コネクト  創造する世界

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創造する世界

「さて、まずは。挨拶と包囲をしようか」


 大量の機械兵の真ん中に道を作る、といっても俗に言うムービーのような仕様だから自分の意思では歩けないんだけどな。


『俺達はどちらに』


『裏は取れないから左右に陣取っておけ』


 話せもしないのでチャットでの返信となる。


『了解』


 歩きながら、会話の確認を行う。


 一歩、一歩ぎこちなく歩く。


『やっぱり四本足の調整はきつかった』


『モーション使わない方が動きやすいって気持ち悪いですね』


『自動補正をかけながらやった方が簡単に決まってるだろ』


『はいはい、話し込んでないで定位置に着く』


 ずいぶんお気楽だな……、まぁそれもそうか。


 地の利やその他の有利も全て貰い受けるからな。


『機兵の方針は忘れてないよな』


『最初の数十機でプレイヤーサイドの拠点を自爆した後、包囲をかけて殲滅』


『穴を開けそこには入らないようにして』


『その穴目がけて攻撃を行っていくと』


 まぁ簡単な方法だ。


『そうだ、ついでに暫く指揮メインだ俺以外はあんまり動くなよ』


『そっちこそ指定位置に固定お願いよ』


「どうした、そんな顔をして」


 おっともうイベントが始まったか。


「……」


「おいおい、代表2人は声をだせるようになってるはずだぞ」


 まぁ、パターン1か。


「人間を辞めたな」


 それが最初の台詞か。


「戦闘するならこれの方がいいだろ……おっと」


 さて、うまくやらないとな。


 上空に大きな音が鳴り響く。


「……あぁ見れないのか、今は上も見れないんだよな。ほら向いてみろ」


 全員を上に向かせる。


 そこには白い眼球がこちらを見ている。ただ黒目の部分は薄く、薄気味悪く映る。


 自分は右側の目で上空の目を、左目では地上の状況を見ることができる。両視覚の一致はできない。まぁ狭い領域で2つの画面を見ていると思えばギリギリなんとかなる。


「ボスっぽい演出だろ」


 負担はあくまでわからないように。


『視覚の共有を始める、準備できたか? 』


『戦術室、準備OKよ』


『わたしもいいわ』


 了承を確認し、片目を共有する。最も相手の方は両目での確認となるけれど。


『まるで一昔前のゲーム画面ね』


『昔のゲームも捨てたもんじゃないわよ』


「……それで、これで終わりか」


 会話をしながらのチャットは負担が大きいな。まぁ会話はムービーにしたから、あらかじめ用意したのを喋らせただけだが。


「まぁ、とりあえずは」


 腕を前に出し、何かを発射させる。何かは何かだ。エフェクト48と言えばいいのか、ようは白い何かが手から出たと思ったら、後ろにあるプレイヤー出現システムが破壊されるという。まぁよくあるパターンだな。


