎を殴りたいから殴りに行くだけだ」


 アラ「殴りたいからって……」


 アラは笑う。


 アラ「ばっかじゃないの。皆殺しにされたんでしょ」


 ソロ「あぁ、されたな。それがなんだ。俺は死ななかった。だからぶん殴りに行くんだよ」


 ベット「しかも殺しもしないのか」


 男「ちなみにその槍男というのは」


 ソロ「確か……」


 ソロは少し考え込み。


 ソロ「金の槍を持ってたな」


 ベット「あぁ、そいつ上から数えて3番目ぐらいに偉い奴だわ多分。あぁあいつねあいつ」


 ヴィタ「四騎士の1人だっけ。あっ、もう大丈夫ですいっちゃって」


 ヴィタの言葉で馬車が動く。


 アラ「えっちょっと」


 ヴィタ「会話する暇があるなら、もう大丈夫ですね」


 馬車のスピードが上がる。


 アラ「私も乗せなさい。あぁもう」


 アラは羽を生やし。荷台に乗り込む。


 ベット「ひゅー、悪魔化に躊躇なしですか。聖騎士が泣くな」


 アラ「聖騎士なんて、もうどうでもいいわ。私もむかつくから一発殴りに行こうかしら」


 ヴィタ「じゃ、私も散々やられたし一発」


 ベット「なんだなんだ、俺は殴りには行かないぞ。面白そうだからついては行くけどな」


 男「はいはい行きますよ」


 こうして5人は進んでいく。互いの欲を求めて。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品