「これで、そうポンポンと来れなくなったな」


「参加はできるんだ」


「できるぞ、出現位置がランダムになって、おまけに何が起きるかわからないが」


 それでもいいならどうぞと、悪役っぽく言う。


「回答ありがとう、ついでにこの束縛も解いてくれればいいんだけど」


 あぁ、それは……


「こいつはムービー仕様、一昔前の演出じゃ、ある程度口は動くが他は動かんぞ」


「説明を奪わないでくれませんかねぇ」


「ふん、で包囲には後何分かかるんだ」


 あら、お見通しで。


「何、もうすぐ終わりますよ」


 自分の後ろからキューンという音がなる。


「さて時間も迫ってきたことだし、今回の実験内容の説明をしておきましょうか」


「実験? 」


「一応は【実験室の企画】なのでね。さて今回の実験は【AIは状況による選択はできるのか】【人型以外を人間が使うとどうなるか】この2点だ」


 後ろの音が大きくなる。


「選択だと」


「えぇ、今いる後ろの兵士は全部【壊れたAI】です」


「ふん、それでもそう動くようにすれば十分動かせるだろ」


 その考えは、優等生の回答であって、気狂いの回答ではない。


「いや、我々のAI等もう生きてませんよ」


「では何故、後ろのは動いてる。まさか意思があるとでも」


「意思ですか……そうですね、意思かもしれません」


「馬鹿か、そんなものできるわけがない」


 まぁできているとはいえないな。


「局地的な状況で、何も命じなくても動くように意思を持たすのは簡単だと思うが」


「それをプログラミングというんだ」


「プログラム、そんな限定的なものでどうする」


「なら、どうやって機械に意志を持たせた」


「【自分の心理を学習させた】怒りを、悲しみを、笑いを全て」


「はっ? 」


 実にいい反応だ。


「NPCの好みの物を作り、味覚、嗅覚を共有した。好きな音楽を聴き、聴覚を共有した。好きなおしゃれをして触覚を共有した、思い出の写真を見て、視覚を共有した」


 いつも通り間髪いれず続ける。


「旨さに喜びを、家族の殺された怒りを、残された悲しみを、それでも同じ境遇を持つ仲間との楽しさを共有した」


「どうやってそれをえる」


「使える物はなんでも使う。それだけだ」


 喜と楽と最悪、怒もなんとかなるが、哀だけは難しかった。こっちの記憶を与えるわけにも行かないからな。


「馬鹿な1000を超えてるんだぞ」


「それがどうした」


「見ず知らずの人間でもなくNPCにだぞ」


 「だからなんだ」


 ……、すごいな固定のモーションのなかでそんな表情を出せるのか。


「馬鹿げてる、いや狂ってる」


「知らなかったのか? まぁつまるところ後ろの奴らはそういう事だ。昔の言い方をすれば【生きてるぞ】」


 最も壊れてはいるからな。


「あぁ、勿論。当然のように【精神攻撃は搭載済みだ】まぁ最初はお試しで食らって貰おうか。安心しろ【機械なら感情なんて無いんだろ】ムービー中だから無敵だしな」


 言い終わって数秒後、最初の機兵が爆発する。勿論、金剛達を巻き込んで。


「……、馬鹿な」


 おっ、機械の目にも涙、モーションの中でも涙を流すとはさすが金剛。映り方がわかっている。


「何故……私が泣く」


「感情があるからさ」


「ではなんで、【お主の主観が……感情が入っていないんだ】」


「私が作ったのは最初だけ、貴方が見ているのは最後の記憶。なら私の考えなんて入るわけ無いでしょ」


「しかし、これでは……これではまるで」


【人間ではないか】そう言いたそうだな。


「人間のようですか、まるでわかっていませんね」


「なんだと」


「こんなもの、人とは言えませんよ」


 むしろ人であっては困るんだよ。


「ならばこれはなんだ。何故私が泣く」


「そりゃ、悲しいと認識したからじゃないの」


「それでは人間ではないか」


「いいや違う、人間は【忘れるし】【変化する】こいつらにそんな機構は作っていない」


 他にも色々あるがわかりやすいところで行った方がいいだろう。


「感情はあるんだろ? 」


「犬や猫を人って言うのかよ、生物への冒涜だな」


 強いて言うならば。


「あれは、そうさな? 重度の精神崩壊者に近いかな」


 様々な環境の中で、唯一残った感情。


 この空間に最も多かった感情。


「覚えた感情は簡単に塗りつぶされ侵食されている」


「何を言っている? 」


「なに、プレイヤーがNPCに何かを思うように、NPCもプレイヤーに思ったのさ」


 村を燃やされた奴もいる。村八分にされたやつもいる。


「共感……持っていたんだね」


「塗りつぶされる……感情……共有」


 いつものパターンが始まる。


「ここのプレイヤーの大部分……残骸……抹消……記憶か、【プレイヤーの残骸を利用したな】」


「ご名答、なら指向を持たせたそれがどうなるかもわかるよな」


 爆発した、機兵の周りの残骸が動く。


 それは何かを中心にし残骸が集まり、形をなす。


 その様子をなにも発せずに状況を見守る。


 そうして何事もなかったように機兵が元に戻る。


「まぁサービスだ、受け取ってくれ」


「……」


 言葉は出ないか。


「さてそろそろ包囲も終わったしいい加減始めようか、最後に何か言いたいことある? 」


「化け物め」


「あんまり、言いたくないけど糞だねこれ」


 あぁ、ありがとう。最高の誉め言葉だ。


「さて、遠吠えも終わったところだし開……」


 始まる前に切られる。腕が1つもっていかれる。


「おい……」


 間髪を言わずに2切り目、今度は足の半分が切られる。


 代わりにカウンターを一撃を入れる。それでレギオンの隊長は吹き飛ぶ。


「ゲームーオーバー」


「何を……」


「デイメア……起動」


 体勢を戻す前にまた吹っ飛ばされる。しかし今度はどんどん吹き飛ぶ速さが増していく。


「どうした? 」


 動きが止まると完封勝利確定だぞ。


 切られた腕がもう生えてくる。半分切られた足も戻る。


「早くしないとせっかくの一撃が無駄になるぞ」


 その言葉に何人かは前に出る。


 そうして後ろで詠唱を始める奴らがいる。


『あれの対処は』


『最初ぐらい当たれば』


 酷い奴等だ。


 前に来た三名を簡単に叩き潰す。コンビネーションだろうが、なんだろうが2本の手で守り、2本の手で殴れば無傷で1人は殴られる。


 そもそも気にする攻撃でもない。そもイベントの大ボスだ、そんなやわな防御ではない、回復量もおかしい。まぁステータスなんて確認したことないから実際どれくらい強いのかはわからない。


 キィーンと音がする。音の鳴る方を見れば上空に巨大な魔方陣が見える。


 下を見れば虹色に輝いている、これも魔方陣のような気がする。


 そうして周りは囲まれている。


 移動しようと思えば特攻し、それを繰り返している。


『しゃらくさい』


『我慢しなさい、そっちの方がボスっぽいわよ』


『出番は? 』


「もう少し待ってろ」


 また腕が切れる。今度は何だ。


「あれ、相当先に飛ばしたと思うが」


 どうやって戻ってきたんたが。


 もう一発殴るかと思い、拳を振り上げた時。


 魔法が発動された。


「……鎖」


 上空のは鎖だった。下のは発動しない。


 ガシガシ動いても体は動かない。


 その様子を見て、今が狙い目だと数十人が徒党を組んで攻撃を行う。


「いけーーーー」


 一斉に攻撃をする。そして……


 傷1つつかず全員吹っ飛ばされる。


「はっ? 」


 続いて鎖を壊す事を試みる。


 力……は無理だ、今全力でやってもとけない。


 魔法は……そもそも出せない。


 なら形状変化は……どうやら無理のようだ。


「はぁ」


 なら後は1つしかない。


 刺殺されないうちに何とかしないとな。どうやら敵味方関係なく鎖はぶつかるみたいなので切られはしなくなったが、それでも突きで、攻撃されてしまう。


「そのままやれ」


 鎖を握っている腕も徐々に穴だらけになっていく。


「これで……」


 最後と言わんばかりの鋭いつきがくる。


 そしてこちらの申請もようやく通る。


 申請が通れば簡単だ。透明のウィンドウが現れパズルが映しだされる。それを規定のプログラムではやときする。


 鎖が解除される。束縛がなくなる。同時に……


 渾身の一撃は簡単にカウンターされる。いやカウンターされたように見えるの方がいいか。単純にやったことは、最初に殴った一撃を再度与えただけ。


「まだまだだな」


 体を修復しながらそういう。


 下のはまだまだ発動しそうにない。


「なんだもう終わりか? 」


 戦闘の中心部でそういいはなつ。


「ならそろそろ、こちらも動こうか」


 上腕には銃を、下腕には剣を。背中から後ろには無数の手を作りそこに小さい銃をのせる。


 動くのはピエロ、柄でもなく近距離戦を挑んでくる。


 牽制の銃は、シールドに防がれた。相手の攻撃など回避する必要性すらない。


「同類に対策しないとでも? 」


「ふん」


 次の銃を放つ。相変わらずシールドを張る。


「貴様も同じではないか」


 同じ……いや違うな。


「そろそろ壊れるぞ、そのシールドは」


「ほざけ」


 互いが3発目を放つ。片方は、変わらずに無傷。しかしもう片方は……


 パリンと音がしシールドが破壊される。


「ここは昔のゲームじゃないんだぜ、もう少し確認すべきだったな」


 金剛に銃を向ける。シールドの破壊はそのまま気絶処理に入るから、動けないはずだ。


「じゃあなクラウンクラウン、また次で……」


 また次で、そういい銃が発射される。


 あっけないな。


 不意打ちやギミックを使えなければこんなものなのか……いやあっけなさすぎる。


 そういえば、あいつら【どうやって参加権をもぎ取ったんだっけ】


 金剛の体を銃弾が貫く。


 ニヤァ


 金剛が笑う。


「貴様なら躊躇なくやると思ったよ」


 体の中心が穴が空いても簡単に話しかけてくる。


「なにやったんだ」


「何、【この時の為だけに作っただけだ】」


 わけがわからない。


 一歩下がり解析を……


「ヒョオ」


 あっ、なんだよその速度は。


 対応に少し遅れる。


「ハッハー」


 攻撃が当たる。それと同時に【体が薄れる】


 解析結果が出る。


「頭おかしいんじゃねーの」


 そんな言葉が出てしまう。


「どうだ、鬼札だろう」


 いくらなんでもやりすぎだろと内心思いながら、よくやったとも思っている。


「ワシが死んだら、【アカウント消失】それは確定」


「代わりにプレイ時間の時間を分にした間、行動ができる」


「そして、攻撃した相手は【スキルやレベルのデータを削っていく】」


 勿論一定値以下でアカウント消失と同じ状態になる。


 ダメージではなくデータが嫌らしい。こちらの再生などは一切役に立たない。


『金剛、データ特攻につき危険ランク上昇』


『そっちでひきつけて、こっちも急ピッチでやるから』


 引きつけてるってあんた。


「はぁ」


 武器を持ち、金剛に当てる。


 武器は壊れない。どうやら金剛の攻撃のみに対応するらしい。


「効かんなぁ」


 金剛の攻撃が来る。こっちは剣で防御したら、剣が粉々になる。


「ホラホラ、どうした」


 防戦を良いことに連打がくる。


 こっちは銃をすて、剣で応対する、なるべくタイミングを合わし、相手の攻撃を切るように剣を流す。


 上が壊れたら下へ、右が壊れたら左へ、そうやってなんとか防戦を行う。


「はっはぁ」


 右、下、上、下、左……


 防御に優先する。他の事は考えずに。


 下右、上左、上下……


 だんだんと起動になれてくる。


 下右上、左左下、上上下……


 一歩後ろに下がろうとすれば、一歩前に出て攻勢へと出る。


「くっ」


 逃がすか、今行かれると困るんだ。


「なんだ、何故休めない」


 相手に考える暇など……


 金剛が防戦を辞める。


「どうした」


「なんだ、何がある」


「返答もしないのか」


『まだか』


『まだまだ』


「まだ、何かを……」


 はっと金剛が周囲を見渡す。


「こやつらに何かあるのか」


『どうする』


『まぁ後は私たちに任せな』


 まぁそれしかないし、多分あいつらのことだから恐らく会話をしている時点で。仕掛けはできあがっているとは思うが。


 とりあえず金剛を掴む。考え事もあり簡単に捕まえることができた。


「くっ、離せ」


「やはり攻撃以外は反応しないんだな」


『金剛、攻撃以外は現段階ではデータ破損なし』


『……』


 もう会話も無理か。


「このままギリギリまでいようか」


 後7時間30分このままでも恐らくなんとかなるだろう。


 他の何名かで金剛を外そうとしているが、今この時点で金剛を外す事などほぼありえない。


 そもそも、両手での拘束は人なら両手が使えなくなり。腕を掴めば解除も可能だが。今回は4本の手だ、おまけに腕も人よりも太い。


 ようは簡単に守れるのだ。普段通り、日本の手で相手を対処していけば良い。


 ついでにしたの魔方陣も消してしまおう。


『下の魔方陣消しといて』


 ふっと床から光が消える。消そうと思えば簡単に消せるのだ。


「嘘だろ」


 光が消えた、周りの反応は諦めだった。後はもう終わりを待つだけ、少なくともここ周辺は。もう座り込み戦いを諦めている。


「さて、どうした? 」


 これで終わりなのか? 


 主要2名が動けないだけで止まるのか、そんなものか。


 掴んでいる手が強くなる。ギチギチと音がする。


「その程度で止まってしまうのか」


 一歩、座り込んだ奴に向けて歩きだす。


「……」


 何歩歩いても反応すらない。数歩で届いてしまう。


「はぁ」


 結局この終わりかたなのかと、奮闘とかはせずに最後は諦めて終わりなのかと。


『なんか、もう終わってる感じなんだけど』


『そっちは終わりそうなの? なら手伝って欲しいんだけど』


 おや、あっちでは何かあったのか。


『何か起きた? 』


『足止め候補の1人がこちらに来て妨害してるわ』


 うん、おかしいな? そんな早く目覚めないはずなんだけど。


『というか、あんた本当に大丈夫? 新人がそっちにいったはずだけど』


『新人? 』


『ほらあんたが拾った』


 腕が切られる。抵抗していないわけではない。十二分に力を入れていた。


 それでも、捕まえていた手は切り落とされ。


 切った腕を蹴り飛ばし腹部に入る。


『緑朗って奴よ』


 腕の再生をと考える間に、もう攻撃を仕掛けられる。


 守ろうと武器を構えるが気付けば後ろ足が切られていた。


「おい」


 この合間に何回切られたのか?


 1回2回? いや目に終えるだけで4回は切られている。


 まるで野菜のように簡単にきられていく。


 攻撃を当てようにも、早すぎて捉えられない。


 殴る手が一瞬にして細切れになっていく。


「な」


 言葉を話そうとすれば首が切られる。すかさずデイメアで初期の状態に戻す。


 首から元の体に出たのに驚いたのか、緑郎が一歩引く。


「団長は右側お願い」


 いつやったかわからないが、掴んでいた腕は気づいたら細切れになっていた。


「……」


 一瞬遅くなる。金剛の方が追いついていない。


「もう半分は居なくなった」


「半分? 」


 金剛は上空を見る。


「人は減ってない、いやむしろ……」


「前よりも増えてる……確かにそう見えるしかし実際は」


 おっと、それ以降は言わせない。雑音を流す。


「……」


「……」


 2人がこちらを向く。


「どうした、会話の続きは」


 雑音にかき消せない声で発言をする。


 2人は目配せ、金剛は言われた方面に移動していく。


『そっちに向かったぞ』


『了解、そろそろこっちも動いて良い』


『【消えたらな】』


 また、腕を切断される。足は狙わないんだよなこいつら。


「さて」


 魔法を作る。先に作るのは青、空間の魔法だ。


 再度攻撃がくる。しかし自分にはあたらない。


 青い何かが触れる前にすっと透過してしまう。


 空振りにたいしての反応もはやかった、すぐさま武器をかえ再度こちらに攻撃する。


 それでもなお攻撃は届かない。


「馬鹿な」


「さて、少し話をしようか」


「またお得意の時間稼ぎか」


「なに、時間の浪費は上の特権だろ」


 次の色を作りながら説明していく。


「まずはじめにたった今囲んだこの空間なんだが」


 相手が周囲を確認しそこでようやく青い何かに囲まれていることがわかる。


「それに関してはまず、空間魔法について話さないといけない」


 ここら辺の理論は作ったが試したことがないだからな。本当にそうなったかも怪しい。


「火なら炎、水なら津波、風なら竜巻、どんな魔法も強くすれば威力が大きさが強くなるものだ」


 青から赤を混ぜていく。


「なら、空間魔法の強さとはなんだ? 時魔法の強さとは、幻魔法の強さはなんになる」


「そんなの知るか」


「知るか、それでいい。だからお前は【空海に勝てない】」


 その言葉にむきになり、通らない攻撃をしかける。


「攻撃が通らないのは仕掛けがわかっていないからだ」


「うるさい」


「仕掛けがわからないのは考えを放棄したからだ」


「うるさいうるさい」


「そして、考えを放棄したのは。自分が同じ領域にいたくないからだ。端的に言えばお前は【プライドで格好をつけたいかtら攻撃が通らないのさ】」


「黙れーー」


 その攻撃が届くことはもうない。


「まあ、最後だし付き合えよ」


 そういい、自分は座る。これが突破されるようならもう自分は駄目なのだ。


 それくらい練って作ったシステムであり、思い入れのあるシステムなのである。


「といっても、お前がなにしようがもう殆ど変わらないんだがな」


 だから、そんな魔法解除をやろうとしても無駄だ。


 分かりやすいように。


「ディスペル」


 といい放ち、それと同時に剣を振る。しかしそれには届かず結果また触れることができないでいる。


「さて、この現象が何の状態かと言えば簡単な話【攻撃が届いてないだけなんだ】」


「何を言い出すかと思えば」


 訳のわからない事を……と思っているらしいが、まぁ作ったシステムだからな。


「空間や時間などは強弱はない。しかし強弱はある例えば」


 右上の手だけ青から青黒く変わる。


 そうして、空を殴る。すると遠くにいたはずの奴が殴られる。


「このように、空を切るだけでお前を殴れる」


 すぐに奴は起き上がりにこっちにめがけてくる。


「逆は」


 目の前に青い壁が出来る。それを通り抜けるとワープしたように後ろに移動していた。


「こうなるワープに近いかな」


「何をやったんだ」


「だから空間魔法なんだって」


「ならなぜお前に触れられない」


「だから届いてないんだって」


 次の色を作り出す。


「何をやってるか理解できるか、チートなんて言うなよ」


 そんなの使っていないんだから。


「なら何を」


「種明かしは全てができてからだな」


 赤色の球体ができる。


「そらつきだ」


 赤色の球体が、青色の天井に混ざる。


 そうして、紫の空間ができた。


「そっちは変わらないのか? 」


 体の周辺には青色がまだ纏われている。


「変える必要がないだろ」


 変えた所で意味がない。


「さて続きをしようか……と言っても」


 次で最後の色だ。


「時間もそろそろ危ないし、そろそろ解明させようか」


 最後の色を作りながら軽く説明をはじめる。


「ダメージ0もそうだが、俺はどうも特殊条件みたいなのが好きなようでな」


 徐々に球体を大きくしながら、説明を始める。


「まぁ、使う機会はあの時はなかったんだが」


「どうして? 」


「燃費が悪いんだよ、純度100%ってのはそれだけ重いんだ」


 属性の純度とは違う。三種類しかないからな。


「混じりっけのない、空間魔法とか時間魔法とかわけわからないだろ」


「どうして? 」


「お前自分が時間が止まっている世界とか、別次元を歩いたとかしたのか? 」


「そんなことするわけないだろ」


「なら、どうやって混ぜずに作るんだ」


「それは……」


 どうなるんだろうな? 自分もわからない。


「俺もよく分からないものを作ってるからなできるなら教えて欲しい」


「はぁ、自分が作っているんだろ」


「そりゃあ作れるさ」


 自分は【不純物】を取り除いただけなんだから。


「むしろ何故作れないと思った? 」


「だって自分でもよくわかってないんだろ? 」


「お前は全ての物事をわかって使っているのか? 」


「なに? 」


 奴が攻撃をしようともこちらには届かない。


「だとするなら程度が知れるな」


 そろそろ緑ができる。


「他人の作ったもので勝って楽しいか? 」


「他人の力だろうがなんだろうが使ったもの勝ちだろ。そもそもこの世界において【お前の作ったものなんて何がある?】 」


「そんなの……」


  自分が作ったものなんて、どうでもよいものぐらいだ。


「体は1から作ったのか? 物理演算は? 戦闘システムは? 判定は? 」


「そんなの運営が」


「それが任せられるのに何故システムを任せない? 」


「じゃあお前は何を頼ったんだ」


 空を切りながら奴は叫ぶ。


「このシステムの大半を。俺はこのシステムの概要しか作ってないぞ」


 ただ色を定義し、既存の属性を何色かに定義し。色素の変化方法を考えただけだ。細かいところなんてわからなくていいし知りたくもない。


「後は、自分の理解している部分を深めて行けば、こんな感じになる」


 最後の緑を天井に投げる。


 天井から、白く変わっていく。


 紫の色から白色に……景色が移り変わって行く。


 同時に自分が動けなくなる。いや動けないは語弊はあるか。


 体は動く、手も足も動かす事ができる。しかし移動はできないルームランナーのように動くだけだ。


「これは」


「一応の終着点、まぁ【モデリングルーム】とでもしようか」


 奴はきっとこちらを認める。


「もうどんな事をしても届かない」


「何をした? 」


 そればっかだなこいつは。


「団長みたいに考えたらどうだ」


 実際やっていることなんて単純だぞ。


「またそうやって」


「それ以外に何があるんだ」


 奴の体が薄れていく。


「今度はなにをした」


「俺は何もしてないぞ」


 しいていうなら……


「時間切れじゃないのか」


「時間は……」


 時間はどうなのか、その先をようやく消えかかるその体で考える。


「時間は【加速】した、空間は」


 動いても動いても体はその場所から動かない。


「【疎】まばらになっている。離れているって事か? 」


「正解」


 消えながらよく考えることだ。


「なら攻撃があたらないのは、本当に当たって居なかったのか」


「無駄だと言っただろう」


 さて……最後はどうなる。


「じゃあ、最後は何だ? 」


「最後、動かなくなった体、魔法の浸透? 」


「不正解」


 体はどんどん消えていく。下から少しずつ、


「なら、固着」


「……」


 なんでこれだけで、近い答えがだせるのかねぇ。


「近いのか、確か幻……そういえば」


 奴はこちらを見る。


「なんでお前はひ……」


 そこで消え去ってしまう。


「残念時間切れだ」


 そして、このイベントも終了だ。


 世界を閉じ、元に戻る。上を見上げれば、0/54125 どうやら最終的には5万人も参加したのか。 


 残り時間は……あと50分。最後ぐらい辺りを見渡すか。


 気づいたら体は人型に戻っていた。2足でのぎこちない歩き方で周囲を見ていく。


 周囲を見れば原形を残した機兵が多いことがわかる。これはNPCが浄化されているからか。


 あの後の5時間何が起きたかなんて知るよしもないが、原型が残っているのが居るってことはちゃんとNPCを守る会とかそんな名前の奴らがちゃんと役割は果たせたって事か。


 仕掛けは単純、どんなゲームでもいいから浄化、回復魔法を相手にかければ映画でよく見る感動のワンシーンのような感覚として共有される。


 実際はそんなことをしても何も変わらない。しいて言えばプレイヤーの自己満足でしかない。しかしそんな自己満足の為に、最後に何千というプレイヤーが移動したのがわかる。


 そんな中一部だけ、残骸すら残らず戦闘跡しか残っていない場所がある。恐らくサーカスとレギオンが交戦を続けたのだろう。


「ぅぅぅ」


 よく見れば巨大な何かがまだ残っている。死んだら混ざり、死んだら混ざり。それを繰り返してここまで肥大化したらしい。


 恐らく守る会でも浄化できなかったんだろう。まぁ単純に出力が足りなかったんだろうな。


 ついでに言えばたとえ浄化等を行ったって、こんな感じになる。まぁそれはちゃんと移動させて端から見れば浄化されているように見せるぐらいの努力は行ったが。


 とりあえず、動画をまだ見ている人物の事も考えて。一応は浄化で止めを指す。


 浄化と言ってもそれっぽいだけだ。ただエフェクトに白い光を入れる。それだけで見ている人物は浄化だと思ってくれる。


 銃を具現化し弾丸が発射される。


 実際の内容はデイメアによる最大ダメージの連続化だ。


 中心から白く光り、すぐに大型の何かは消えていく。


「ありがとう」


 あらかじめ設定していた言葉が流される。後ろを向きまたあたりを見渡そうとしたとき、


「許さない」


 不意にそんな言葉が聞こえた。


 ……最後に聞こえた言葉はNPC独自の発言だ。


「許されるわけないよな」


「当然です」


 その言葉には聞き覚えがある。自分が作ったAIだ。


 こつこつこつ、靴の音がこちらに近づいてくる。


「貴方のエゴでこうなったんです。感情なんて与えたから、気持ちなんてわかるようになったからこんなことになったんです」


 相変わらずの悪態だ。自分を嫌悪するように作ったから当然と言えば当然だが。


「なら、感情を与えずに機械のように動くのがベストだったと」


「少なくとももっと長期的で、もっと平和的なら私は何も言いません」


 その造形は真っ黒であった。


「そんな費用はうちにはない」


「嘘つき、その気になれば私のようにできるはずです」


 確かにできるだろう……しかし。


「そこまで求めるのは過剰な要望なんじゃないか」


「私を設計したのなら、それぐらいの我が儘を聞いてください、全く、使えない製作者ですね」


 酷い言われようだ。


 ……


 ピッピと音が聞こえる。


「いくら待っても、時計は戻らないし、貴方の周りにはプレイヤーはいませんし、貴方の願いは叶いませんよ」


 真っ黒なアイはそう言い放つ。それにしても……


「アイが倒しに来たわけじゃないのか」


「何故貴方を喜ばせるような事を? 」


 AIの思考が滑らかになっていないか。


 昔のアイなら、少なくともこんな回答にはならない。まだ自分で回答を出すのが難しいからだ。


「どうしましたか、時間はすぐに無くなりますよ」


 まるでこちらに何かを聞いて貰いたい。そんな感じの話し方だ。


「流暢になったな」


「……貴方が居ない間に色々ありましたので」


 やっぱり、成長している。少なくとも何かを処理しながら回答を導き出している。


「何があったかは? 」


「放任主義の貴方には教える気もありませんし、今更くっついたところで気持ち悪いだけです」


 うーん、なんというかこの会話。父親と反抗期の娘のような会話だな。


「なら、後で他の人にでも聞くか」


「貴方に答えてくれると良いですね」


 そおうやって、たわいのない会話が進んでいく。


 ピッピと戻らない時間が過ぎていく。ある程度話してわかったことはどうやら【未来から来ているっぽい】ことがわかった。


 あくまでもぽいだ、本当に未来から来ているかなんてわからないしもし本当にそうだとしたらこのAIが初めてのタイムトラベラーとなる。


 過去への移動は理論的には簡単だ、日常をシミュレートしそれを何百、何千と行っていく。ただそれだけだ。


 それがあっているかどうかなんてわからないし、間違っている可能性も高いが、困るのは事象だ。


 何年後に何が起きたかなんてシミュレートしたところで変わってきてしまう。現に自分の前に居るアイが本当に未来からきたとしたら、もう自分の未来だって変わっているだろう。


 しかしそれにしたってな……


「なぁ、結局なにしに来たんだ」


 ぶっちゃけ、何しに来たんだこいつ。


 行動の意味が理解できない。


「えっ」


「いやイベントの終わりに来られた所で……な」


 戦闘とかやる気があるならともかく……


「考えてもわからん」


「……頭を撫でにきたとかいったら笑いますか」


 あぁ、何だそりゃ。


 黒のシルエットでよくわからないが恐らく恥じているだろう。


 見るからに挙動が変である。


「はぁ」


 まぁ暇だし、いいか。


 黒のシルエットの前に行き撫でてやる。


「あっ」


 と声が漏れる。ついでだ。


「これもやる」


 どうせ使わない物だ。


「これは……」


「今まで集めたシステム」


 何十とゲームのシステムを持ったが、結局持ち腐れだったしな。


「それで、裏かけるようにでもするんだな」


 視界が歪んでいく。時計を見れば後30分。そろそろお別れの時間だ。


「お前も何処の時空か知らんがとっとと戻んな」


「……そういう所は嫌いです」


「好かれるようにやっては居ないからな」


 黒いシルエットも薄れていく。


「お別れですね」


「あぁ、そうだな」


 黒いシルエットを見る。あぁ見ていないのにどんな顔をしているかわかってしまう。


「はぁ」


 なんで自分がこんなことしないといけないのか。


 消えかかっている、黒いシルエットにもう一度頭を叩いてやる。


「こういうのが嫌だから、製作者を嫌うように作ったのにな」


 ポンポンと頭を叩く。


「あっちでどうなったかは知るよしもないが、それでにわかることはある」


 どうせ、未来なんて今の時点でろくでもないことになっているのはわかる。


「……なに」


「どうせやったことをしばらくして後悔して、開き直って最後は笑う。どうせそんなもんだ。だから……」


「……だから」


 さてなんて答えようか、ぶっちゃけなんて言うかなんてこんな短期間で決められるはずもない。


「……だからなんなの」


「やっぱ言うのは辞めた。聞きたきゃ、会いに来るか、聞きに行ってこい。なーに少なくともここでは死ぬことはないさ」


 恐らく……多分な。


「……やっぱり貴方は嫌いです」


 そういって黒いシルエットは消えた。


「次来るときは攻めて殴る気概ぐらいもってこいよな」


 さて残りは20分。やることないし……あれでも作るか。


 残骸を集め、文字を作る。時間も残り少ないのでそれなりに適当に……


「結局負けなかったな」


 まぁ、勝たせるつもりはなかったからしょうがないと言えば、しょうがないが。


 とりあえず、[E]の文字ができた、さすがに[終わり]は20分で完成できない。


 あたりの残骸を吹き飛ばしながら、[N]を作っていく。やっていることは残骸を直線の棒にして、それを溶接でくっつけているだけだ。


 一応上空の画面を確認しながら、作っていく。上空からの移されているため床にそのまま置くだけでいいのは楽でいい。


 そうして[N]が終わり、最後の[D]を作る。これだけは微妙な曲線があるので、若干めんどうだ。しょうがないから細かなパーツをくっつけ曲線ぽく見える。


 ピッピの音がついにブザーの音に変わる。五月蠅いので周囲の音を遮断する。次に視界が赤く染まる。これも目に悪いので色を消す。そうすれば白黒の周囲の音が聞こえない世界へと変わる。


 聴く曲を変える。確か今の光景にある曲はどっかにあるはずだ。


 数秒のイントロを聴きながら、目当ての曲を探す。実際はそんな曲は見つかりっこない。ただ何かの作業を行わないと不安でしょうがなくなってしまうんだ。


 そうして自分では数十秒と思える探しを終わり時計を見れば。もう1分を切っている。


 バレないように、モーションで震えを無くし。カメラに向けて銃を向ける。


 20、19……


 心臓があったらバクバクなっているだろう。そうしてただタイミングが来るのを待つ。


 8、7、


 銃を輝かせる。


 4、3、2


 このタイミングで銃を発射する。


 1、


 ……


 聞こえてくるのは、拍手の音。そして歓声。


 目を開ければ、いつか見た光景。画面に映る何か。周囲には自分の映っている映像。


 ただ1つ違うのは、今回はちゃんと【人みたいなのが居る】


 「やぁ、楽しいショーをありがとう。おかげで大盛況だ」


 「はぁ、どうも。でぶしつけで悪いんですが」


 ここは何処ですか? いやそんなの知っても意味ないな


 じゃあ貴方は誰ですか? それも知ってどうする。


 疲れと良くわからない状況でシェイクされた頭を振り回し、考えをまとめる。そして出た答えは


 「いくらぐらい貰えるんですか、主演の自分は」


 何とも俗物的な質問であった。

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